第2章 Aランクの異世界転生冒険者 ★12★
俺は朝からギルドへ来ていた。あまり人に絡まれるのも嫌だったのだがユーリさんは居たので助かった。
「ユーリさん、おはようございます」
「おはようございますユウキさん。今日は随分早いんですね」
「人が多いのは苦手なんで。今日はユーリさんに聞きたいことがあるんですけど」
俺はこの国に武道大会みたいなものがないかと聞いてみた。
「1ヶ月程すると各国のギルト代表が戦う竜王祭と言うのがありますよ。近い内にライルさんから発表はあるはずですが、ギルドで予選を行い上位2名がカルナディア国のギルド代表として聖地アルヘイムで行われる本選に参加するんです」
「そんなのがあるんですか。冒険者であれば誰でも予選には参加出来るんですか?」
「カルナディアではBランク以上になってますが他の国はちょっとわからないです」
俺は俄然やる気が湧いてきた。魔物とではない対人戦だからこそ、駆け引きや探りあい等緊張感があって面白いのだ。これは空手をやっているときもそうだった。となればそれまでにはもっとレベルを上げておかなければと討伐系の依頼を探すことにする。
「これが良いかな」
俺がひとつの依頼書を取ろうとすると背後から声をかけられる。
「ユウキ君、ちょっと話があるんだか私の部屋まで来てもらっても良いかな?」
「ライルさん。おはようございます。部屋にってことはあまり聞かれては不味いことですか?」
「そういうことだ」
俺はライルさんに連れられてギルド長室に入る。
「まぁ座ってくれ。話と言うのはソリティア嬢の家のクレンスフォード家についてだ。どうも君は目を付けられたらしくクレンスフォード家が色々と動いてるらしいんだ。命を取られるような心配はないと思うが。多分君を自分達の勢力にいれたいんだと思う」
「お偉いさん達の派閥争いですか」
「そういうことだ」
(あの女騎士に失礼なことなんて‥‥‥多分‥‥きっとしてないだろう。確かにあの女騎士の前で派手にやったからな)
「くれぐれも気をつけるんだよ。君だけじゃない、周りの人を巻き込んで何かを仕掛けてくるかも知れないからな」
「ライルさん。俺になら何をしてきても別に構いません。けど俺の知り合いや大事な場所を奪おうとするなら俺も容赦はしませんよ。ライルさんと模擬戦した時の強さが俺の全てではないですから。伊達に〔闘神〕の2つ名は貰ってませんよ」
俺は周りの人が巻き込まれるかもと言われたときに内心はかなり怒っていたが、気持ちとは裏腹に不敵な笑みを浮かべていた。そして意識もしていないのに魔力闘衣を使い闇の魔力を付与していた。知らない人がみたら魔族に見えていただろう。
ライルさんが、ガタンと大きな音をさせ急に立ち上がり俺に驚く。
「ユ、ユウキ君‥‥」
「まぁ何もなければ其が1番良いんですけどね」
俺は自分が怒りで無意識に魔力闘衣を使っていたのに気付き笑顔で魔力闘衣を解きライルさんに答えた。俺は立ち上がり部屋を出ようとした時ライルさんに話しておく。
「ユーリさんに聞きましたけど竜王祭の予選、参加しますんで。勿論予選だけじゃなく本選でも誰にも負けるつもりはないですから」
俺はそう言い残し部屋を出た。俺が居なくなった部屋の中でライルさんが呟く。
「君を怒らせたらSランクでも相手にならないだろうな」
俺はライルさんと話す前に見ていた討伐の依頼を受ける。レーベルの森にオークの集落が出来てるとの事でその集落の壊滅だ。
ユーリさんに依頼を受けると伝えると少し悩んでいた。
「この依頼何か不味いんですか?」
「ユウキさんなら大丈夫だとは思うんですが‥‥‥この依頼実はパーティー推奨なんですよ。魔物1体の討伐ではなく集落の壊滅なので、おそらく数十体の魔物の討伐になるんです。なのでギルドではパーティー推奨しているんです。ソロでも受けれないことはないんですけどユウキさんに何かあったら私‥‥‥」
「もしよかったら俺が一緒に行こうか?」
声の主を見ると、見た目はライルさんより少し若い男性冒険者だった。口元を黒い布で隠しており服装も俺に負けず劣らず真っ黒だ。
「ギルさん。ユウキさん、この方はユウキさんと同じAランク冒険者、〔絶影〕のギルさんです」
「初めましてだね。君が期待のルーキー〔闘神〕のユウキだね?俺はギル、宜しくな」
俺は〔絶影〕のギルと呼ばれる男と少し話をすることになった。




