第2章 Aランクの異世界転生冒険者 ★10★
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宿屋に着くとサリーちゃんは普段着ている服とは違いどこかよそ行きの格好をしていた。
「この服どうかな?ユウキお兄ちゃん」
「とっても似合ってて可愛いよ」
「あ、ありがとう」
「良かったじゃないかいサリー。大変だったんだよユウキ。何を着たら良い?って仕事もそっちのけだったんだから」
「お母さん!余計なことは言わないでよ!」
サリーちゃんは顔を赤くしながら答える。俺はおかみさんに、夕方までには戻ることを伝えサリーちゃんと歩き始めた。
「ねぇサリーちゃん。どこかオススメの服屋はあるかなぁ?」
「それならイリスさんのところが良いよ。ちょっと変わってるけど良いものが沢山あるの」
「じゃあ其処に行ってみようか」
イリスさんとやらがやっている服屋に着き中に入ってみるとただならぬ身の危険を感じた。キメラと戦った時もこれ程の危険を感じたことはなかった。
「いらっしゃいませ~」
俺はとっさに声の主の方を見ると其処には2メートル程のガタイで見た目はオッサンだが、女性の服を着た男性が立っていた。
「あら、サリーじゃないの。そのイケメンは誰なのよ?まさかサリーの彼氏なの?」
「ち、違うよ!家のお客さんで冒険者をしているユウキさんです。彼氏なんてそんな‥‥‥」
「あら、そうなの?じゃああたしが貰っちゃっても良いかし「ダメ!」」
サリーちゃんが大きな声で叫んだので俺はやっと我にかえった。イリスさんの見た目に圧倒されて二人の会話は殆ど耳に入ってなかったのだ。
「わかったわよ。サリーもそんなに怒らなくても良いじゃない。んで挨拶がまだだったわね。私が店主のイリスよ。よろしくね」
ウインクをしてくるイリスさんに寒気を感じながら俺も挨拶をする。
「こちらこそ。冒険者をしてますタカミヤユウキと言います」
「ユウキお兄ちゃん。イリスさんは元々冒険者をしていてユウキお兄ちゃんと同じAランクだったんだよ」
俺はそんなランクの冒険者が、なぜ今こんなカッコで服屋をしているのか気になった。
「その若さでAランクなんてすごいじゃない。モテモテでしょ?」
「そんな事ないですよ。でも何でイリスさんは服屋をしているんですか?」
「私も冒険者の時はそれなりのモテたんだけど、周りの女性が皆あの手この手で狙ってくるのに嫌気がさしてね。理想の女性像を思い描いてる内に自分でなろうって思っちゃったのよ」
俺は愛想笑いをしながら、どうやったら2メートルのオッサンが理想の女性になるんだよ!と心の中でツッコミを入れていた。
「それで今日は何を探してるのかしら?」
「出来ればそれなりに耐久性があって、普段着でも鎧の中にも切れる服が欲しいんだけど」
「それならこの辺りのはどうかしら?グレートスパイダーの糸を使った服なんだけど耐久性は抜群よ。その代わり少し高いけどね」
「サリーちゃん。この中から何着か見立ててくれないかな?」
「うん。わかった」
サリーちゃんは4着程に絞り込んだが殆どが黒を基調とした服だ。
「その4着ちょっと試着してみても良いかな?」
「良いわよ。奥の試着室を使ってね」
俺は全部着てみるが、同じ黒でもデザインが違ったり、差し色が入ったりとなかなか凝っている。取り敢えずその中の1着をサリーちゃんに見てもらう。
「サリーちゃん、どうかな?」
「とってもカッコいいよ。ユウキお兄ちゃんは髪と眼が黒いから黒い服がすごい似合ってるよ」
「確かにそうね。ちょっと悪そうな感じが女心をくすぐるわ」
(女心ってオッサンだろ!まぁサリーちゃんが気に入ってるなら間違いないんだろうけど)
「イリスさん。この4着全部お願いします。後、サリーちゃんは何か欲しい服とかはない?今日のお礼に何か1着プレゼントするよ」
「そんな、大したことしてないのに悪いよ」
「良いじゃないサリー、買ってもらいなさいよ。こんな気遣い出来る男はなかなかいないわよ。男なんて自分等男が少ないからって傲慢になったり逆にナヨナヨしたりでろくなのがいないんだから」
「それじゃあどれが良いかなぁ?」
「あたしが選んであげるわよ。サリーの長所の胸を強調したこの服なんてどうかしら?ユウキなんてこれを着たサリーを見たらメロメロよ」
「!!これなんて胸が半分くらいしか隠れないじゃないですか!‥‥‥でもユウキお兄ちゃんはこういうの好きなのかなぁ?」
俺は試着室で元の服に着替えていると二人は何だかワイワイ騒がしく話をしている。特に話の内容は聞こえなかったのだか、女性の買い物はそんなもんだろうと特に気にはしなかった。俺は着替えを終えて試着室から出てこっそりイリスさんに声を掛ける。
「イリスさん、値段とかは気にしなくて良いですからね。昨日の魔物討伐でかなり稼げたから最高の服を選んであげてください」
「ユウキはほんとに男の鏡ね。じゃあサリーはこれを試着室で着てみて」
サリーちゃんはイリスさんから服を渡され試着室に入っていく。暫くして着替えを終えてサリーちゃんが出てくる。
「どうかな?ユウキお兄ちゃん」
俺は眼を疑った。綺麗な鎖骨が見え、それだけでなく胸の谷間があらわになった服だ。まるでエッチなお姉さんが着るようなワンピースだが、サリーちゃんにとても似合っていた。俺的にもジャストミートだ。
「とても大人っぽくて素敵だよ」
俺がまじまじと胸元を見ていたのに気づいたらしく顔を真っ赤にしながら試着室に戻ってしまった。
「ユウキ君。露骨過ぎよ」
俺はイリスさんに注意されてしまったが、あの胸は最早反則である。サリーちゃんが着替え終わって出てくるとイリスさんがサリーちゃんに耳打ちをする。
「ねっ!言った通りでしよ?ユウキ君はサリーにメロメロだったわよ」
耳打ちしたあとまたサリーちゃんの顔が真っ赤になる。
「じゃあ全部でこの5着ね。えーとユウキ君の服が全部で60銀貨。サリーのがこれくらいで。はいどうぞ」
イリスさんはサリーちゃんに値段がわからないように紙に書いてそっと俺に見せてくる。サリーちゃんの服の値段は40銀貨とかなり高額だ。俺は自分の服とサリーちゃんの服に鑑定を使ってみる。
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上級冒険者の服:グレートスパイダーの糸を使っており、耐久性にとても優れている。かなり高価な服
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魅惑のワンピース:最高級の素材を使い魅惑的なデザインに仕上げたワンピース。胸が大きな女性が着ると効果絶大。推奨バストサイズEカップ以上
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確かにかなりの品のようだ。特にサリーの服は値段以上の価値があると俺は思ったので大満足だ。俺はイリスさんにこっそり金貨を1枚渡す。貴族でもない女性が40銀貨もする服を着たりなんかしないので、最後まで値段がわからないように支払いを済ませた。
「ありがとう、ユウキお兄ちゃん」
「気にしなくて良いよ。イリスさんもありがとうございます。良い買い物が出来ました」
「こちらこそ沢山買ってくれてありがとう。サリー、こんな良い男逃しちゃダメよ!」
「イリスさん!変なこと言わないで下さい!」
また顔を赤くしたサリーちゃんと俺は、イリスさんの店を後にした。




