第2章 Aランクの異世界転生冒険者 ★4★
「うっ、痛ってぇ」
俺はソリティアが作動させてしまったトラップでかなりの深さまで落とされたようだ。上を見上げても光は全く見えず辺りは真っ暗だ。取り敢えず明かりがないとと思い、手を開きイメージで光の玉を思い浮かべる(ライト)、すると光の玉が手のひらから出て周りを照らす。
「これで明かりは確保出来たな」
辺りを見回すとソリティアが倒れている。こいつのせいだから置いていっても良いかなぁ?とは思ったが一緒に落ちていくところを女性兵士が見ていたし、こいつが死んだらまた俺のせいにされるのもたまったもんじゃない。
「おーい。生きてるか?生きてるんだったら返事しろ。死んでるんだったら女神様に宜しく言っておいてくれ」
「んっ、どうしたのだ一体。なっ!貴様は、痛っ」
ソリティアは目を覚ますなり睨み付けてくる。
「あんたがトラップを作動させたせいで俺まで巻き添えくって落とされたんだよ」
「私のせいだと?貴様が私の話を聞かないのが悪いのではないか!」
予想道理の回答だった。自分には非はない、そして身分の下の者のせいにする。糞貴族の見本のようだ。
「そうですが、では失礼しました」
俺はソリティアを置いて先に進もうとする。
「貴様!私を置いて行く気か!」
「俺はゴーレム討伐の依頼を受けただけで、貴族の面倒を見る依頼を受けた覚えはありません」
「これだから庶民は!庶民は庶民らしく貴族の言うことを聞いてれば良いのだ」
最早呆れて言葉もでない。こいつは自分中心に世の中が回っていると思っているのか?この状況でまだ自分が優位な立場だと思っているらしい。俺がライトを消して走り去ってしまえばこいつはそこで終わりだと気付いてないのか?このまま置いて行こうか等と思っているとドスンドスンと何か巨大な物が近づいてくる音がする。
「何だこの音は!おい!答えろ!」
「お前少し黙ってろよ。死にたいのか?」
俺が音の方を向くと体調5メートル程で石でできた魔物が迫ってくる。
「あれがゴーレムか?(鑑定)」
ストーンゴーレム
年齢 - LV 42
種族:ゴーレム(人工生命体)
体力:380
魔力:10
筋力:460
耐久:420
俊敏:65
スキル: 〔ストーンナックル〕 〔超再生〕
「筋力と耐久が高いな。超再生?ちょっと厄介だな」
「ゴーレムだと!おい貴様!私を守れ」
「お前マジで黙ってろ!ゴーレムの前に討伐されたいか?」
俺はソリティアを怒鳴り付ける。ソリティアはまだ何か言っているが、俺は聞き流しながらどうするか考える。
(超再生と言うことは中途半端な攻撃は回復してしまうだろう。一撃で再生出来ないほど粉々にしてしまうか、人工生命体なのであれば核となると物があるはずだ。そこを破壊するしかないだろう。まぁ全部、漫画やアニメの受け売りだがな)
ゴーレムは自慢の豪腕を振るってくる。そこまで早くはないが叩きつけた床や壁は砕けている。これがストーンナックルだ。まぁただおもいっきり殴ってるだけに見えるが直撃したらひとたまりもないだろう。何度も豪腕を振るってくるが俺はそれを全てかわす。ソリティアは、何時自分の方に来るかとガタガタと震えている。俺はかわした後少し距離をとる。そして鞘に収まったままの天照に手を掛け魔力を流し腰を落とす。昔観たことがある居合いの技だ。ストーンゴーレムは腕を振り上げながら迫ってくる。そして振り下ろそうとした時、俺は胸元に飛び込み鞘から一気に抜き切り払う。空手の極意、後の先だ。相手より後に動き先に攻撃を当てる。それには居合いがちょうど良かったのだ。ストーンゴーレムはそのまま動かない。俺は刀を鞘に納める。核を切ったと確信したからだ。
「ほら、さっさと行くぞ。出口を探さないと今日中に帰れないだろ」
俺は依頼も終わったので少しは気が晴れソリティアに声を掛ける。このまま置いていくと出口で女性兵士に会ったとき問い詰められると思ったからだがソリティアは相変わらずうるさくさわぐ。
「何でゴーレムを倒さないのよ!危ないでしょ!」
「何を言っているんだ?ちゃんと倒しただろう」
「貴方が消えたと思ったらゴーレムは動かなくはなったけど、ゴーレムに傷1つつけれてないわよ。やっぱり口だけの冒険者じゃない!」
「はぁー。見えて無かっただけかよ」
俺は動かなくなったストーンゴーレムに近づき軽く叩くと胸の所から上下2つに別れ大きな音と共に崩れ落ちる。その時に真っ二つになった核も見えた。
「これでわかっただろ」
ソリティアは貴族の娘とは思えないほど口を開けて驚いていた。




