第3章 報告★4★
「そう言えばミネアのお父さんは奥さん1人だけなのか?」
「うん、昔は5人いたんだけど、私が小さかった時に父は病気になって子供を作れないってわかったらば離婚してしまったの」
俺のいた世界でも大人になってから高熱を出したりすると子供が出来なくなるなんて噂があったし、そのせいで余計にミネアを結婚させて跡取りをって思っていたのだろう。しばらくすると警備兵の女性が戻ってきた。
「お待たせして申し訳ございませんでした。ユウキ様とユキネ様も一緒に来て良いとの事でしたのでご案内致します」
俺達はそのまま案内され広い部屋に通された。すると直ぐに歳は40半ば位の男性が入って来た。
「先程は申し訳ございませんでした。私がフリーゼルト領主のゼクト・クレメンスと申します」
「はじめまして。私はSランク冒険者のタカミヤユウキと言います。こちらは同じパーティーのSランク冒険者スズカゼユキネです」
「私の娘がご迷惑かけていませんでしたか?勝手に家を飛び出し音沙汰なしで‥‥風の噂で冒険者になったとは聞いていたのですが‥‥‥」
「優秀な冒険者ですよ。今年の竜王祭でも準優勝してますし立派なSランクの冒険者ですよ」
「ユウキ様にそう言って頂けるとは光栄です」
随分俺の事を持ち上げるがジャスティ王はどんな内容の手紙を書いたのか気になった。
「私はただの冒険者です。かしこまらないで下さい」
「そんな、ジャスティ王からの手紙にはユウキ様は英雄アレスに並ぶ強さを持つ冒険者と書かれておりました。竜王祭優勝や魔神の撃退等の功績もです」
(ジャスティ王も随分俺の事を持ち上げてくれたみたいだな。まぁ事実なんだが‥‥)
「今回はゼクトさんにお話がありまして、ミネアを私にいただけませんか?」
「!?そ、それはミネアと結婚すると言うことですか?」
「そうです。ただ勘違いしないで欲しいのは私は婿になるわけではないと言うことです」
「私もフリーゼルトに戻るつもりはないから、カルナディアにここよりも立派なお屋敷も買ったしねユウキ」
「そんな‥‥‥それではクレメンス家は私の代で途絶えてしまうでは‥‥」
「1つ良いですか?ゼクトさんは家名を守るのが大事なのですか?それとも一人娘の幸せが大事なのですか?」
「そ、それは‥‥‥」
「私がいた国には住民の投票によって次のリーダーを決める選挙と言うものがあります。どうしても世襲でリーダーを決めると適正のない者がなったり、本人の夢や希望を奪うことになってしまいます。ミネアを見てわかりませんか?」
「お父さん、私は自分が好きになった人と一緒にいたいの」
「領主としてフリーゼルトをより良い街にしたいと願うのであれば考えては貰えませんか」
「‥‥‥」
「貴方、もういいじゃありませんか?」
急に1人の女性が部屋に入って来た。どこかミネアに似た女性だ。
「お母さん!」
「ミネア、元気にしていた?貴女が家を出た後メアリーに聞いていたわ。自分の王子様を見付けたのね?」
「うん。守って貰うだけじゃない、私も守りたいって思える最高の人を」
ミネアのお母さんは娘の幸せを知り笑顔になりゼクトさんに話す。
「貴方もわかるでしょ?この家に婿に入る時に自分の夢を諦めなければいけなかった辛さを」
「お父さんの夢?」
「えぇ、貴方のお父さんは学者になりたかったのよ。世界中の鉱石や金属を調べて回っていた位なのよ」
「お父さんが‥‥‥」
「確かに忘れていた‥‥‥世界中を回り見たことない鉱石を見付けたときの喜び。それを諦めなければいけなかった悔しさ。あんな思いをミネアにもさせていたのか‥‥‥」
ゼクトさんは膝をつき自分の過ちを悔やんでいるようだった。
「俺も協力しますよ。俺の父になる人ですからね」
俺はゼクトさんの肩に手をかけると、顔を上げたゼクトさんは何処かスッキリしたような顔をしていた。




