第3章 ゼルト山★6★
「ユウキ!」
「ユウキさん!」
ミネアとユキネが声をあげる。まともに食らえば生きてはいないというのがわかっているからだ。二人は我を忘れ敵討ちとばかりにスノードラゴンに攻撃をしようとする。
「慌てるな娘たち。ユウキなら生きておる」
「えっ!でも‥‥」
吹雪で閉ざされていた視界も見えるようになってきた。
「やはり受けきったか」
俺の姿を見てミネアとユキネは走ってきて俺に抱き付く。
「死んだかと思ったんだから!」
「ほんとですよ!あんなブレスをまともに受けたんですから」
「まぁなんとかな、でも鎧と籠手は駄目になっちゃったな」
俺の足下には凍って粉々に砕け散った闘神の鎧と闘神の籠手の残骸が散らばっている。
「ユウキよ、どうやって私のヘルブリザードを防いだのだ?」
「水の魔力を全力で纏ったんです。ただ普通に纏うのではなく、氷の魔法を放てるくらいにした魔力ですけどね。それでも魔力の差が大きかったんで水魔法を無効に出来るはずの装備が壊れてしまいましたけど」
「そこまで魔力を操作出来るのか。魔術の極みと魔力闘衣のスキルがあって初めて成せる技だな」
確かにスノードラゴンが言うように水の魔力を纏っただけでは防げなかっただろう。水魔法の中でも上位魔法の氷の魔法を使う寸前の魔力を纏ったから出来た芸当だ。火魔法ならば魔力を多く込めるだけで威力は増すが水魔法はそうは行かない。込める量を増やしても氷の魔法を使うことは出来ないのだ。繊細な魔力操作によって初めて使える魔法だからこそ、スノードラゴンも誉めてくれたのだろう。
「英雄アレスはどうやって防いだんですか?」
「彼奴は私のヘルブリザード以上の魔力を込めた火魔法で相殺しおった。魔力の数値がとんでもなかったからな」
英雄アレスはスノードラゴンよりも魔力のステータスが高かったということに俺は驚いた。そして英雄アレスの足元にも及んでない自分が、魔神からミネア達を守ると息巻いていた事が恥ずかしくなった。
「約束通り氷結石は好きなだけ持っていくが良い。後はユウキにこれをやろう」
スノードラゴンは自分の鱗を2枚ほど俺に渡してくれた。
「そんな!良いんですか?」
「ユウキの鎧を壊してしまった詫びだ。その辺の金属よりも優秀な鎧ができるはずだ」
「ありがとうございます。‥‥‥もし良かったらまた会いに来ても良いですか?」
「お前達なら構わない。何か話があったらまた来るが良い」
思わぬところでスノードラゴンの鱗なんていうレア素材まで貰うことが出来た俺達はお礼を言ってフリーゼルトに転移で戻った。




