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一杯目「ラプタイル・カフェへようこそ」 前編

【登場人物紹介~ラプタイル・カフェの動物編~】

アールグレイ(グレイ)…フクロウ。三羽と二匹のリーダー的存在のおじいちゃんだが店に来たのは一番最近。幻術を操る能力を持っている。


モンブラン(ラン)…タカ。長身かつイケメンで店内人気ナンバーワン。彼自身、それを自覚しているかのように振る舞っている。基本的に紳士的だがロンに対してはドS。


コロンビア…(ロン)ワシ。かなり好戦的で何かあるとすぐ暴れ出す。不良系イケメンとしてランとはまた違う意味で人気がある。なでなでされたりするのを口では嫌がっているが実は嬉しい。ランとは犬猿の仲。


キリマンジャロ(キリ)…リクガメ。ほぼいつも寝ており、そのマイペースさを崩さない。何も聞いてないように見えて実は周りの状況をよく把握していたりする。おとなしいゆえにラテが安心して接することのできる存在でもある。


ラテール(ラテ)…トカゲ。臆病な性格ですぐに泣いたり逃げたりしっぽを切ったりする。そんな自分の性格を直したいと思ってはいるがなかなかうまくいかない。何だかんだでみんなのことは大好きだがマスターのことだけはどうしても苦手。

ここはラプタイル・カフェ。とある田舎町の片隅にある家族経営の喫茶店だ。店の名前の由来はraptorとreptile――つまり猛禽類と爬虫類。この喫茶店にはマスターによって集められた三羽の猛禽類と二匹の爬虫類が飼われているのだ。

『やだあ~、このコ超イケメン~、かっこいい~☆』

 客の女の子たちから絶大な人気を誇っているのが、タカのモンブラン。体は中くらいの大きさだが、長身で筋肉もかなり発達している。そして容姿もバツグンで今や彼のためだけにわざわざこんな田舎の喫茶店へ来る客もいるほどだ。

「……」

その隣でどこか不満そうな表情でモンブランをにらみつけている鳥が一羽。彼はワシのコロンビア。体が大きくかっこいいのはかっこいいのだがとにかく目つきが悪い。そのうえケンカっ早いのですぐに暴れ出す。だからと言って敬遠されるのかと思えばそうでもなく、

「きゃ~、ロンくんたらランくんに嫉妬してる~。か~わ~い~い~」

「チョイワル系?だよね~。これはこれでいいわ~。こーゆー男に『俺に絶対服従だ!』とか言われてみたいw」

 とまあこんなカンジで不良系イケメンとして支持されている。

 女の子たちはモンブランとコロンビアをひとしきりなでまわした後、満足して店を出ていった。





「~~~~ッ、……っだああぁぁ!何なんだあの女どもは!かわいいとかなでなでとか性に合わねえし、ランのヤローがちやほやされてんのがくっそムカつく!殺らせろおおおお!」

「うるさいぞロン。いくら俺が人気あるからってそんなにひがむなよ。つーかお前、あの娘たちになでられてる間ずっとにやけてたぞ気持ち悪い」

「はぁ?そそそそんなことねーし!別に全く全然嬉しくなんかねーし!あとお前ちょっと人気だからって調子こいてんじゃねーぞ殺るぞコラ!」

 人が見てない時、この二羽はいつもこんな調子でケンカばっかりしている。彼らはここへ来る前は同じペットショップにいたのでこれはもうもはや生き物が起きてごはん食べて寝るのと大差ないくらいの当たり前のことと化している。


 「……うぅーーっ……」

 彼らの言い争いを見て隅っこで体を震わせながら縮こまっているトカゲがいた。ラテールと言って、とても臆病な性格で何かあるとすぐにシッポを切ってしまう。

「二人ともケンカやめて仲良くしてよお……。怖いよお……。……ねえ、キリちゃんからも何とか言ってあげてよ……」

 ラテールが近くで丸まってるリクガメのキリマンジャロに助けを求める。しかし――、

「Zzz……僕もう食べられなぁーい……Zzz……」

「うわあぁぁん、まただぁー!」

 ほとんどこうして寝てばかりいるので全くアテにならない。

 

 こうしている間にもケンカはエスカレートし、ついにはモンブランの人気やコロンビアの意地っ張りと全く関係ないことで争う始末。単なる言い争いから取っ組み合いに発展しているが、見方によっては何か別のものに見えなくもない。

「そういやお前、前いた店で大事にとってたエサを他の奴に盗られて大泣きしてたよなw」

「はぁ?何言ってんだ、俺はンなくだらねーことで泣いたり騒いだりしねえぞ!でたらめ言ってんじゃねえし!」

「実はアレ、俺が犯人でした!いやー、イケメンって何しても許されるからー。ごめんね?(てへぺろっ☆)」

「てめえかあああぁぁぁ(泣)!つかそのさわやかスマイル超うっぜええええええ!」

(あわわわどうしよう……。キリちゃんは寝てるし僕は何にもできないしマスターたちお仕事中だしっていうかマスターとはあまり関わりたくないし今お昼だからグレイさんもキリちゃんと同じように……)

 両目をぎゅっとつぶり、万事休すかと思われたその時、外から一羽のフクロウが入ってきた。

「何じゃ騒々しい。外まで丸聞こえじゃったぞ。せっかく休んでおったというのに……」

「あ、グレイさん……。ごめん起こしちゃって……」


 ラテールに「グレイさん」と呼ばれたその鳥の名前はアールグレイ。おじいちゃんなので一番の古株かと思いきや実は最も新しく来た人物である。にも関わらず、年寄り特有の威厳や時折発動させる謎の術のような力で三羽と二匹のリーダー格となっている。

「またあやつらがくだらぬことで騒いどるのか……。何度わしの休息を妨げ、ラテールを怯えさせ、大介らに迷惑をかければ気が済む?一体どうしてくれようか……」

 するとそこへマスターの娘さんが、「あらまた二人が濃厚な……。ごちそうさま、いっぱい食べてねうぇへへへ♪」と言いながらエサを運び立ち去った。意味が分からないながらも何か不気味なものを感じたラテールはまたしてもシッポを切るのだった。

「お、メシか」「いっただきー!早食いではランなんかに負けねえ!」

「……こうじゃっ!」

 

 モンブランとコロンビアがエサに飛びつこうとした矢先、そのエサが入れ物ごと消えて無くなってしまった!彼らは仲良く同時に床に転げ落ちた。

「痛っ……」「おい何すんだよジジイ!腹減ってんだから食わせろよ!」

 アールグレイはコロンビアの抗議にも威嚇にも全く動じない。「……うるさい。お前らがその醜い諍いを止め仲直りせぬ限り永遠の空腹を与えるぞ」

「だ、だってロンがひがんでくるから……」「ランが勝手に俺の悪口並べ立ててるだけだっての!俺は悪くねえ!メシ抜きならランだけにしろ!」

 二羽はアールグレイの制裁に怯みつつも、互いに互いの非を主張し、全く反省していないようだ。「そうか……あくまで己が主張を通そうとするつもりか。結構結構」アールグレイは目を閉じながら静かに、しかしどこか覇気を孕んだような声色で、

「要するに空腹だけでは足りぬということじゃな……!」


 次の瞬間、モンブランとコロンビアの喉に異常なまでの渇きが襲ってきた。まるで砂漠の中をずっと彷徨っているかのような感覚だった。彼らは苦しみに耐えながら必死にアールグレイの顔を見る。彼の両目からは怪しい光が漏れていた。

「ぐっ……卑怯だぞじいさん……」「鬼!悪魔!人でなし!」

 数々の罵詈雑言を浴びせられても何食わぬ顔のフクロウ。最早この程度では動じないと言わんばかりの余裕が感じられる。意地っ張りが人一倍のコロンビアは貧相な語彙の中から悪口を絞り出している。「老害!鬼畜!ケチ!……えーとえーと……」

 (><)←こんな顔をしながら自分を非難するような言葉を足りない頭で考えているコロンビアの様子がおかしくてアールグレイは思わず吹き出しそうになった。しかしそれも長くは続かず……、

「……まっ、魔王っ……!」

「っ……!」


 コロンビアにしてみれば何となく頭に浮かんだ単語を言ってみただけのことなのだが、その言葉を聞いた途端アールグレイはビクッと身震いし、二羽にかけていた幻術を解いてしまった。消えていたエサは元の位置に戻り、喉の渇きも完全ではないにしてもだいぶおさまった。あまりにも意外で突然の事態に空腹も何もかもどうでもよくなっていた。

「……おい、ロン、お前何やったんだ……」「いや、俺は別に何も……。ただジジイにひたすらキレてただけだぞ……」

 息を切らしながらまるでお化けでも見たかのような形相のアールグレイは明らかに普段の様子とは違っていた。全員分の水を一気飲みした後、誰にも聞こえないようなか細い声で「……わしは……わしはもう魔王などではない……」とつぶやきながらどこかへ飛び去っていった。

 

 モンブランもコロンビアも何が何やらという感じで、何故ケンカしていたのかも、何故アールグレイからおしおきを受けていたのかも、何故ラテールが大量の涙を流しているのかも分からなかった。食欲は消え失せていたが喉は渇いていたのでとりあえずラテールの涙を飲むことにしたが全く潤うことはなかった。「えっと……何かごめんな、ラテくん……」「ラテすまん……」

 

 ラテールは今まで目の前で起こっていたあらゆることが怖すぎて口から魂が出そうになっていた。モンブランとコロンビアのケンカも、それをアールグレイが諌めるのも、キリマンジャロがただ一人何も関わらず眠りの世界に閉じこもっているのも普段と変わらぬ日常風景なのに。確かに先ほどのアールグレイの取り乱した様子は異常だったけどそれを抜きにしてもあまりに臆病すぎる自分に対しても情けなくて涙が止まらない。ラテールが泣き止まないのでモンブランもコロンビアも慌ててしまっている。そして今度はどちらがラテールを泣かせてしまったのかについて争いを始めるのだった。

 

 するとそこへ、寝起きのキリマンジャロがのそのそと中へ入ってきた。深刻な空気などお構いなしののんきなあくびの音がゆっくりと響き渡る。キリマンジャロは言い合いをしている二羽の間に何のためらいもなく割って入った。

「あのねぇ~、二人ともぉ~。ラテくんの言う通りケンカはダメぇ~。仲良くしないとだよぉ~」

 それだけ言い終えると彼はまた寝始めた。役目を果たしたからなのかその寝顔はとても幸せそうであった。「キリちゃん……。もう、言いに来るの遅いよ……」

 キリマンジャロの凄まじいまでのマイペースさに力が抜けたラテールはようやくかわいらしい笑顔を咲かせた。その様子にモンブランとコロンビアは互いに安堵の表情を浮かべ合った。何だかんだで仲は良いのであった。





「Zzz……グレイさんは今……にいるよぉ……Zzz」



去年あたりに何となくキャラや名前などを思い浮かべて、年末あたりに書き始めました。キリちゃんみたいにのんびりマイペースで更新していきたいなと思っています。

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