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1、黒の魔王は死にました

※諸注意

まず、この小説を書くにあたって、私の中で目標を定めています。

それは「どんな形であれば、このお話を完結させる事」です。

なので、もしかしたらこのお話はとてもつまらない話になるかもしれません。

いや、むしろ、つまらない話になる可能性が高いです。私は今まで長いお話を書き上げた事がないので、実績はゼロです。短編を書き上げた数も片手で数えられる程度です。

と、まあ、色々言いましたが、「お前の修行につきあって読んでやるよ」と言う方、良ければ読んでください。


1、黒の魔王は死にました


 目に映ったのは、青い空だった。

 世界がこんなに歪んでしまっても、空は変わらないんだなと、ぼんやり考える。

 そう言えば、前にこんな風に空を見上げたのは、いつだっただろう。

 思考が回想へと飛びそうになった私の視界に、よく知った顔が現れる。

 その顔には何の感情も浮かんでいない。

 いや、違う。必死に押し殺しているんだ。私があの話をしたときも、こいつはこんな顔をしていた。

 でも前とは違う。唇がわずかに震えて、きれいな青い瞳にはうっすらと涙が溜まっている。

(あぁ、そんな顔をしていたら、まるで英雄らしくないじゃないか……)

 金色の髪に白い肌、そして青い瞳。白の国の人間ならば、みんながそれらの特徴を持っている。

 だが、彼ほどにそれが似合っている者はいないだろう。

 目が自然と彼のほうを見る。白い鎧に身を包んだその姿は非常に様になっていた。

 彼が私のそばにいた時、その身を包んでいたのは黒色の鎧だったので、少し新鮮な感じだ。

 黒の国の黒騎士と言えば、黒の魔王に次いで畏怖の対象とされたものだ。

 その男が、今では白の騎士と呼ばれているのだから、思わず笑いがこぼれてしまう。

「ふ、ふふ、はは、はははは……っ!!」

 笑って、その直後に温かいものが胸から込み上げてきて、大いにむせた。

 ゴホゴホと自分の咳が聞こえて、目の前に赤い飛沫が舞った。

 確かめるように胸へと手を伸ばすと、かたい金属の感触に行き着く。

 自分の胸を貫いた聖なる剣がそこにはあった。

(冷たいな……)

 剣は冷たかった。そこから生まれる熱さとは裏腹に、とても冷たかった。

 いや、その熱さも既に少しずつ薄れつつある。

 命が消えていく冷たさが、熱さを覆い隠していこうとしていた。

「兄さま! 兄さま!!」

 遠くから悲痛な叫びが聞こえてくる。

 そちらを見ると、遠く離れた位置から、少女がこちらに向かって来ようとしていた。

 だが、それを衛兵らしき人間が押しとどめている。

 遠く離れていても、その姿はよくわかる。

 長い黒髪と大きな黒い瞳をした美しい少女。いつも私の後ろに隠れていた彼女。

 その彼女が必死になって私に向かって来ようとしている。

 そんな激しい一面も、この数年で彼女が手に入れた成長の1つなのだろう。

 欲を言えば、その成長をもっと近くでよく見たかった。

(これで、本当に、よかったのか……?)

 自然と涙があふれそうになる。いまわの際で死の実感が込み上げてきたのだ。

 ふと空が翳る。白の篭手をつけた手が、私の胸から生えている剣を掴み、一息に抜き取った。

 その衝撃で再び口から血を吐いた。胸から一気に冷えが広がっていくのを感じる。

 剣を抜き取った彼の顔は、全ての感情を押し殺して、いっそ凄絶な様子だった。

「もう、休め……」

 かすかに聞こえた呟きは、私にだけ届いて消えた。

 彼の目には、私の死をあますことなく見届けるという、強い意志が宿っていた。

「あり……がとう」

 自分の血で粘ついた口から思わず言葉が漏れた。

 1人で死ぬ訳じゃない。そう思う事が出来て、先ほど芽生えた後悔が嘘のようにとけていった。

 その言葉を聞いて、青い瞳から一粒の涙がこぼれた。

 彼の白い肌を伝って、そのしずくがこぼれ落ちる。

 

 その様子が、私こと黒の魔王の最後の記憶となった。

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