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城に着く。
部屋に戻り、侍女に食事を頼む。
ぱぱっと浄化もしておく。
少し違和感があるが、気のせいだろう。
「身体は、大丈夫?」
「大丈夫だ。多分すぐに治るよ」
確証はないが。
治ってくれないと困るしな。
飯が運ばれてくる。
旨いな。
スープが体にしみる。
動いた後は飯がうまい。
米も食いたいが、贅沢というものだろう。
「そういや、ネメシアはユニーク持ってないのか?」
「ユニーク持ちの方が珍しいのよ?」
「無いとは言わないんだな」
「そうね。でも、実力はあまり表に出さないくらいがいいのよ」
はぐらかすのがお上手で。
侍女を呼び、皿を下げてもらった。
御馳走様。
「まあ、レベル3到達おめでとう」
「ん、そうだったのか?」
「何十匹も倒したのよ。レベルの一つくらいは上がるわ」
「結構上がるもんだな」
上にはどれだけあることやら。
「わかりやすく実力を数値化でもしてくれないものか」
「普通の冒険者はしてると思うわ」
なんか衝撃発言がポロっと出たような。
「できるのか?数値化」
「できるわよ?」
そんな当然のことのような顔をされても。
「なんで教えてくれなかったんだ?」
「んー、実力を見極める審美眼を鍛えるためかしら?」
「はぁ」
わからんでもなくも無い。
でもネメシアのやることだし、何かあるんだろう。
軽くこの先について話し、寝ることにする。
寝る前に一つ。
「この国、守りたいか?」
少し真剣なトーンになってしまった。
ネメシアはこちらに顔を向けることもなく、一言。
「私は、傭兵よ」
*
日は上る前。
空も白けていない。
いつからか夢も見なくなった。
だから、眠るときは怖いものがある。
目覚めなくなる時が来るのかと。
ネメシアは眠っている。
特に何がしたいわけでもないし、少し寝顔でも眺めていようか?
肌は少し白め。
髪は黒だけじゃなく、白も少し見える。
苦労してんのかな。
顔は童顔。
というか小っちゃいな。
こんな体で戦ってんだな。
140?150はないだろう。
小学校高学年の女の子と同じくらいじゃないか?
こうやって見れば、妹のようにも見える。
かわいいものだ。
頭を撫でようと手を伸ばすが、やっぱりやめておく。
眠っている間くらいは、安らかにしてあげよう。
ベッドから離れる。
そういえば体は軽い。
本当に一日で治ってしまうとは。
一応身体を伸ばしておく。
しっかり動く。
今日も戦えそうだ。
だが、ようやく空が白んできた頃。
起きるには少し早いくらいだ。
装備でもみていよう。
ベッドの近くに立てかけてある。
剣。
長剣になったり槍になったりしているが。
刃がかけているわけでもない。
防具。
胸当てに膝当てに肘当て。
どれも急ごしらえのものらしいが、ちょうど位の大きさだ。
魔石を入れる袋はネメシアに預けている、
特に問題もないだろう。
やることが、ほかに何かあるか?
収納スペースはあるが。
ネメシアの部屋だったわけだし、いろいろありそうだ。
だからこそ見るのはやめておこう。
昨日みたいに外でも出歩こうか?
いや、ネメシアを心配させてしまうかもしれない。
……寝るか。
ベッドに戻り、横になる。
見慣れない天井。
別に、戻りたいわけではないのだが。
思い出さないわけではない。
複雑な世界だった。
あぁ、気分が悪くなりそうだ。
目を閉じる。
全てを忘れて、眠ろう。
*
揺さぶられている。
誰かが俺を起こそうとしてくれているのか。
というかそんなことする人は一人しか思い浮かばんな。
体を起こす。
「おはよう、ネメシア」
「ええ、おはよう。今日は遅かったわね?」
「二度寝だ」
もう日も昇り、食事も持ってきてくれたようだ。
ありがたく頂こう。
うん、今日も旨い。
毎日早く起きて支度しなきゃいけない日々じゃないから、楽でいい。
ああ、幸せだな。
部屋にはカトラリーと食器の音が響く。
会話はない。
御馳走様。
皿を下げてもらう。
「今日も、狩りに行きますか」
「そうね」