表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で傭兵はまったり生きたい  作者: 永久不変
第一章 始まり、小国にて。
8/122

8


場所は変わってまた森。

俺は一人ゴブリンを狩っている。

ネメシアが少し敵を集めてくるとか恐ろしいことを言って走って行ったもんだからな。

手持無沙汰に敵を狩っているわけだ。

上から下に剣を振りぬく。

袈裟切り。

これで3匹だ。

辺りに敵がいないことを確認し、魔石を剥ぎ取る。

なんというか、少し慣れたな。

少しずつ、作業になってきている気がする。

強くなってきているのかな?

それなら、嬉しいことだが。

そんな風に黄昏れていると、大量の足音がする、

というか多すぎないか?

地震でも起きてるんじゃないか?

音の来てると思われるほうに視線をやる。

するとそこにはゴブリンたちの攻撃を軽くいなしながらこちらに向かって走ってくるネメシアの姿が!

って嘘だろ!?

なんて数だ。

数えるのが面倒なほどだ。

どっからあんなに持ってきたんだ?

というかこっちへ一直線だ。

逃げなくては。

ネメシアが俺に追いつく。

俺も逃げる。

ゴブリンが凄い勢いで襲ってくる。


「ネメシア!いったい何をしたんだ!」

「ちょっと小突いてあげただけよ?」


それであんな数のゴブリンが襲ってくるのかよ!?

恐怖が身体に奔る。

だが、かつて覚悟は決めたのだ。


「あれらを殺す算段はあるのか?」

「あなたがやっちゃえばいいのよ?」


その答えはおかしい。

が、言っていることは正しいのだろう。

やれるか、俺?


「ちょっと、時間を稼いでくれ」

「あれを相手にかしら?無茶言うのね」

「誰があんなにつれてきたんだよ!」


もう森も抜け、草原にたどり着く。

だがまだまだあいつらは追ってきやがる。


「早く助けに来てね?」

「できる限りはな」


なんだかんだ言いながら、ネメシアはゴブリンどもの足止めに向かってくれた。

ありがたい。

さあ、飾ろうか。


「神の名を冠し」


風が、嵐と呼ぶべきものが、吹く。

強すぎる。

何かおかしくないか?

身体の中では、何かが走り回っている。


「悪魔に堕とされた」


森がざわめく?

これが?

ざわめきなどとうに通り越している。

木すら既に折れそうだ。

この感じ、気持ちわりい。


「かつては主神――」


あ゛?

膝をつく。

体が軋む。

なんだこの痛みは。

風は、嵐はやんだ。

血が、魔力が、身体に駆け巡る。

体が持たねぇ。

何かにぶつけなければ。

ああ、クソッ。


「le Brave des Braves!」


身体から溢れ出す魔力が、俺を包む。

一言で十分だ。

馬でも剣でも胸甲でも。

簡単に作り出してみせる。

ああ、血が騒ぐ。

吶喊、吶喊せよ!



ネメシアが引き付けているのがわかる。

いや、もしかしたら彼女なら一人で全てを倒してしまえるのかもしれんな。

それをしないのは、俺のためか。

早く助けに行こうか。


「いざ、吶喊!」


重装の騎兵が、人馬一体となり吶喊する。

質量×速度の答えを見せてやろう。

馬上槍を手に。

馬が走り出す。

やはり草原はいいな。

思わず笑みがこぼれる。

いい速度が出ている。

足音か、それとも勘か。

こちらに気付くやつもいる。

だが、かまわない。

もう止められる訳がない。

王の命でも、神の命でも。

接敵する。

俺の槍は敵を貫き、

馬の蹄は敵の頭蓋を砕き割る。

いくらかの敵を貫き、いくらかの敵を押しのけ潰せば、群れの中を脱してしまった。

向きを変え、再度吶喊する。

剣で首を刎ね、馬は何もかもを弾き飛ばす。

圧倒的だ。

これを虐殺と言わずしてなんというか?

一方的な殺戮は、すぐに終わる。

敵の全滅という、確かな結果を以て。


「俺の相手をしたければ、この5倍は持ってくるべきだったな」


戦い足りないくらいだが、今日はこの辺で仕舞にしとこう。

いつからか、視界は赤く染まっているから。

もう飾る必要もない。

虚飾を解く。

身体中に奔っていた血の感覚がおさまる。

だんだんと視界からも赤が消えてきた。

その場で横になる。

どう考えても、俺の器じゃ小さすぎだ。


「トワ!」

「おーネメシア」


俺を心配してか、駆け寄ってくれる。


「引き付けありがとうな。それとついでに悪いが、魔石も剥いでおいてくれないか?」

「それはいいのよ。それよりあなた大丈夫?」

「大丈夫だが?」

「嘘ね。私の声も聞こえてないみたいだったじゃない」


声?

そんなの、聞いちゃいない。

言っていたら、気づくはずなのに。

何故?

そこまでイカレちまったか。

だが、そこまで心配させるのは。


「いや本当に大丈夫だ。今だって筋肉痛みたいなもんだ。明日には治ってるさ」

「……無理はだめよ?」

「わかってる」


無茶はするけど。

なにはあれども、魔石を剥いでもらっている。

終わるころには、歩いて帰れるくらいにはなっているだろう。

調子が良すぎるのも考え物だ。



普通に歩いて帰っている途中。

町には活気が満ち満ちている。

その中を、無理やり進むわけでもなく。

何故か、道ができていく。

最初はお偉い方だからと思ったが。

実際はどうなんだろうか?

こちらに目をあえて向けないような。

気にしないようにしているかのように。

一瞬誰かと目が合う。

すぐに目をそらされるが、よくわかった。

畏れか。

俺も、気にしないでおこう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ