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異世界で傭兵はまったり生きたい  作者: 永久不変
第一章 始まり、小国にて。
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7


一度森を抜け、平原に戻る。

持ち慣れない剣は重く感じる。

そんなことを考えていると、日本にいた頃を思い出す。

賢いわけではなかったが、馬鹿でもなかった。

まだまだ覚えている。

ちょっとした興味心でネメシアに聞く。


「なあネメシア。数学はできるか?」

「すうがく?何かしら、あなたの世界の事?」

「まあ、そんなとこ。算数は知らないか?」

「知らないわ」


この世界は大体こんなものなのか。

いや、言葉を知らないだけかもしれない。

身体を横にしつつ、さらに聞く。


「じゃあ、3+5は?」

「8かしら?」

「じゃあ、9-6は?」

「3じゃないかしら?」

「じゃあ……3-6は?」

「えーと、そうね。そんな問いを聞いたことはあるわ」


この世界に負の数という概念があるのか。

かつての勇者が持ち込んだのかもしれないな。

馬鹿げた数だと言われるかと思ったんだが。


「じゃあ、4-4は?」

「わかるわ。0でしょ?」

「ああ、そうだ」


どうやら、ゼロの概念もあるらしい。

草原に仰向けで寝そべる。


「なんで藪から棒にそんなことを聞いたの?何かあったかしら?」

「いや、前いた世界を、日本を思い出してな。

 ただただこんな問題を解き続ける日々だったなーって」

「それは……私には無理ね」

「無理でもやらなきゃ社会不適合者だったからな……」

「お疲れ様。この世界はそんなことはないから安心していいわ」

「ありがと」


ネメシアがかけてくれる優しい言葉で、涙腺が緩みそうになった。

このことを前の世界で言っても異端者扱いだからな。

まだ太陽が真上にも届かない時間帯。

勢いをつけて起き上がる。


「よし、次行くか」

「まだ戦えるのかしら?」

「いざとなったら助けてくれるんだろ?」

「できる限りはね?」

「それで十分だ」



森に戻り、さらに何匹かゴブリンを狩る。

太陽が頭上を通り、少し進んだ頃。

まだゴブリンを狩っていた。



今ので、4匹目。

もう1匹いるはず。

後ろにいるか?

出来る限り素早く振り向く。

見えない。

辺りには木があるから、隠れるところには事欠かない。

どこだ?

右か?

左か?

正面か?

耳を澄ます。

目を見開く。

右後ろから聞こえたか?

草むらを進む音が聞こえる。

後ろにいるか?

振り向く。

いた。

俺に見つかったことに気づいたか。

向きを変えて、こちらに走ってくる。

基本的に突っ込んでくるばかりで単調だ。

軽く躱す。

後ろから切りつける。

勢いのままゴブリンが倒れる。

すぐに追撃をする。

切っ先を下に。

首を落とす。

これで5匹。

多分これで全部倒したはず。


「後ろ!」


ネメシアの声が響く。

その声と直感に従い、片手で剣を後ろに振る。

高さは中段。

ゴブリン相手だったら頭辺りに当たるはずだ。

何かが俺に降りかかる。

当たったか?

衝撃が軽い。

手から剣がすっぽ抜けそうだった。

だが、確かに感触はあった。

どういうことだ?

辺りに敵がいないことを確認して、死体のはずのゴブリンを見る。

なるほど。

俺の剣は敵の首を切り裂いていた。

先ほど俺に降りかかったのはこいつの血だったのか。

意外とやれるもんだな。

後ろから誰かが駆けてくる音がする。


「大丈夫だった、トワ?」

「ああ、何とか」


被害をあげるとすれば、返り血を浴びたくらいだ。

後、結構剣を振り回しているものだから、少し腕が疲れた。


「運よく、首を切り落とせたからな」

「運よく……あっ」

「どうしたんだ、ネメシア?」

「おめでとう、トワ」

「いきなりどうした?」

「レベルアップよ」


これが、か。

あまり実感がわかない。


「どうして、分かるんだ?」

「私は、“見える”もの」

「そいつは便利だな」


相手の実力をざっくりではあるが見極められるのはいいな。

俺も見えたらいいんだが。


「それは俺にも出来るようになるか?」

「生まれつきだから、無理だと思うわ」

「そっか」


実感はわかないが、レベルが上がったんだ。

まずはそれを喜ぶべきだろう。


「これで俺はレベル2なんだな」

「ええ。おめでとう」

「ありがとう。ところで、ネメシアはレベルいくつなんだ?」

「まあ、ほどほどよ」


はぐらかされてしまった。

実力は隠すべきなのだろうか。


「レベルも上がったことですし、一度戻りましょう。

 お昼ご飯も食べたいところだわ」

「いいね。まだまだ戦うことを考えると、食わなきゃやってられないね」


もう何匹ゴブリンを殺したか。

魔石を数えるのも面倒になってくる。

それでもしっかり剥いで行くのだが。



都に戻る。

あまり気にしてはいなかったが、屋台がそこらに立っている。

少し気になりはするが、ずんずん進んでいくネメシアに置いて行かれないようについて行く。

そういえば、あまりこの国の人と話したことはないな。

代わりに突き刺さるような視線はあるのだが。

わざわざこちらから話しかける事でもないか。

そんなことを考えてる間に、城につく。


「今日はネメシアが作ってくれるのか?」

「私はあまりそういうのは、得意じゃないわ」

「そうか、食ってみたかった」


女の子の手料理、食ってみたかった。

まあ昼飯食える以上、文句は言っておれんな。

一度部屋に戻る。


「そういや俺って虚飾以外に何か能力持ってるのか?」

「んー剣術があるわね。レベル1だけど」

「能力にレベルがあるのか?」

「ユニーク以外はあるわよ?」

「そういうモノなのか」

「そういうものよ」


軽く能力について会話を交わしていると、侍女が飯を持ってきてくれる。

パンにスープ、それにジャガイモか?

昔は観賞用に使われていたらしいんだが、食用として使われているんだな。

見た目も味もまさにジャガイモだった。

侍女に皿を下げてもらう。

美味しかったと言っておく。



「午後も戦うか?」

「まだ能力も使ってないわよ?」


とどのつまりは戦うわけだ。


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