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異世界で傭兵はまったり生きたい  作者: 永久不変
第一章 始まり、小国にて。
6/122

6

場所は変わって、昨日の森。

ゴブリンと戦った、あの森だ。


「今日もゴブリンをぶっ殺せばいいんだな」

「まあ、そうなるわね。ただ、昨日みたいなお膳立てはしないから、頑張ってね」


可愛い笑顔が、悪魔の微笑みに見えた気がした。


「とどのつまりは、何体ものゴブリンを相手にしろ、と」

「このくらいは駆けだし冒険者の大多数ができるわ」

「……努力はするけど、死にそうになったら助けてくれると嬉しい」

「別に死なせたいわけじゃないから安心しなさい」


まったく安心できないという言葉を飲み込み、前に進む。

少し前まではあんなに安全な国にいたというのに。

未来は本当に予想がつかないものだ。

すぐに、2匹のゴブリンを見つける。

こちらに背を向けて、何かを食っているようだ。

何かはわからないが、都合がいい。

静かに、音をあまりたてないように間合いを詰める。

食うのに夢中でこちらに気づいていなさそうだ。

この距離ならいけるか?

剣を左にかまえる。

姿勢を低くし、右足で思い切り地面を蹴り、跳び出す。

その音で気づかれたが、もう遅い。

完全に剣の間合いに入った。

右足が地面につく。

少し不安定な体勢だが、構わない。

そのまま右に振りぬく!

腕を切り飛ばし、胴体を裂かずに、砕く。

衝撃が腕に伝わってくる。

昨日は興奮していたからわからなかったが、かなり痺れる。

ゴブリンはその勢いのまま吹き飛ぶ。

多分、死んだと思う。

だが、もう一匹いる。

一匹のゴブリンをやるまでにそこまで時間はかからなかったと思うのだが。

反応が早い。

すぐにこちらを見定め、威嚇してくる。

だが、一対一なら昨日もうやったんだ。

負ける気はしていない。

それに、昨日と違って足も震えていない。

勝てる。

変わらずゴブリンは突っ込んでくる。

真っ直ぐ俺に向かって。

気迫だけはたっぷりだ。

左側から向かってくる。

体勢は崩れたまま。

勢いのままに前に出る。

少し体が痛むが、構わない。

直接武器で受けるより、躱した方がいい。

ゴブリンが後ろを抜けていく。

剣に振られるようにして、ゴブリンの方に体を向ける。

ゴブリンは避けられたことが分かったらしく、途中で止まった。

ゴブリンの後ろを取った形になる。

それも、切っ先が何とか届きそうな距離だ。

いける。

そう思って、大上段から剣を振る。

が、掠ったか?

手ごたえが軽すぎる。

その通り、生きていた。

倒れた状態で、ではあるが。

何かに躓いたのだろうか。

今は、気にすることではないが。

更に近くにより、片腕を踏む。

抵抗されるが、体格が違い過ぎる。

そのまま、剣の切っ先を下にし、首を断つ。

きっと死んだだろう。

これで、二匹だ。

戦果は上々だな。


「おーい、ネメシア」


ネメシアがいたはずの所を見ると、いない。

と思ったら、ゴブリンの魔石を回収していた。

すぐにこちらの呼ぶ声に気づいたらしく、顔を上げる。


「あら、終わったの?」

「ネメシアのように簡単に、とはいかなかったけどな」

「じゃあ次は3匹ね」

「おいおい……」

「これも生き延びるためだと思って、頑張ってね」


次の獲物のゴブリンは、少しあたりを見回せばいた。

4匹か……。


「少し多くないか?俺には厳しいぞ」

「んー、そうね。じゃあ私が少し足止めするわ」

「それなら、行けそうだ」


相手はきょろきょろと辺りを見回しているが、視点が低いからだろうか。

こちらは見つけられていない。

これなら、行けるか。

姿勢を低く、草むらに隠れる。

そのまま、相手の視線に入らないように草むらを経由して近づく。

出来るだけ足音は消したが、気づかれていないか心配でならない。

ちらっと見てみる。

気づいてない、かな?


「トアはまず、一番手前のをやって。それで視線がトワに集中している間に、一番後ろの1匹をやるわ」

「オーケー」


小声で作戦を決める。

やれるかどうかは、分からないが。

剣を左に構えておく。


「それじゃあ、行くわよ。3、2、1」


0の声が聞こえるかどうかで草むらから跳び出す。

一番近いゴブリンは……右前!

右足で地面を踏み込み、剣を左に振り切る。

ちょうど相手の頭に当たる。

何かを砕いた感触が手にかえってくる。

そういうことだろう。


「次!」


叫んでこちらに注目させる。

何もしなくても、多分ネメシアはうまくやったとは思うが。

少しでも、だ。

残り3匹。ネメシアがやる分を抜いても2匹。

ダメージ覚悟ならまず、いけるだろう。

でも痛いのはなぁ。

とりあえず、数を減らすことを考えよう。

一番近いのが、向かって左側にいる。

いや、いた。という過去形になったな。

こちらに向かって走ってきている。

敵のいない方に避ける。

ゴブリンは俺の数ミリ横を通過していく。

布が少しふれたかもしれない。

だが、躱した。

避けられたことがわかってゴブリンは止まる。

すぐ近くで止まってくれる分には、いい的だ。

剣を構えなおす。

剣の先端に重心を持っていかれながらも、振り切る。

毎回のごとく重心を持っていかれていないか?

まあいい。

身体が軋むのも気にしない。

振り切った剣がゴブリンに当たる。

無茶な姿勢ではあったが、ゴブリン1匹には十分な攻撃力だったようだ。

少しの痺れが手に残る。

やったか?

それよりも、もう2匹いるはずだ。

視線を敵がいたはずの方に戻す。

まずい。

1匹が走ってきている。

体勢が悪い、躱せそうもない。

勢いのまま体当たりしてくるか?

剣を前に構え、受け止めようと試みる。


「くっ!」


小さいとはいえ、重量はある。

二、三歩下がり、勢いのまま尻餅をつきそうになるのをどうにかとどまる。

体勢は悪いままだったが、どうにか。

相手はこちらにあたった衝撃で尻餅をついている。

追撃を受ける心配はないか?

ならよし。

地を踏み鳴らす。

相手は立ち上がろうとしている。

一歩前へ出る。

相手はこちらを再度見定めた。

もう一歩前へ。

相手は立ち上がった。

剣を上に。

相手は最大限の抵抗か、こちらに殴り掛かろうとしている。

だが、遅い。

剣はすでに振り下ろされた。

肩口から剣が入る。

胸の近くまで裂いて、止まった。

死んだか。

もう一匹いるはずだが。

こいつを倒す前にはいたか?

視線を再度そちらに戻す。

と、ネメシアが立っていた。

多分気づかないうちにやってしまったんだろう。

気配くらい簡単に消せそうだ。

ネメシアの方に近づこうとするが、剣がゴブリンに突き刺さったままだ。

足蹴にしてどうにか剣を引き抜く。

砕くことが多いから、なかなかない悩みだった。

ただ俺の腕が悪いだけなんだろうが。


「ネメシアー?」


呼ぶとこちらに気づいたようで、こちらを見る。


「3匹どうにかやったぞ」

「お疲れ様。そっちの魔石は取っておいてくれない?」

「りょーかい」


ナイフで死体を、胸を開ける。

前人体の解剖書を見たような気がするが、こんなんだっけか。

なんにせよ、魔石を取り出す。

他のゴブリンに対しても、同じことをする。

命を奪ってる感じがして悪くない。

全部剥ぎ取り終える。


「よし、終わったぞ」

「そうね、次は5匹にする?」

「さすがに疲れたよ……」


心の底からの疲れを口にしたら、ネメシアもわかってくれたようだ。

体力はそこまであるわけでもないからな。

今どきの高校生なんて、そんなもんだ。


「じゃあ、ちょっと休みましょうか」

「それがいい」


ブックマーク登録ありがとうございます。

拙作ですが、楽しんでいただければ幸いです。

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