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異世界で傭兵はまったり生きたい  作者: 永久不変
第一章 始まり、小国にて。
5/122

5

日が昇るころに目が覚める。

これは習慣で、いつごろからかずっとそうだ。

隣のベッドを見れば、ネメシアが眠っている。

起こさないように気を付け、ベッドから出る。

昨日のが残っているのだろうか。

少し体が痛む。

軽く体を伸ばし、窓へ向かう。

窓から空を見れば、ある方が赤くなってきている。

多分あちらが東だろうな。

外を見るのをやめ、部屋から出る。

所々で音がする。

こんな時間からいろいろな準備をしているのだろうか。

城の人たちも大変だ。

少し城の中をふらついてみよう。

まずは顔を洗う水が欲しいな……。



ここは多分城の中庭。

城の裏に井戸でもあるんじゃないかと推測して歩き回っている。

が、城は城。

周りの庭だけでどれだけの面積があるのやら。

歩き回るだけで疲れそうだ。

赤かったはずの空も、大地に光が差す朝になっている。

どちらにしても、綺麗に澄んだ空なのは変わりない。

もうネメシアも起きているだろうか。

部屋に戻ろう。

不思議と、筋肉痛のような痛みのことなどもう頭にはなかった。



部屋に戻ろうと正面扉をくぐると、誰かにぶつかってしまった。

結構思いっきり走っていたのか。

かなりの衝撃が伝わってきた。

相手方なんて尻餅をつくほどだ。


「すみません。大丈夫ですか」


立ち上がる手伝いにと、手を差し出す。


「あ、いえ、こちらこそ…………って、トワ?」


俺の手を取ったのはネメシアだった。


「そんな急いでどうしたんだ、ネメシア」

「だって、朝起きたらあなたがいないから。

 探さなくちゃって思って」

「探してくれるのは嬉しいんだが、そんな慌てられても困るぞ?」

「この生活が嫌になって逃げだしたのかと思って」

「俺信用無いなぁ。ハハ」


嫌になったどころか、逆なんだがな。

前の、生きることにすら意味を求める世界よりも、

生きることそのものを意味とするような世界の方が、好きだ。


「とりあえず、朝ご飯食べに行きましょう」

「あー俺は……」

「しっかりご飯食べるって昨日約束したでしょう?」

「……そうだな。たまには食べようか」

「たまには、じゃなくて、これからは基本毎日よ」

「わかったよ」


誰かと囲む食卓なら、毎日でも悪くない。

いや、それを望んでいたのかもしれない。



食事をとり終え、今日はどこに行くのかをネメシアと話していると、侍女が部屋に来た。

どうも、王に謁見しろとのこと。

この後の俺の立場についてでも決めるのかもしれないな。

案内するそうなので、ついて行く。



ところで、この国の王は陸軍の総帥、または将軍を務めることが習わしとなっている。

いざというときにすぐに、また意志を曲解されないようにするためらしい。

また、二つの役職があるのは、戦いが得意な者か得意でない者かによって分けているらしい。

今の国の王は……総帥だ。

とてつもない勇将だという話だ。

最前線で自ら指揮を執っているとか。

死んだらどうするのだろうか……?

一つ言えるとしたら、とてつもない偉丈夫だということだ。

そんな王が、オルドノア三世が、今、そこに立っている。



「よく来てくれた、トワ」


今俺の前に立っている偉丈夫が、この国の王だ。

この国は戦争により代替わりが激しかったらしいが、今の王になってからは安定しているとのことだ。


「ただ今、参りました」

「うむ。それで、傭兵として依頼する」

「何でしょうか」


王がこちらに一歩近づいてくる。

かなり大きいものだから、圧迫感すらする。


「一か月後。ある男と戦ってほしい」

「わかりましたが、殺し合いですか?」

「模擬戦だ。双方殺してはならない」

「わかりました」

「あとは、ネメシアに伝えておく」


俺は、静かに退室した。



あー、怖かった。

よくわからないけど威圧感とでもいうモノを感じた。

王なのだから、威光というモノか?

なんにせよ、歴戦の古兵の風格だった。

部屋に戻ろう。

変な汗をかいてしまった。

今日はまだまだこれからなのにな。



部屋に戻ると、ネメシアが武器を点検していた。

それもネメシアの武器ではなく、俺のをだ。

ありがたいと思いながら見ていると、こちらに気づいたようだ。


「おかえり、トワ」

「ただいま。武器見てくれてるのか。ありがとうな」

「貴方は強くなる義務があるもの。このくらいは、ね?」

「恐ろしい義務だ。逃れられそうもない」


軽く冗談を交わしあう。

やっぱり、礼を尽くさなきゃいけない場というのは、好きではない。

身体が固まってしまいそうだ。


「そういえば王様に、後はネメシアに聞けって言われたんだが」

「ああ、あの事ね。わかってるわ」

「何のために俺は呼ばれたんだか」

「ただの慣習よ。面倒なものよね。とりあえず説明するわよ」


ネメシア曰く、俺のことはもうすでに有名になっているらしい。

なんでも、王が直接勧誘するほどの男だとか。

勇者にだって引けを取らない剣士だとか。

驚くほど話に尾ひれがついている。

いつかはそう語られる可能性も0ではないが、今の俺は……。

とてもじゃないが、似ても似つかないだろうに。

まあそれで、他の貴族が腕を確かめたいとか何とかで。

あれよあれよという間に、模擬戦がセッティングされた。

試合は一か月後の今日。

相手は貴族の子飼いの傭兵。

新進気鋭の、最近名をあげている傭兵らしい。

勝てるかどうか聞いてみたところ、今は無理だとさ。

もっと強くなる必要があるらしい。


「強くなる義務があるってのは冗談じゃなかったわけか」

「なにも、私は冗談を言っていたつもりはなかったもの」

「困ったなぁ。じゃあ、今日はどうしようか?」

「戦うしかないわね。」

「まあ、そうなるだろうとは思っていた」


作者は遅筆故、次の投稿はまた今度になります。

お楽しみ頂けているのであれば、幸いです。

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