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異世界で傭兵はまったり生きたい  作者: 永久不変
第一章 始まり、小国にて。
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3

都に帰り、城へ向かう。

王に部屋を一室貸してもらっている。

想像より、いい部屋だった。


「こんないい部屋を貸してくれるとはな。

そこまでして抱え込みたい人材なのか?俺は」

「それはもう。異世界人、それも勇者と呼ばれるような人は凄いらしいのよ。

 一騎当千どころか、一万、十万もの軍勢を打ち破れるのだとか。

 まあ、私は見たことないんだけれどね」

「でも、よく知ってるじゃないか」

「それは、御伽噺の題材としてよく使われるからかしら。

 でも、もしかしたら、見れるかもしれないわ」

「そいつはなんで?」

「召喚されたのよ、勇者が。それも、かなりの人数が」

「そうなのか?凱旋も何もないが」

「そうでしょうね。昨日召喚されたばかりらしいの」

「昨日?」

「ええ。貴方が都に現れた、昨日よ」

「そうだな……。まあ、思い当たりはある」


昨日の事、それも普段はあり得ない事だったから、よく覚えている。

帰り、HR中の教室で。

教室中が光りだした。

そこから先は……曖昧だが。


「それで、どこの誰が勇者を召喚したんだ?」

「それがね、今回は四大国で同時に行われたの」

「すまんが、そもそも四大国ってどこの事だ?」


ネメシアはため息を一つ、そして続ける。


「王国、帝国、教皇領、そして皇国の事ね。この国から一番近いのは王国よ。

 基本的な知識だから、覚えておかないと恥かくわよ?」

「おう、覚えておく」

「それで、四大国で召喚されたんだけど、今回は一国につき41人。

 総勢164人もの勇者が召喚されたっていうのよ」

「それは……勇者御一行召喚の間違いじゃないか?」

「さあ、そうなんじゃない?」

「えぇ……」

「まあ、これまでに例に見ないほど規模が大きいらしいわ。

 たいていは十数人程度で、百人を超えることも無かったらしいわ」

「へぇ、それほど、相手が強力なのか?」

「いえ……もし、それほど強力なら、この国が存続しているかどうかすら怪しいわ」

「理由がわからないな」

「わからないというよりかは、理由がないのかしら」

「偶然、か」


ネメシアとだべっていたら、侍女が食事を運んできてくれた。

城で数十人単位で雇われているらしい。

貴族が宮廷儀礼を学ぶためにここで働いていることもあるとか。

と言っても、この国には貴族は僅かしかいないのだが。

かなり中央に権力が集中していそうだ。

それはいいとして、食事はパン、スープ、肉、ビール。豪華だな。


「これは、豪華な食事ね」

「本当に豪華なんだな……」


少し皮肉めいて言ってみたのだが。

まあ、日本での俺の食事に比べて、決して見劣りはしない。

強いて言えば、温かい米が欲しいくらいか。


「ところで、これは何の肉なんだ?」

「イノシシの肉じゃないかしら。少し臭みはあるけど、美味しいわよ」


俺の知らない病気とかがあるかもしれないから怖いんだが……。

腹は減っているし、病気については、なってから考えよう。



「あぁ、うまかった。御馳走様」

「私もお肉久しぶりにたくさん食べたわ。美味しかったわね」


侍女が皿を下げてくれる。

なかなか食べる機会がないらしいし、少しくらい食べさせてあげてもよかったかもしれない。

また今度、覚えていたらそうしよう。


「そういや、一緒にこの部屋に来たけど、まさか同室するのか?」

「ええ。気にしないでしょう?」

「いや、結構気にする。それに、自分の部屋があるんじゃないのか?」

「ここよ」

「へ?」


ここが部屋だとかいうカミングアウトをされたが。

それにしては私物が少なくないか?

さっぱりとした、きれいな部屋だ。


「つまり、俺がネメシアの部屋にお邪魔するわけか」

「そうなるわね」

「嫌じゃないのか?」

「別に?」


王様はわかってやっているのか?

俺だっていい年なんだぞ?

自制くらいはできるが、あまり心地よいものでもない。


「何はともあれ、よろしく」

「ええ、よろしく」


考えても状況は改善しそうにない。

なら、妥協するのが一番だ。


「それで。ネメシア。この世界、風呂はあるのか?さっぱりしたいんだが」

「お風呂は……そうねぇ。湯船につかるようなものは基本ないわ。

 代わりに、簡単な魔法があるのよ」

「魔法か。俺にも使えるのか?」

「簡単よ。少なくとも、使えない人を見た事ないわ。

 それに、貴方も魔力を使っていたじゃない」

「いつのことだ?」

「今日戦っていた時に、使っていたじゃない。

 どちらかと言えば、魔力を使う能力と言ったところだったけど」

「虚飾の事か?」

「そうよ。だから……『浄化』」

「・・・何か変わったのか?」

「ええ。今これで、体の表面は綺麗になったわ」

「そうなのか?」


ネメシアに近づいて、匂いを……!?


「匂いが、無い!?」

「あ、な、た、ねぇ……!」

「あ、すまんすまん。つい」


そりゃ、女の子は匂いを気にするもんな。

考えが足りなかった。

これから暮らしていくのに、こんなことで大丈夫か?


「で、俺も使えるのか?」

「使えるはずよ。ただ、少しコツをつかむ必要はあるわね」

「ふむふむ。で、どうすればいいんだ?」

「そんなにせっつかなくても教えるわよ。

 まずは、体に流れる魔力の流れを感じて」

「いきなり難しいことを言うな。まあやるけど」


身体に流れる魔力の流れだという。

血の流れと同じようなものだろうか。

そんな風にイメージすると、何かを掴めたような気がする。


「これが、魔力か?」

「掴めた?なら次は、それを体のどこか一点に集めていくイメージを持って」


この魔力が、俺の血管を通って、胸のあたりに集まるようにイメージする。


「大体、イメージはできた」

「じゃあ、あとはその魔力に浄化を命じればいいわ」

「了解、『浄化』」


魔法を唱えると、俺の体がきれいに……なったか?


「魔法、しっかり発動したのか?」


自分の匂いを嗅いでみるが、正直よくわからん。

ただ、風呂入った後のほうがさっぱりしてる気がしただけだ。


「何というか……微妙ね」

「何だそれは。使えるんじゃなかったのか?」

「あーそうね。たまにそういう人もいるわ」

「えらく適当だな」


便利なものが使えるようになると、ひそかに期待していたのだが。


「まあどうにかする方法がないわけではないわ」

「なんかあるのか?早く言ってくれればいいのに」

「じゃあ、ちょっとそこのベッドに寝転がってくれる?うつ伏せで」


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