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異世界で傭兵はまったり生きたい  作者: 永久不変
第一章 始まり、小国にて。
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18


今日も飯がうまい。



飯を食い終わり、皿を下げてもらった。

もちろん美味しかった、の一言も添えて。


「さて、今日こそはしっかりコボルドを狩らなきゃね」

「そういや、そうだったな」


昨日は、結局見つからずに帰ってきたんだったか。


「行きましょう」

「おう」



都を出て、森の中を進む。

獣道があるくらいで、村がどこかにあるなんて信じられない。

しかし、ネメシアは慣れたように進んでいく。

歩幅は俺のほうが大きいはずなのに。

ついて行くのが精いっぱいだ。

唐突に止まり、木の裏に隠れる。

俺も隠れる。


「ゴブリンがいるわ」

「何匹だ?」

「えっと、三匹いるわ」

「目的の相手じゃないし、一匹は頼む」

「わかったわ」


少し頭を出し、相手の位置を確認する。

近くに二匹。

少し奥にもう一匹。


「近くにいる奴を、一匹頼む」

「ん。じゃあ、行くわよ」

「了解!」


俺の叫びを合図に、飛び出す。

ただ、それで気づかれたか。

だが、関係ない。

すぐに間合いを詰め、剣を横に振る。

途中で抵抗が強くなったかと思えば、すぐに軽くなる。

吹っ飛んでいったか。

死んだかどうかはわからんが、動けるとは思えないし放置する。

奥にいたゴブリンは、俺を見定めると、怒ったように走ってくる。

が、途中で地表に出ていた木の根っこに引っかかり転ぶ。

知能が低いなーと思いつつ、近づき、片足を切る。

もう立ち上がれなくなったところで、首を落とし、殺す。

ずいぶん作業になったものだ。

最初の緊張感はもう無いに等しいな。

腰からナイフを取り出し、魔石を剥ぐ。

本当に、慣れたものだ。

まだ、ネメシアほどきれいには剥げないにしても。

ネメシアがいるだろう所に戻る。


「お疲れ様。魔石、剥いでおいたわ」

「サンキュー」


そう言うネメシアの手には二つの魔石。

さっき吹っ飛ばした奴のか。


「他、敵はいないか?」

「わかる範囲にはいないわ」


わかる範囲がどこまでかはわからないが。

まあ、きっと大丈夫だろう。



まだまだ奥に進む。

少し日が傾いてきたくらいで、まだまだ時間はあるだろう。

また、ネメシアが唐突に止まる。

魔物かと思い、すぐに身を隠す。

が、ネメシアはその場から動かない。


「どうした、ネメシア?」


とりあえず、魔物じゃなさそうだから、隠れるのをやめる。

どうにも思い悩んだ顔をしている。


「ねえ、トワ。あなたのことを信じてもいいのよね?」

「?もちろんだ」

「じゃあ、私の竜としての姿を見ても、そう言ってくれるのかしら?」


ああ、そういうことか。

これまで嫌われてきたんだ。

そりゃ、疑っちまうのもしょうがない。

だから、答える。


「ああ、もちろんだ」

「……そう。じゃあ、見て」


少し悲しそうな表情をする。

が、すぐに覚悟を決めたようで、腕まくりをする。


「今は完全には竜になれないけど、それでも、気持ち悪いと思うわよ」

「そうでもないかもしれんぞ」


俺の言葉を聞いても、それでも顔が晴れない。

ただ、集中し始める。


腕の肘から先が、膨張し始める。

俺でも、魔力が渦巻いているのがわかる。

一瞬、強く光ったと思うと、そこには体に似つかない大きさの腕が。

色は青白く、爬虫類特有の肌の感じ。


「ねぇ、これ、どう思う?」


なんて、自嘲気味に聞いてくる。

多分、否定的な言葉でも予想しているのだろうか?

だが、


「ああ、かっこいいな!」


感性が違うのだ。


「触ってみてもいいか?」


少し興奮気味になってしまう。

しょうがないじゃないか。

変身シーンとか、かっこよくない?


「え、ええ。別にいいわよ」


むしろネメシアが引いているような気さえする。

触感は、蛇とかと同じようで、それでいて硬い。

指もしっかり五本ある。


「ところで、この腕、重くないのか?」

「別に、普通の腕と変わらないわ」

「へぇ~。完全に竜になることはできないのか?」

「今は、私には、無理ね」

「ほうほう。それでそれで――」


二人でいろいろしているうちに、ネメシアの顔も晴れた。

やっぱり、笑顔のほうがいい。



「ねぇ、トワ」

「なんだ?」

「疑って、ごめんね」

「別にかまわんさ」

「……ありがと、ね」

「……どういたしまして」


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