14
少し時間がたち、二人並んでベッドに座っている。
ネメシアもずいぶん落ち着いたので、侍女に朝食を持ってきてほしいと頼んだ。
朝食の時間にはかなり過ぎているような気もする。
だからか、すでに朝食はできており、すぐに持ってくるとのことらしい。
「ごめんね、トワ」
唐突に、ネメシアが謝る。
「何のことだ?」
「いや、ほら、その、ね?」
俺の言葉を聞いていなかったのか?
「気に負う必要はないって言ったろ?」
「でも――」
「でも、じゃない」
「……そうね。ありがとう」
ネメシアの顔は、いまだに涙の跡が残りながらも、それでも綺麗に咲いた。
その鮮やかさに俺が耐え切れずに、少し目と話をそらしてしまうほど。
「それで、結局何が悲しくて泣いてたんだ?」
「えっと、それは……その…………」
また顔を赤くし、俯いてしまう。
嫌なこと思い出させてしまったか?
「すまん。別にそれについてはつらいなら言わなくてもいいぞ」
「い、いえ!ちょっとした事なのよ……」
「結局なんなんだ?」
「その………………あなたに嫌われるのが、怖くて」
これはこれは。
なんというか……可愛い奴だ。
思わずまた抱き締めてしまう。
ふぇ、だとかいう気の抜けた声を発するが、抵抗は一切されない。
信じて、くれたのかな?
「お前が変わらない限り、俺はずっと、お前の味方だよ。ネメシア」
「………ええ」
腕を解き、顔を見てみれば、目の端に涙をためている。
今はあんまり大胆なことはできないけど、それでもこれくらいは。
と思い、先ほどのように、涙で濡れた頬に口づけをした。
*
雰囲気は良かったのだが、侍女がすぐに朝食を持ってきてくれたため、先に食べることにした。
今日も飯がうまい。
特に会話もなく食べ続ける。
侍女が控えてるからな。
どうにも喋れないもんだ。
*
御馳走様。と言って皿を下げてもらう。
毎日おいしい食事を食えるのは、実に素晴らしいな。
「今日はどうする?大事を取って休むか?」
「大丈夫よ、ありがとう……って感謝してばっかね、私」
「そうだな」
顔を見合わせると、笑いが漏れる。
これだけ笑えるくらいになったんなら、大丈夫かな。
「でも、少しだけ」
「なんだ?」
「もう少しだけ、あなたの腕の中に居させてくれないかしら?」
ちょっぴり頬を赤らめ、そう言った。
優しさに、飢えているんだろうか?
それを俺に断れるはずもなく。
「満足するまでどうぞ」
と、できる限りの笑顔で言うくらいしかできない。
トテトテと早足で来るのが可愛らしい。
身長差か。
ちょうど胸に飛び込んでくる。
片手を背中に。
片手を頭に置き、撫でる。
思い切り顔を胸に押し付けてくるのが、かわいい。
それに対抗するように、思い切り抱きしめてやる。
なんか、和むなぁ。
「満足したか?」
「んー、もうちょっとだけ……」
「まあ、構わんけど」
そう言われ続けて、もう30分は過ぎた気がする。
まぁ、いっか。
こんな日があったって。
こんな拙作を評価してくださった方がいるみたいで。
ありがとうございます。
どうぞ、これからもよろしくお願いします。