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今回から本編にもどります。
「――それで、王様に頼んだわけか」
「そうだ。そして今に至る」
「追撃は?」
「なかった。どうにかしてくれたのだろうな」
「ふーむ……、大変だったんだな」
本当に大変な事情があったみたいだ。
しかし、ネメシアとレジーナが顔を真っ赤にして俯いている。
どうしてしまったのだろうか。
「せ、赤裸々すぎないかしら……?」
「あ、あはは……」
などと呟いている。
確かにレーティングがゼットぎりぎりな話をしていた気がするが、二人ともいい年じゃなかったか?
マトッシュはそんな二人をわかっていながらもあえて気にせずに話しているようだ。
「教会はもうない。今はここで暴徒鎮圧の仕事をしている」
「あー……。状況は酷いのか」
「今はまだ。おそらく、勇者がついたらすぐに起きるだろう。悪い為政者を勇者が倒す、という話に持っていきたいのだろう。教会と貴族、商人が手を組んでいる」
「そうなると――止められんか」
「できるのは、王を安全に脱出させることだけだ。責務もあって、今はできないが……」
難儀な状況の様だ。
しかし、そうなると。
「いつ王様は脱出するんだ?」
「おそらくクーデターが起きたその日になると言っていた」
「群衆の中を逃げ出すのか?無茶だ」
「同感だ」
雇用主のわがままを受け入れるのも傭兵か、とため息をつく。
それくらいのことはしてしかるべきか。
「その時までお互い準備するとしようか。貴重な話をありがとう」
「こちらこそ。――ところで、二人はまだなのか」
ネメシアの顔が赤さを通り越し、蒸気を吹き出しそうになっていた。