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異世界で傭兵はまったり生きたい  作者: 永久不変
第二章 王都にて、勇者と。
113/122

113 回想


「~~♪」


どうしてこうなったんだったか。

ベッドに座りながら心の中で頭を抱える。

不本意ながら、身を重ねてしまった。


「……ご機嫌だな」

「もっちろん!マトッシュは、まだ満足してない?」

「結構。それより、お前は誰なんだよ」

「そんなこと気にしながらやってたのー?つまんないよー?」

「もとからつまらん男だ」

「てかさー。私のことばっかり聞くけど、貴方もちょっと変わったー?なんていうの、壁?みたいなの無くなったんじゃなーい?」


まったく質問には答えないやつだが、言っていることはある程度的を射ている。

素が出てしまっているのも仕方ない事だろう。


「……で?質問に答えろ」

「やだなーそんな主導権握ろうとしちゃってー。武器握り締めてもしょうがないよー?」

「……クソが」

「んもー。しょうがないなー。レジーナがいいんでしょ?」

「あ?」


いきなり肩ににしなだれかかられ驚いたが、先ほどまでの邪悪な感覚が消えうせていた。

いや、むしろ神聖と言ってもいい。

それだけだとしてもわかる。

これは、


「レジーナ、か?」


尋ねる形だが、間違いない。

肩を揺さぶるが、顔が真っ赤だ。

熱でもあるのか?


「レジーナ、おいレジーナ!」

「……な、なに?」

「大丈夫か!?」

「だ、だいじょうぶだけど……」

「よかった……!」


一向に顔を合わせないことだけが気にとまったが、それでも力いっぱい抱きしめる。

また会えてよかったという一心で。


「マトッシュ……」


その心が通じたのか、レジーナも抱きしめ返してくる。

腕の中で囁きが響く。


「えっと、その……」

「どうしたんだ。レジーナ」

「シちゃった、ね。はは、は……」


だんだんと声が小さくなってきたのだが、良く伝わった。

覚えていたのか……。


「初めてだったんだから。……責任、とってよね?」

「――もちろんだ」


あそこまで積極的で初めて、というのは驚きだが。

むしろ責任を取らせてほしいくらいだ。


「それで――。さっきのは」

「えっと、もし私が二重人格だって言ったら……。いえ、気づいてるわよね。あなたは関わりが深かったし」

「つまり、教会から狙われるのは」

「私が、悪魔憑きだから」



悪魔憑き。

先天的、または後天的に悪魔を身の中に宿した者。

これまでに二回、殺したことがある。

両方とも後天的なものではあったが、レジーナとは似ても似つかない。

どちらも……まさしく悪魔のような形相だったからだ。



「……なぜ、教会に?」

「最初に、悪魔付きだとわかった時にね、この教会に殺処分を依頼したらしいんだけど……先生、ここのシスターだった人が嘘ついて引き取ってくれたらしくって――、って、ごめん、これまで誰にも言えなかったから……」

「……いや、気にしないでくれ」


むしろ、気にしたのは俺自身だ。

自らを家畜のように、殺処分などと口にできることが、悲しい。


「ありがと。……それで、両親は王都の方に移り住んだらしいわ。私が生きてることも知らずにね。今は先生も死んじゃって、ね」

「その、先生……は、誰かに教えたのか?」

「ないとは、思いたいけど。……先生が死んだあと、第一教会の人が、先生の遺品の一部を持って行ったことが。もしかしたら、何かに書き留めていた可能性も」

「先生、が死んだのは?」

「三年は前。……おかしい、ね。私を殺す余裕はいくらでもあったはず。それこそ、遺品を回収した次の日でも」

「・・・」


まず、レジーナ教会関係者に保護され、その人が死んだときにそのことが漏れたとする。

殺す余裕があったが、ほんの最近まではそうしようとはしなかった。

なぜ、今、か。


きっと同じ疑問にたどり着いたのだろう。

小難しい顔をしている。


「あなたの見解は?」

「誰か、知るべきでない人が知ったか」

「妥当ね……」

「なにか、別の意見が?」


俺の回答はお気に召さなかったらしい。

むしろもっと悩むような顔をしている。

そしてゆっくりと口を開いた。


「教会は、迷える羊たちの導き手。名が汚れることをひどくいたう。そしていま、正に教会の権威を示す出来事があった」

「勇者召喚か」

「今のところ、第一教会にはいい話がない。教会そのものの権威によって成り立っている。もしも勇者が、第一教会に悪い感情を抱けば……」

「しかし、この教会はどうなる?レジーナがいるのはここだろう」

「ここは数年内に取り壊される予定だったから。同じ都市に教会は二つもいらないってね」

「あっさりしてるな」

「わかってたしね。どっちもなくなっちゃえば、新しい教会ができるでしょ。敬虔で、立派なのがね」

「第一教会の人間は、それが嫌なわけだと。レジーナが悪魔憑きだとばらさない理由もそれか」

「おそらくは、ね」


確かな理論のように思える。

実際はどうであったとしても。


確か、教会はそんな規則を設けていた。

羊たちが必要としない教会は取り潰すといった話だったか。

それを鑑みれば、ふむ。


「どうする、マトッシュ?これから……」


離せたことを嬉しくは思っているのだろが、これからのどうしようもないようなことを考えて暗い気持ちのままのような、そんな感じだ。

……やけに冷静な自分自身に驚いた。

理由もわかっている。

彼女が嫌がりさえしなければ、解決を見込めそうだからだ。


「……よければ、だが。雇用主に助けてもらうか」


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