112 回想
R-15指定です。
状況は悪くなる一方。
雨も降り止まない。
――あの時と変わらないのね。
私がこの教会に引き取られた時と同じ。
助けてくれる人が、一人だけなのも。
でもそれは、きっと、不幸にする。
雨の音に紛れて、外で激しい足音がする。
行かなきゃ。
*
「はぁッ!」
五人の猛攻を巧みに槍と短剣と魔法と己の体術で捌く。
しかし、とても攻撃をする余裕などない。
無口な破戒者たちは、ただ目の前の敵を排除しに来ている。
「マトッシュ!」
教会から出てきたレジーナが数発の光の矢を放ち、不意打ちのように一人を無力化する。
続けざまに大量に放ち、さらにもう一人を無力化する。
数が減ったところで反攻に出て、一人、二人と倒し、最後の一人も倒し切る。
どうにか、今回も乗り切った。
*
ワタシはワタシ。
だから、ヒトは誰もがワタシを嫌った。
ただ雨を呼ぶだけなのにね?
雨はワタシの友達。
友達といると、嬉しいでしょ?
だから、呼ぶの。
ね、楽しいね!
*
レジーナの様子が、少しおかしい。
最近上の空なことが多い、多すぎる。
どうにか、この苦しみからは解放したいのだが。
ああ、知らないことが多すぎる。
あえて聞いては来なかったが、もういいだろう。
「レジーナ」
「……ぁ、えぇ。何……?」
「限界だ、教えてくれ」
「……そう、そうね。――いいよ。教えてあげる」
雰囲気が突然変わり、先ほどまでの神聖さの代わりに限りのない冒瀆を感じる。
呆然としていると、わたしの部屋で待っていて、と。
*
自衛のため、と言い訳して槍を持ったままレジーナの部屋に入る。
実際は、ただ恐れていただけだった。
待っている間も、気が気ではなかった。
レジーナの部屋にはあまり私物などはなく、ただベッドの近くに置いてある椅子に座っているのだが、逆にそれが不気味さを加速させるようだった。
最近の様子を鑑みると、自分の悪い予想は――。
「マトッシュ、来たよ」
考えが途切れる。
というのも、ドアから入ってきたレジーナの姿に少し衝撃を受けたのだ。
「レジーナ。……水浴みでもしてきたのか?」
「うん。あっ、それとも洗わないほうが好みだったかな?」
「いや、待て、何の話をしている?」
どういう状況だ、これは。
レジーナがさっぱりしてから来たと思ったら、なんだ。
「え?だって、男と女が同じ部屋に二人っきりだよ?決まってるじゃない」
「レジーナ……じゃないな。誰だ、お前は」
「私はワタシ。他の誰でもないの。わかる?」
「ふざけるな!」
槍を喉元に突き付けても全然動じない。
それだけではない。
口調も、態度も、雰囲気からなにまで。
俺の勘が叫んでいる。
これは、レジーナの皮をかぶった偽物だ。
「ふざけてなんかないよー。だって、私もワタシもあなたのことが……好き、なんだから」
「なっ……」
「ねぇ、……シよ?」
驚異的な力でベッドへ押し倒された。
そう、一戦士をして驚異的と言わせしめるような力で。
「ぐッ、やめろ!」
「あれ、おかしい、な?私のこと、好いてくれてると思ったんだけどなー」
「お前は、レジーナじゃないだろう!?」
「ううん。ワタシはレジーナだよ。あの時から、ずーっと、ね」
無理やり唇を奪われる。
力ではどうにもならず、槍は押し倒されたときに手放してしまっている。
言葉で説得も、唇を奪われていては。
――どうしようもないか。
さっき気づきましたが、投稿日時の指定間違えてました。
申し訳ありません。