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異世界で傭兵はまったり生きたい  作者: 永久不変
第二章 王都にて、勇者と。
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部屋にノックの音が響き、どうぞと言うとウティーゴが失礼しますと言い入ってきた。

俺に膝枕をされ横になっているネメシアをちらと見て、しかし何も言わずに俺に視線をうつして話し始めた。


「本当は今すぐにでも我々の国に戻りたいところなのですが、その前に一人探さねばならぬ人が残っております」

「ふむ、それで?」

「現在、その方が奴隷となっていることが分かっておりますが、行方知れずとなっております」


ふむ、なんだろう、何か心当たりがある気がする。


「首輪の鍵を譲っていただきましたので、この町に生きていることは確かなのですが……」

「なあなあ」

「何でしょう、トワ様」

「その奴隷ってエルフ?」


驚いたような顔を一瞬見せた気がしたが、気のせいだったのか普段の無表情だった。


「その通りでございますが、もしや……」

「――パヴェール?」


ウティーゴの顔が、先ほどの驚きは本当にあったものであると確信させるような表情になった。

心の底から本当に驚いているようだ。

一つ咳払いをして心を静めたようで、落ち着いて話し始める。


「はい、パヴェール様を見つけ出そう、という話だったのですが……。その様子ですと、もう既に見つけておいでの様ですね」

「まぁ、な」

「ここに、連れてきていただいても?」

「おそらく」


そう返すと、それではお願いしますと言い軽く目礼をして去っていった。

忙しいのでしょうな。

そう考えつつ視線を下げると、ネメシアが何かを訴えかけるような目をしていたので、妬いているのかななんて考えつつ頬を撫でた。



「パヴェール」

「……ん?」


変わらずいつもの場所にいるパヴェール。

いつも目に入る度にごついと思っていた首輪に鍵を差し込み、ひねると簡単に重厚な鉄の輪が解けた。

何が起きたのかわからず、不思議な顔をして自分の首のあたりをペタペタと触ってる。


「自由になった、と言いたいとこだが用がある。ついてきてくれるか?」

「……おんぶ」


奴隷状態を解いてくれた恩か、食料をくれた恩かわからないが、受け入れてくれた。

姿は隠した方がいいと思い、黒いローブを着せて負ぶった。


地下水路をでると、まだ日が沈んでいない。

いつもよりも明るい帰り道、会話はない。



家と家の隙間を抜けるようにして人の目を避けつつ宿に戻り、閉め切っていない傍から見たら不用心な扉を足で開ける。


「おかえりなさい、トワ」

「ただいま、ネメシア。ウティーゴを呼んでくるからこいつを頼めるか?」

「いいわよ」

「すまん、助かる」


俺の背中で寝息を立てているパヴェールをそっとベッドに下ろす。

道中会話がなかった理由はこれかよとは思いつつ、隣の部屋をノックした。



部屋に入るなり、ウティーゴはベッドに座る少し小奇麗になったパヴェールを見て、感激したのかどうか知らないが……いわゆる臣下の礼をとった。

それをパヴェールは驚くこともなくただ受け止めている。


「再度、まみえることができて光栄でございます、パヴェール様」

「よきに、はからえ……?」


こっちみて言われても困ります。

あとなんで疑問形。


「トワ様、パヴェール様を助けていただき、ありがとうございます」

「お、おう。どういたしまして」


それよりも個人的にはなんで臣下の礼をしているのかが気になるのですが。

王様に忠誠を誓っていると思っていたのだが。


「パヴェール様は、ハーフエルフの私を救っていただいた御方。今度はこちらが恩を返す番だと思っておりました……」

「えっと……、すまんな?」

「謝らないでください。恩を返すことよりも、パヴェール様が無事に生きておられることが大事ですので」


そう言い切ると礼をやめて立ち上がり、では仕事がありますので、と言って部屋に戻っていった。

……仕事熱心ですね。


「さて、それでトワ。この子はどこに住むのかしら?」

「何故か不思議なことにこの部屋のベッドが一つ空いているからそこでいいんじゃないか?」

「……私、初めては二人きりがいいわ」

「はいはい」


冗談は軽く受け流して、空いている方のベッドに横たわる。

戦争のことについて頭を回そうと思ったが、今日はいいか。


「そういや、さっきの膝枕は途中で終わっちまったし、お詫びとして腕枕をどうぞ」

「あら?じゃあお言葉に甘えさせてもらうわ」


……ひどく妬いていたようで、この後飯の時間になってもなかなか離してくれなかった。



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