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異世界で傭兵はまったり生きたい  作者: 永久不変
第一章 始まり、小国にて。
10/122

10

場所はいつもの森。

ゴブリンを今日も狩る。

奥に2匹。

左を俺が。

右をネメシアがやる。

距離は走ってすぐ縮める。

地面を踏み込む。

袈裟切り。

感触はいい。

骨に当たるでもなく。

体の正面を軽く切ったようだ。

ギャーギャー騒いでいる。

切り返し。

腹の中で止まる。

断末魔のような叫びをあげるゴブリン。

剣から手を放し、蹴り倒す。

相手の肩のあたりを踏み、剣を引き抜く。

相手の動きは次第に緩慢になり、止まった。

ネメシアのほうを見てみれば、あっさり殺していたようだ。

足を切り、転ばせた後に刺し殺していた。

返り血もつかない、いい殺し方だ。

ぱぱっと魔石を剥ぐ。

少しこなれた感じがする。

辺りには何もいなさそうなことを確認。

ネメシアの方に向かう。


「あいよ、これ魔石な」

「ええ、ありがと」

「……俺が戦う相手のレベルってのは、どれくらいだ?」

「聞かない方がいいんじゃないかしら?」


笑顔でお断りされた。


「そんなに、か」

「ええ。どうやって勝たせたものか悩んでるわ」

「このままのペースで成長してったら、勝てる見込みは?」

「素の能力じゃまず無理よ。あなたの能力次第なのだけれども……」


そんなにか。

上は遠いなぁ。



もちろんまだまだゴブリンを狩る。

こんなに狩って問題は無いのか?とネメシアに尋ねてみたところ。

食料と相手さえいれば一日に倍に増えるほど、だそうだ。

むしろもっと狩ってもらった方がいいほどだとか。

この森、そんなにゴブリンが住んでいるのか。



「一匹ぃ!」


ゴブリンのある程度大きな群れを襲っている。

20を超えるほどはいたか。

ネメシアも半分ほどはやってくれるらしいから、残りの半分はどうにか俺が狩る。

ゴブリンが息絶えただろうことを確認し、次の獲物を見定める。

が、様子がおかしい。

仲間がやられたってのに、反応がない?

いや、一目散に逃げていきやがる!

大人しく俺の経験値になってくれればいいものを。

すぐに追いかける。

戦果の大半は追撃によって生まれるのだ、と偉い人が言っていた。

一匹に追いつきそうだ。

姿勢を低くし、走る。

右手で剣を持ち、薙ぐ。

衝撃が重いな。

首の辺りに当たり、半ばで止まる。

さすがに片手で両断は今の俺には難しいか。

返り血も少し浴びてしまった。

剣を抜き、魔石を剥ぐのも後にして、ゴブリンどもを追いかける。

だが、結構遠くまで逃げた奴らもいるようだ。

近くのゴブリンに迫る。

近づいてもなお、一心不乱に逃げようとする。

一度走りぬき、ゴブリンの前につく。

止まって、振り向く勢いのまま後ろに剣をぶん回す!

クリーンヒットしたようだ。

ゴブリンは憐れにも剣に当たり、吹っ飛んで木に激突した。

それを一瞥し、すぐに他のゴブリンを狩りに走り出す。



「結局、結構な数に逃げられちまったな」


ある程度は倒し、死体から魔石を剥いで回っている。


「楽に倒せたのだし、いいんじゃないかしら?」

「うーむ、経験値を逃した気がしてな」


狩れたのは20以上いた内の7,8ほど。

ネメシアは本気じゃなかったにしても、もったいなさが否めない。

あんなに簡単に倒せる敵、素晴らしいという他ないのに。


「それにしてもあのゴブリンどもはなんで逃げたんだ?一目散に」

「さあ?多分だけど、近くに強い魔物でもいたんじゃないかしら?」

「へー……。それだと俺、まずくない?」

「何がかしら?」


あっさり恐ろしいことを言っておきながら。

そんなまったくわからないという顔をされましても。


「いや、強敵がいるんだろ?」

「そうね。でもゴブリンにとっての強敵よ?」

「やっとまともにゴブリンを狩れる様になった俺には、十分強敵なんじゃないか?」


やっと納得がいったかの様な顔をする。

指導役はこれで大丈夫なのか?


「まあ大丈夫よ。この辺りにあなたが絶対に勝てないほどの敵はいないわ。多分」

「最後の言葉さえなければ安心できたんだけどなぁ」


まあ危なくなったら助けに来てくれるとは信じている。

それに、ある程度俺の実力にはお墨付きって事なら。

近くで遠吠えが聞こえる。

ん?近くで?

何か嫌な予感がする。


「今のは?」

「多分ウルフ、狼よ。群れで襲ってくるから面倒なのよね」

「強いってことか?」

「あんまり闘ったことないのよ」

「そうか」


近くに狼がいるのだろうか?

辺りを見渡す。

どうも見当たらない。


「近くに狼がいるのか?」

「ちょっと待ってね」


そう言ってネメシアも辺りを見渡す。

ネメシアの髪が、宙に舞う。

よくよく見れば、舞っているのは白い髪だけだ。


「来るわっ!」


いきなり森の中から何かが飛び出してくる。

頭だけは守ろうと、剣を頭の前に構える。

噛みつきに来たところを、弾いた。

狼か?

弾いた狼は地面に綺麗に着地。

したところをネメシアに真っ二つにされてしまった。

いきなりグロい。


「油断しないで、まだまだ来るわよ」

「りょ、了解」


その言葉の通りに、森からまだ飛び出してきた。

前から一匹、飛んできた。

まっすぐ、俺に向かってきている。

軌道は読み切った。

空中なら躱せまい。

近くのネメシアに配慮し、上から振り下ろす。

狼に当たり、勢いのまま地面にたたきつける。

狼が立ち上がる前に、振りぬいた剣を再度構える。

起き上がろうとしている狼の首に、突き刺す。

一度激しく暴れ、狼はすぐに動かなくなった。

これで合わせて二匹。

辺りをまた見回す。

近くにいたはずのネメシアがいなくなっているが、大丈夫だろう。

後ろで何かが地面に落ちた音がする。

振り見向いて見れば、ネメシアがまた一匹狼を屠っていた。


「まだ狼はいるか?」

「もう数匹いるわ。気を抜かないで」


まだいるらしい。

こちらとの戦力の差を理解できないのか。

多分ネメシア一人で倒しきれそうだが。

そんなことを考えていると、右の茂みが動く。

すぐに反応し、剣を頭の前に構える。

あわよくば叩き切って差し上げたいものだが。

相手は飛び掛かってくる。

単純な軌道だ。

俺の頭を狙ってきている。

見え透いたものだ。

これなら簡単に叩き落とせる。

その考えの通りに、剣を上から振り、落とす。

先ほどのように首を狩ろうとする。

剣を構えたところで、また茂みから何かが出てくる!

そいつは狼の首を狩ろうとしていた俺の横腹に飛び掛かってくる!

俺は躱すことができず、もろに突撃を受けた。

倒れる。

いッてぇなぁ!

しかも剣を落としてしまう。

徒手空拳で戦う方法なんて、学んでないぞ?

更にどっちの狼だかはわかんないが、倒れた俺の上に乗りかかり、噛みつこうとしてくる。

ぶん殴って引き剥がそうとするも、なかなかどいちゃくれない。

出来る限りは抵抗しようと、転がり回る。

相手が上になったり、俺が上になったり。


「クソがっ!」


愚痴をこぼしても何もならないことは分かっているが。

だが、運よく、マウントポジションをとれた。

先ほどの分のお返しはさせてもらおうか?

腰のあたりの剥ぎ取り用のナイフを取り出す。

さあ、殺戮ショーだ。

まず、恨みを込めて腹に突き刺す。

次に、受けた痛みの分、足の根元に突き刺す。

ラストに、首に突き刺す!

血が大量に出て、狼は動かなくなる。

非常に恍惚とでもいうべき気分だ。

返り血を浴びながら、笑みを浮かべる。

泥臭い勝利だが、それがいいのだ。

そういえば、もう一匹いたはずの狼はどうなっているだろうか?

立ち上がり、探す。

少し離れたところに、いた。

骨でも折れたのだろうか?

動こうとしているが、立ち上がることもできていない。

剣はどこにいったのかな?

意外と近くに落ちていた。

手に取り、容赦なく胸を貫く。

すまんな。俺は生きたいんだ。


連続投稿はこれでいったん終了になります。

お読みいただき、ありがとうございます。

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