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ここは異世界。
多数の国の内の一つ。
その中でも小国と呼ばれるような国にいます。
どうも異世界人は皆特殊な力を持っているそうで。
明日を生きるために、この国の傭兵になることにしました、
この国で戦ってほしい。
それが国王に言われた最初の言葉だった。
この世界では戦争の兆しが高まっているそうだ。
それも、大規模な。
いわゆる、聖戦というものらしい。
この世界には人以外にも、魔族、獣人と、さまざまな種類がいるそうだ。
宗教は一つの様だから、異教徒弾圧ではないが。
まあそれはいい。
必要なのはいつ始まるかもしれない戦争に対する備えだ。
傭兵として雇われる代わりに、国に養ってもらう。
国賓級とまではいかないが、それに近い待遇だ。
毎日の食事と、寝床。着る服も全部国がくれる。
命を懸けるんだ。
これ位の事はしてもらいたい。
この世界には、レベルという概念がある。
敵を倒す。
物を作る。
さまざまな行動により経験値がたまり、レベルが上がるそうだ。
また、人による能力……スキルがある。
これにもレベルがあり、経験を積めばレベルアップするらしい。
つまり?
戦えということだ。
国の傭兵になったが、軍属ではないので戦いの機会には乏しい。
故に、戦いの為の別の方法がいる。
ギルドだ。
日々増えていく魔物に対し、依頼は増えていく一方。
敵には事欠かないそうだ。
すぐにギルド員となる。
王からの書簡のおかげで簡単に登録できた。
まずはゴブリン狩りからだ。
そういえば、死なれては困るとのことで、人が派遣されていたりする。
すぐ横に。
小さな女の子が、一人。
うつむき気味に歩いている。
「そういや、名前は何というんだ?」
「私?ネメシアと呼んで」
少し驚いたような顔をしつつも、答えてくれる。
「失礼かもしれんが、歳は?」
「女の子に歳を聞くの?」
「すまん……」
髪は黒く、目は赤い。
充血しているわけでも、カラーコンタクトでもなく、自然な色らしい。
「ゴブリンのいるところまでは、どれほど歩けばいいんだ?」
「10分もかからないわ。すぐ近くよ」
「じゃあ、行くか」
「無茶しないようにね」
「わかってるさ」
今までいたところ……この国の首都から出る。
検問はネメシアの顔パスだった。
そんな偉い子なのか?
「なあ、ネメシア」
「なに?今更怖気づいたの?」
「いや、それはないが。ネメシアはこの国の重鎮か何かか?」
「貴方と同じ傭兵よ?」
「それにしては検問を顔パスしたり、王より直接命令をもらったり。
どうもただの傭兵じゃなさそうなんだが……」
「まぁ、王の近衛兵みたいなものよ。
あ、でも、傭兵だから近衛ってほどでもないかも」
「そいつは……すごいな」
あっさり言ってのけるが、その奥にはどれだけの努力があったのか。
ただ、感嘆するしかない。