最終章 確認
あの後、俺はすぐに思い出を質から出した。
借金のほうは友達に借りたり、本物の質屋に行ったりとなんとか金を返す事ができた。
返しにいったときのとても優しいお兄さんたちの極上の笑顔が忘れられない。あの顔が違う意味の笑顔にならなくてよかった・・
人間本気になればなんだってできるんだな。
”思い出”を質から出したあの時に俺は店員とこの店のことなどについて話をした。
店員の話によるとどうやらある一定の周期で店を移動させているようだ。あの公園はその中の一つで他に全国いたる所にあるんだと。
あぁそういえばあの店員こんなことも言ってたな。
「”思い出質屋”の周りにはホームレスの方々が集まるのです。なぜだか分かりますか?」
なぜだろう?
「分かりませんか?なぜかというとホームレスの方々がこの店のお得意様だからですよ。単純に生活に困って利用する方もいれば、利用のし過ぎで思い出のほとんどを失い、ホームレスになった方もいらっしゃいます。帰るときに公園にいる彼らを覗いてみてはいかがですか?」
帰るときに見てみたが、確かに自分の事すらわかっていない廃人のような人がたくさんいた。
「まぁ彼らはお客としてはお得意様でとても大切な方々ですが、個人的にはとても嫌いですがね。」
その時に男は突然声を変えた。憎しみを抱いているような声だった。
「彼らは簡単に思い出を質に入れます。”思い出”の大切さを分かっていない・・その事がわたしにはたまらなく腹立たしいことなんです。あなたが”思い出”を預けた時も内心とても残念でした。とてもすばらしい”思い出”をお持ちなのにその大切さに気づいていない。」
・・・何も言えなかった
だがその直後男はまた急に口調変え話し始めた。
「ですがそのぶんあなたがその大切さに気づいてくれて本当に良かった。うれしさのあまり私もこうして本音を喋ってしまいました。」
その店員、いや男は俺の事をもう客としてではなく一人の人として喋っていた。
「あなたは多分もうこの店に来る事はないでしょう。”思い出”の大切さが分かったのだから。
これからもお兄さんとの思い出を大切にしてください」
俺は黙ってうなずいてまた店を出た。
少し歩いて振り返るとそこには古ぼけた管理小屋があるだけだった。
たった少しのことだったが、俺には一生を左右するような特別な時間だ。
思い出の大切さを確認できたのだから。
これで終わりになります。
自分の処女作です、 なんとか完結させられました。
文法やストーリー的にもまだまだ未熟ですがコメントを頂けたら幸いです。
最後まで見て頂いた方どうもありがとうございました。