第2章 理解
”思い出質屋”・・なんだこれ? なんでこんな人気(ホームレス以外)の無いところに店があるんだよ?
その店は公園の隅のほうにホームレスの方々のお家に囲まれながら建っていた。どうやら公園の使われなくなった管理小屋を勝手に使っているようだった。
やってんのかな? だいたい”思い出質屋”ってなんだよ。 骨董品専門の質屋ってことなんかな??
あっ!でも質屋で金作るって手段もあるよな。親父からもらった有名な人が作ったらしい茶碗とか掛け軸とかあるし。まぁ本物かどうかわからないけど・・
一度家に帰って比較的高そうなものを選んでみた。
その時親にさっきみた質屋について聞いてみたがそんなものは見たことが無いといっていたのがちょっと気になる。
店のドアに手をかけると鍵はかかっていない。一応営業はしてるようだ。
「すいません」
店の奥に向けて声をかけると、店員らしき人物が出てきた。
「いらっしゃいませ、当店のご利用は初めてでらっしゃいますか?」
汚い店の印象とは異なり小奇麗な格好をしたデパートにいるような若い男だった。
店の中は外見よりも大きく感じた。真ん中に大きなガラスケースが置いてあって、その中には不思議な色をした紙がたくさんつまれている、なにかびっしり文字が書いてあった。なんか変な店だな。
店の中を観察しつつ店員の男と話し始めた。
「はい、え〜とこの店って・・質屋ですよね?」
そのわりに何も品物がないけど。
「さようでございます。ただ普通の質屋と少々違っておりまして、こちらではモノではなく看板の通り”思い出”を対称としている質屋でございます」
何を言ってるかよく理解できなかった。
「え〜と、つまり骨董品専門の質屋ってことなんですかね?」
「いえいえ、そうではなく”思い出”。言い換えれば”記憶”を対称としております」
ん〜?? まだよくわからない。”記憶”?そんなもんをどうする気だよ。
「はぁ・・・」
「まだよくご理解していただけないようですね。それではより詳細にご説明いたしましょうか?」
「あぁ、じゃあお願いします」
男の細かな説明を聞いているうちにさきほどの店に対する疑問は消え、この店と男が通常の店と人間でないことを理解した。
常識とかそんなものは関係なく本能的に理解した。
「いかがですか、ご理解いただけましたか?」
俺の心を見透かすように男が聞いてきた。
「はい」
「それでは説明は以上になります。どうですか、ご利用なさいますか?」
どうするか・・金が必要なのは確かだが。
その男の言葉が悪魔からのささやきに聞こえた。
「・・利用します」
悪魔のささやきに乗ってみた。