二夢目
やっぱりこの夢なのか、嘆き呟く。
今日も今日とて、あの長い永い(ながい)道が続く空間に僕はいる。
頬を抓っても返ってくるのは、無感覚の体験。やはり夢の中である。
ただ、今日は昨日と違う点がある。限りなく伸展する白い道に、すでに大きな穴が開いていた。
しかも、前回に比べてひとまわりからふたまわりも拡がっている。
だが再び湧き上がる、“この穴に落ちてみたい”という感情は、昨日とは変わらない。
わずかながら強くなっている気がするその感情に、どうにか打ち勝ちながら、円形の縁にそりながら遠回りして、そこを立ち去る。
そのまま数歩歩み、クルッと振り返る。
開いていると思っていた穴は、いつの間にか塞がっていた。
驚嘆して前まで穴の開いていた場所に戻り、そこに伏せて調べてみる。しかし、それを叩いたり足踏みをしてみるが、結局無機質の音しかしなかった。
随分と謎が多い夢だが、これは何かの暗示なのだろうか。
例えば、予知夢のように、この先穴に落ちる機会があるのだろうか。そうなると僕は二回も巨大な穴に落ちる羽目になる。それはそれで滑稽だな。それでも底無しみたいなあれに落ちるのは御免だけど。
穴に落ちる、なんてストレートなことじゃなくて、なにかを遠まわしに伝えているような……。
ウンウン唸っても答えは出ず、本日の夢もこれで終了した。
夢から目覚めるとそこは見慣れた教室の中だった。
机に突っ伏した顔を上げると、人っ子一人いない教室の中央に僕がいた。
どうやら、放課後まで寝過ごしてしまったようだ。野球部の掛け声や吹奏楽部の予行練習が校舎にまで響いてきている。
早急に帰宅の支度し、無人の教室を出ていった。
いつもと同様に、帰宅路と重なっている町の商店街を歩いていると、いつもの活気溢れる雰囲気と違う空気を感じ取った。
僕の勘は正しかったらしく、案の定、コンビニの前で人だかりができていた。
自分も野次馬根性でその人群れの中へ割りは入る。
一苦労で集団の前に先頭にでると、そこには夥しい血が辺り一帯に付着していた。その血の主であろう、中年の女性が手で胸を抑えながら倒れこんでいた。
未だに胸部から出血する女性は、呻き声を上げている。押さえつけている手から垣間見える刃物で突き刺されたような傷は深く、痛々しそうで思わず目を逸らしてしまう。
現場の様子を見る限り、事件であることが誰の目から見ても明白である。
そして、場状に遅れて到着した救急隊は慣れた動きで、被害者をタンカで担ぐ。そのまま救急車に運び込まれた中年女性はすでに意識を失っているようだ。
けたたましいサイレンを鳴らしながら、ざわめく野次馬をよそに商店街の中を、救急車は走り去っていった。
「怖いわねぇー、通り魔に襲われたらしいわよ」、「しかも、犯人はまだ逃走中なのよ」、「あの女性もしかして、山田さんじゃない、ご近所さんなのよ」
どこからともなく聞こえてくる会話に耳を澄ます。
確かにあの女性は見覚えがある。よく回覧板を届けるついでに、玄関口でよく母親と話している隣人だ。僕とはあまり面識がないけど、母がその人のことを『山田さん』といっていた気がする。
心の中でモヤモヤした思いがする。きっとそれは同情の念だろう。
結構、酷い刺し傷だったから、安否が気になる。隣近所の人なのだから、気掛りになるのは当然のことだろう。
ご愁傷様です、と救急搬送された彼女に向けて、心の中で呟いた。
まだ燻っている、モヤモヤした思いをそのままにしながら……。




