志望動機は大手だから
自宅警備から一転、就職しようと思ったまではよかった。
インターネットの求人サイトで、土日祝休みがいいな~なんて思いを馳せている時もよかった。
とりあえずは、有名な企業に駄目は元々だと書類を送ってみたり。まさに就職活動をしている俺、といった感じで自尊心がとても満たされた。更にそこから書類選考通過、第一次面接のご案内なんて来ちゃったりして、あれ?これもしかして就職できちゃうんじゃない?イージーモード?なんて益々うきうきして、そこからとんとん拍子に通過して、何の苦労もなく内定をもぎ取った。そうここまではよかったのだ。問題はその後だ。
会社が所謂ブラック企業であった。ブラックといっても、ぶっ飛んでいる意味でという意味でブラックだった。世間でいう残業したのに残業が出ないとか、そういったものではない。
むしろそっちの方がよかったと思う。
㈱恋丸コーポレーション
通称マルコイ。ジャンル問わずに独創的なヒット商品を次々に生み出し、恋丸コーポレーションの商品を見ない日はないであろうという程、世に浸透している。毎年何処ぞの週刊誌や新聞が作っている就職したい会社ランキングの上位に入っている大手企業である。そこに入れば一生安泰と言われ、いわば不況な世の中にとってまさに恋丸コーポレーションは、憧れの職場だ。そしてそんな憧れの職場への入社切符。すなわち内定通知を手に入れた。俺の名前がしっかり印字された書面が心なしからキラキラと輝いているように見える、日比谷和哉。その5文字が眩しい。今ではその印字された五文字が死刑宣告のように思える。もし過去に戻れるなら何があっても邪魔するのだが…
色々3行では説明できないレベルではあるが、端的に言うと俺は今宇宙に出張という名の戦闘に駆り出されている。聡明な諸君にはあえて伝えるべきことでもないが幻覚を起こす薬物や流行の葉っぱ何てものも使ってはいない。
「おい!!ぼやっとすんな死にたいのか!」
会社に勤務して死ぬようなことはない。(過労死・事故死除く)
「パワー充填完了。何時でもぶっぱなせるぜ!!おい!杉下ぁ!もっとガンガンに音楽鳴らせ!」
会社の食堂にいる料理人は包丁の変わりに変なロボットの操縦席に座ることもない。
「日比谷っち!」
「日比谷和哉ぁあああああ!」
女の人はいつの時代も強い。これは否定しない。
耳から入る様々な音と声、そして目の前にいる巨大な怪物を目の前に僕は最後の力を振り絞って力を放った。