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ギルド  作者: RAIN
1/1

時雨

警告

この作品には一部残酷描写が含まれています。

苦手な方はご注意ください。

1章 時雨 

 フードの縁にスタッズが打ち込まれた暗色の外套をはためかせ、青年は近付いていく。

真っ白な手の親指で人差し指を押して指を鳴らし近付いていく、青年の目の前には鈍色に光るナイフを腹の辺りに構えながら震えている男がいる。

真っ白な手の青年は一言

「ごめんなさい」

申し訳なさそうに、そう言うと刹那の速さで震える男まで一気に滑るように距離を詰めると、翼を広げる様に腕を後方にし、真っ白な指をかぎ爪のような形にして震える男の首、目がけて一閃する。

首元辺りから、振ったシャンパンのように血が飛び散っていた。

「ぐるあっぁぁ!」

凄まじい断末魔の悲鳴を上げながら、流れ出す己の命の流れを止めるかのように首元を必死で押さえながら震えていた男は前のめりに倒れ痙攣していた。

やがて動かなくなった男を見て、真っ白な手の青年はスタッズが打ち込まれたフードに手をかけ頭から降ろす。

月明かりに照らされた艶のある黒髪にロングなヘアースタイル、柔らかな目元にかかる長めの前髪、その瞳は緋色に輝き白皙の肌は象牙細工のようなきめ細やかさで、女性のように線の細い整った輪郭に、血のように赤く美しい唇をした美しい容貌の青年は、無表情のまま異様に長い舌を赤い唇に這わせると膝をつき獣の様な四つん這いの姿勢になると、まだ血が流れだす死体の首元に舌を這わせピチャピチャと音を立てだす、すると無表情だった顔は一変し歓喜の表情に変わり獣の様な姿勢の体も小刻みに打ち震え、赤く美しい唇で血をすすりゴクリゴクリと喉を鳴らしながら飲みつづけていた。

青年の名前は九条時雨、19歳の<ハーフヴァンパイア>。 


 <ギルド>の会合に向かうためカズオは急いでいた。

深夜のビルの屋上から屋上を飛びながら近道をして移動していると、鼻腔をくすぐる甘い血の香りが飲食店などが数軒入っているビルの路地裏のほうから匂ってきた。

血の香りに惹かれてカズオがビルの屋上から地面に降り立つと、異様な光景が広がっていた。

最初何か得体の知れない四足歩行の獣が人間に覆いかぶさって肉と血を貪っているように見えた。

カズオの瞳がライトグリーンに変色すると<ヴァンパイア>のスキルのひとつ<ナイトビジョン>を発動させる。

闇の中でぼやけていた視界がクリアになった中で、目の前の光景を見る。

なんの事はない<ヴァンパイア>が獲物の首元に覆いかぶさりピチャピチャと音を立て舌で血を舐めながら捕食しているのが見て取れた。

それにしても、なんだあの下品な血のすすりかたは、まるで獣のようだな…と思い一心不乱に獲物を貪る姿に異様さを感じた。


 時雨は獣のように血と肉を貪る快楽に酔いしれていた…

グチャグチャ、ジュルッルルゥゥ

獲物の首もとは、さっきまでは鋭利な刃物で切られたように切り口だったが、今ではその切り口をつけた時雨によって引き裂かれ、頭と胴体がかろうじて、つながった壊れかけの人形のようになっている。

時雨は左手で頭を押さえ右手で胴体を押さえながら、血が溢れ出している切断面に赤く美しい唇を開き、剥き出しになった<ヴァンパイア>の証ともいえる血にぬれた牙を、肉に突きたて咀嚼していく。

血の甘さ、肉から滴り落ちる温かい血も、何もかも喰らい、ただ満たされていく、この食極の快楽に身をゆだねていたかった。

時雨は歓喜に震えながら目の前の血と肉を喰らいながら忘我の域に達していた。

「オッフルゥゥゥフゥゥゥ!!」

快楽に満たされ、吐息を大きく吐き出すと表情は歓喜のそれから無表情に変わり、緋色の瞳も元の黒い瞳に戻ると、血を帯びたままの顎から顔を左後方にむける。

「お兄さんの縄張り?」

時雨の位置から左後方に、ビルの屋上からほとんど物音も立てず降り立った男に問いかける。

「いや、ここは中立地帯でうちの<ギルド-ReUnion>と南側の<ギルド-euforia>の境界地域だ」

カズオは、本当はこちらから流れ者であろう、この<ヴァンパイア>の青年に…”誰の土地で狩りをしてるのか?!”と声をかけようと思った矢先だったため出鼻をくじかれた形で、質問以上のことを丁寧に答えてしまったことで苛立を覚えたが、なにより振り返った青年の美貌に目を奪われた。

<ヴァンパイア>の多くは男女共に容姿に秀でるものは多いが、青年の美貌は歴史に名が残るような彫刻家の作品もかなわない美しさがあり存在がひとつの芸術品のようだった。

うちの桜ちゃんも可愛いくて綺麗だけど”この野郎もやばい綺麗さだな”と思った。

「じゃあ後は片付けておくので、さようなら」

時雨は丁寧にカズオにペコリと一礼し、残った掃除当番のようにそう言うと、慣れた手つきで血が出尽くした、さっきまで人間だった肉袋に手をかぎ爪のような形にして切り口を入れながら丁寧に腕や足の部位ごとに解体していく。

「おい!中立っていっても、この蕪城町はうちらのシマだ。よそ者が勝手に狩りをして”ハイそうですか”にはならねえんだよ!!」

カズオは怒気を含ませた威嚇をしライトグリーンの瞳を輝かせる。

この人怒ってるな…困ったなと思い、時雨は長めの前髪を耳にかける。

「あのー良かったら、残り物ですが食べます?」

受け取ってくれるといいんだけどな…思いながら、解体途中の血にぬれた右腕を、カズオに渡そうと下からスローインで軽く投げる。

弧を描きながら飛んでくる血にぬれた右腕を見ながら、カズオは視線を時雨に戻す。

「殺す…ぐるぁぁ!!」

凄まじい咆哮とともに怒りのまま時雨に向かって地を蹴る。

カズオの右手が槍の穂先のような形をし、突き殺そうと時雨の鼻先目がけて届く数センチの距離で、体を低い姿勢にし攻撃をかわすと、さきほどまで自分の顔のあった空間にカズオの右手の切っ先が駆け抜け、焦げ臭さを残すのを感じた。

カズオが殺意を持って攻撃した事に、時雨はゾクゾクした尾骶骨辺りからゴリゴリと背骨にそって舐め上げるような暴力衝動が、どんどんと湧き上がり、瞳が緋色に輝く。

時雨のいた空間を駆け抜け伸びきったカズオの右手首を、時雨の夜叉のような爪が伸びた右手で万力のように掴み上に捻り上げる。

「セイァッ!」

掛け声とともに、左手を掌底打ちのように低い姿勢から上にカズオの右肘の間接部目がけて神速の速さで打ち込む。

ゴッギャ

骨が折れ砕け、肉を突き破る嫌な音が響く。

「ギャア…ッァが!!」

カズオの右肘は、本来曲がるはずのない方向に逆に折れ曲がり、肘の裏からは骨が突き出ていた。

しかし時雨の攻撃はそこで止まらない、起こしたモーションを流れるように、次の攻撃に移し有り得ない速度で右足を蹴り払い深々とカズオの腹部を捉える。

「ガッフゥ」

カズオの体は九の字に折れ曲がり、5メートルくらい後方に飛ばされると、口から血を吐きながら苦痛にのたうち回っている。

「ぎゃぁぁ、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅ!!!」

おそらく右足の蹴りによる攻撃で内臓はズタズタになり破裂し、吐血をしているようだった。

「殺される覚悟があったから、殺そうとしたんだよね?」

時雨は白い指黒い爪の親指で人差し指を押して指を鳴らし、苦痛でのたうち回るカズオを見下ろしながら問いかける。

「聞こえない…?!喋れない…?!答えれない…?!じゃあなんで攻撃したの…?」

時雨は血にぬれた赤い唇をニヤニヤさせがら質問攻めにする。

「ごめんなさいぃ…本当に死ぬ死ぬ死ぬぅぅ、死ぬのは嫌なの!!血を吸わせて…?助けて…!!」

カズオはギャァギャァと、のたうち助けを懇願する。

血と肉の快楽に酔っているときに、こういうトラブルが起きると。時雨の中にいる誰かを感じ、ひどく暴力的になっていく…。

右足で苦痛にのたうち回るカズオの頭を靴底で踏みながらゴロゴリし、一呼吸間をあけてから後方に思い切り右足を振りかぶるとサッカボールみたいに蹴り抜く。

「どーん」

ブチン!!

カズオの胴体から頭が輪ゴムが切れるように、蹴りで勢い良く飛ばされると路地裏の汚れた壁に当たってコロコロと転がり…その死顔は口からは舌と牙がむき出しになって、だらしなく泣きながら助けを懇願していた表情をはり付けていた。


久々の投稿、拙い文章を読んでいただき誠にありがとうございます。

書きたいときに頑張って書いていくので、またお読みいただければ幸いです。

ではーまた次話で~(・∀・)ノ

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