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私とストーカーと魔法の学校  作者: WLCノベル
第1章 入学前
6/59

05 町へ <イラスト:ユウシャ4才>

 決着はすぐに着いた。

 なぜなら男の子は1人ではなく、男の子と同じ髪色の男性が、反対側の林からオオカミに攻撃してきたからだ。


 とはいえ、オオカミがやられたわけでもない。

 剣を持った人間が2人も現れて分が悪いと悟ったオオカミは、迷うことなく牙をおさめて逃走したのだ。

 さすがはオオカミ、知能も結構高いようだった。


「たわいもない」


 逃げ去ったオオカミを見送ってから、男の子は口の端を上げてこちらを振り向いた。

 

「怪我はないかい、お嬢さん」


「あ、はい。大丈夫です」


 答えながら、なんて違和感なんだろうと思う。

 男の子の年齢は見た所、私と同じくらい、つまり3才か4才だ。

 それが、あんな巨大な剣を振り回すだけじゃなく、大人を差し置いて初対面の相手に話しかけてくる。口調はなんだか、ナンパでも始めそうな勢いで、およそ子供らしくない。

 前世の記憶を取り戻したりして、子供らしさを完全に失った私には言われたくないだろうが、正直、お前はどこの誰だよ、と聞きたくなる。


「俺はユウシャだ。君の名は?」


 考えていることが、顔に出ていたのだろうか。

 男の子はいきなり名乗った。


 でもユウシャ? ユウシャって、勇者? 聞いたことないけど、勇者っているの?

 私が怪訝に首をひねると、男の子は苦笑した。


「ユウシャというのは名前だ。

 その名に恥じない生き方をしようとは、思っているが……」


「はあ」


「それより、君の名前を聞くのは不味かったのかな?」


「あ、いえ。私はリオナです。

 助けてくださってありがとうございます」


 正式にはリオナ=クゼインとなるが、クゼインの名前を出すと面倒なことになりそうな気がしたので、伏せておいた。相手も名前しか名乗ってないのだから、問題はないだろう。

 それはともかく、


「すごく助かりました、感謝します。

 それでは、私は急ぎますので」


 こんな場所で足止めを食らってる猶予はない。

 私はペコリとお辞儀してから、その場を離れるべく駆けだした。


 とっとっとっと。


 助けてもらっておきながらこの態度、人としてどーなの、と思わずにはいられないが、今立ち止まるのは、アイツへの敗北を意味する。

 まともな神経を持った状態で、アイツから逃げきれるとは、最初から期待していない。

 それに……。


「お嬢さん、何をそんなに急いでるんだい。なんだったら俺が力を貸そうか?」


 ユウシャと名乗った男の子が早足で追い付いてきた。

 一緒にいる男性も、苦笑しながらついてきているようだ。


 内心ほっとする。

 私程度の女の子が多少急いだところで、追いつけないということはないと思っていたし、見ず知らずの私を助けてくれるような奇特な人たちが、私のような子供の一人旅を見咎める可能性は高いと、予想はしていたが、これ以上の関わりあいを面倒くさいと判断する可能性も高かった。

 あのまま別れるのはさすがに少し罪悪感があったので、こうしてついてきてもらったのは幸いだ。


 ……まあ、ついてこなければついてこないで、仕方がないと、割りきってはいたけれど……。


「ありがとうございます。実は追われているのです」


 私は足を止めることなく、口を動かした。


「詳しい事情は、町についたらお話しします。今は先を急がせてください」


 無事、町までつけたらだけれど。


「承知した。町に急げばいいんだね?」


「はい」


「親父頼んだ」


「はぁーーーーー、あいよ」


 男性が初めて口を開いたかと思えば、大きなため息。そして、私を小荷物のように脇に抱えあげた。


「わっ」


「少し揺れるよ」


 自分が抱えているわけでもないのに、ユウシャがニヒルに笑う。

 そしてユウシャと、ユウシャに親父と呼びかけられた男性は、流れるような動きで走り出した。


 間違いなく、私が自力で走るより速かった。


挿絵(By みてみん)

【ユウシャ 4才】

幼児の絵、難しい…。

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