表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私とストーカーと魔法の学校  作者: WLCノベル
プロローグ
3/59

02 前世の話

 睡眠。人は夢などを見ながら、記憶を整理するという。

 前世の記憶を取り戻した直後の私の脳も大変ハッスルしたようで、昨夜は、山ほど夢を見た。


 前世、あのストーカーとは幼なじみだった。

 幼い頃は普通に仲が良くて、ケンカもたくさんしたけれど、楽しい思い出もいっぱいある。


 今生でもそうだが、前世でも見た目だけは美少年、からの、美青年だったアイツは、女にモテモテで、面倒なことが嫌いだった私は、ヤツを恋愛対象から外していた。

 アイツがモテだしたのは幼稚園の頃だから、物ごころついた時には、すでに恋愛対象ではなかった。


 それでも仲よくしていると嫉妬してくる女がいるもので……。


「あのね、もう一緒にいるのやめたいんだけど……」


 そう切りだしたのは、小学6年生の秋だった。

 離れるために私立の女子中学に行こうと思っていたのをアイツに気付かれて、詰問されたのだ。


「どうして? 俺が何か、君に悪いことをした?」


 そう聞いてきたアイツは、私が離れたがっている理由にも察しがついていた。


「君は間違っている。

 俺が悪くもないのに、それを受け入れる気はない。

 どうしてもと言うなら、俺は君を追って、同じ中学に行く」


 私が行こうと思っていたのは女子中なので、それはとても無茶苦茶な話だった。当時は本気でそんなことを考えてるなど想像もできず、私の間違いを正すために、無茶を言っているのだと思った。

 そして、たしかに本人になんの落ち度もないのに一方的に関係を断とうとするのは、真摯さにかける気がした。


 だが、


「バレンタインデーにもらうチョコの数で、自分がモテてる自覚はあるよね?

 その女の子たちが、アンタと仲よくしている私にいい気がしないことくらい、想像がつくよね?

 それをわかっていながら、私と馴れ馴れしくするのは、心遣いが足りないんじゃないの?」


 私は文句を言った。

 一番仲の良い友達が女ガキ大将だったため、すごい嫌がらせとかにあったことはなかったが、陰口を叩かれたり、仲を取り持つようにお願いされたりするのは、地味に面倒くさかった。

 勝手に誤解して、二人の幸福を祈っているとか言われるのは、もっと面倒臭かった。


「……わかった。考えて……みる。

 だから中学は、俺とは関係なく、……普通に選んでよ」


 そこでアイツが引いたので、私はアイツが、本当に私のことを考えてくれているのだと思った。


 そして結局私達は同じ中学に上がり、アイツはかわいい彼女を作った。

 何をするにも彼女を1番に優先して、私とも普通に遊んでいたけれど、優先順位は彼女が1番で、私が2番。

 さらに私を呼ぶ時は『君』から『お前』に変わり、男友達みたいな扱いに変わって、私が矢面に立つことはなくなった。


 最初は、いきなり彼女を作ったアイツに違和感を覚えたけれど、彼女ともうまくやっているようで、男友達のように付き合うのも楽しく、次第に違和感を忘れていった。

 その代わり、なんだか寂しくなった。


 それまで私が持っていなかった恋愛感情が芽吹いてしまったのは、きっとその時だ。

 押してダメなら引いてみな、なんて言葉をそのまま体現するような私の感情は、とても単純だと思う。今思い出しても後悔の念は尽きないが、中学高校とその状態で、アイツは彼女に本当によくしていたから、私は自分が友達であることに残念な思いが募ってしまった。

 だから、自分はアイツのことが好きなのだと、気の迷いで自覚してしまった……。


 そして大学に合格し、同じ大学に行くようになって、受験のアレコレで彼女と別れたと主張するアイツが告白してきた時、私は半ば浮かれた状態で、その告白を受け入れた。

 誰かに告白されることすら初めてで、私は完全に冷静さを失っていた。


 後で、アイツが他の女と付き合ったのは、私が矢面に立たないよう『考え』たからだと聞かされた。

 当時頭に花が咲いていた私は、愚かにもときめいてしまった。

 『私のために!』なんてハートの花が飛びかって、そのために利用された女の子がいるという事実に頭がいかなかった。


 アホだと思う。

 共犯者だと思う。


 私がそのことに気づいたのは、アイツに利用されて恋人になっていた本人から、直接文句を言われた後だった。

 だからといってすぐに別れるという話にはならなかったけれど、それはぶっといクサビとなって、少しずつ少しずつ、私の心を浸食した。

 アイツの想いが、重くなった。


 アイツも、私のその気持ちに気づいていたのか、情緒不安定になったりもして……。


 結局私は、アイツが納得もしていないのに、一方的別れを告げた。


 それからは冒頭でも説明した通り。

 つきまとい、待ち伏せ、押しかけ、メール攻勢、ありとあらゆるストーカー行為が行われ、ついには刺し殺された。


 恨みよりも怒りの感情が強いのは、アイツが私の思い通りになってくれなかったからなのだろう。

 私に執着さえしなければ、いい友人だったし、おもしろいやつだった。

 物ごころついた頃から一緒にいて、中学高校と友人として付き合って、悪ふざけもたくさんして、いい友達だと思っていたのだ。

 だから、私から離れて新しい恋をみつけてくれれば、また友人に戻れるかもしれないと思った。

 すごく勝手だけれど、私は友達だった頃に戻りたかったのだろう。そうでなくとも、遠くのどこかで幸せになってくれたらいいな、と思っていた。


 だから警察から、彼が私と関係なく生活していると聞いて、本当に嬉しかった。


 それまでの経緯を考えると、そんな簡単なものではないと気付きそうなものなのだが、その時の私は信じたいものを信じた。


 だからアイツが私を刺した時、愕然とした。

 私を殺した後、自分の喉を切り裂いたのを見た時、どうしようもなく腹がたった。

前世での名前はややこしくなるだけなので、極力入れない方向で書いてます。たぶんこの後しばらく前世話は出ないはず。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ