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私とストーカーと魔法の学校  作者: WLCノベル
第1章 入学前
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10 恋人の羅針盤

 宿屋の修理費と慰謝料はエルスが払っていて、特に自分たちの素性を明かすこともなかったので、父や母に私が町へ行ったことがバレることはなかった。

 しかも暗くなる前に帰ることができたので、怒られたのは勝手に外に散歩に出たことだけだった。


「この辺りは治安のよい方だけれど、それでも貴方のような幼い子供が一人で出かけるのは危険だわ。出かけたい時は、たとえそれがただの散歩でも、家人に声をかけてからにしなさい」


 母、アンネルは、優しく諭した。


「エルスもよ。お姉ちゃんが心配だったのはわかるけど、そういうときはちゃんと私に相談すること」


「……ごめんなちゃい」


 エルスは私に抱きついたまま、今にも泣きだしそうにうつむいた。

 そして上目づかいで母を見る。


「おねえちゃまがいなくて、こわかったの。

 ……今日は、おねえちゃまと一緒に寝ても……いい?」


 ゲ!


「いいわよ。そうしなさい」


 お母様即答。

 この空気の中で、それを断る勇気は私にはなかった。


 それから、着替える間すら離れることをよしとせず、私の部屋に着替えを持って来させて、メイドに着せ替えられた私達は、パジャマ姿で一緒のベッドに入った。


 まあ私達は仲の良い姉弟なので、こういうことはそんなに珍しいことではない。

 エルス……あんなにかわいかったのに。

 いつものようにわたしに抱きついてくるエルスが、中味を知ると恐ろしい。


「おねえちゃま、どうしたの?」


「イエ、なんでもないデス。それより何か話があるのデハ?」


 ところどころ声を裏返しながらも、慎重に言葉を選ぶ。


「おねえちゃま、どうしたの? もしかしてエッチなこと考えてる?」


 ブンブンブン。私は蒼白で首を振った。

 大学生まで成長した前世も含めて、私はまったくの処女だ。ぶっちゃけこのストーカーに告白されるまで告白自体されたことはなかったし、このストーカーと付き合っていた時も、なぜかいいところで邪魔が入ったりしたし、別れた後はそれどころじゃなくストーキングされてたし。


「だいじょうぶだよー。おねえちゃまはビッチだから、一度ヤッちゃうとすぐガパガパにしそうでしょ? だから僕もやめとこー、って思ってるんだぁ」


「そ、そうなんだ」


 かわいいエルスの口調のまま、そういう下劣な言葉は言わないでほしいけど、とりあえず、そういう方向にいかないというのは素直に助かったと思おう。そもそも、この年齢でできるの? とかもあったわけだけど、赤ん坊も勃起するって話、どこかで聞いたことある気がするし、恐いもんね。


「殺すのもね、しばらくはしないつもりだから、安心して?」


「お、おう」


 まさか言質をくれるとは思わなかったので、変な返事をしてしまう。

 エルスはそれをクスクス笑って、


「僕ね、ここに転生するまで何度も自殺したんだ。殺しちゃったら次いつ会えるかわからないでしょ? だから、君が処女の間はまだ殺さない。安心した?」


 カクカク。機械的に頷く。

 処女限定ってあたりがリアルで信用できるけど、さらっと言われた『何度も自殺』が恐すぎる。

 でも、追及したくない。


「それでね、今日おねえちゃまを見つけた方法なんだけど、朝チュウしたでしょ?」


「う、うん」


「あれでね、おねえちゃまの体液を摂取したんだぁ」


 ?


「へ?」


「『恋人の羅針盤』って魔法具があってね、それに恋人と自分の体液を仕込むと、恋人の居場所を知らせてくれるの。ろまんちっくでしょ?」


 な、んだと?


「ちょっと待って。ということは朝メイドに連れられて行ったのは……」


「吸い上げたおねえちゃまの唾液が口の中にある間に、『恋人の羅針盤』をセットしなくちゃいけなかったからだよ。そうは言っても、おねえちゃまが逃げ出すのは予測がついたから、ポッポに足止めをお願いしてたんだけど、あんな邪魔が入ることまでは予測できなくて……ごめんね?」


 謝る箇所が違うんでないかい。

 でも、いろいろ繋がった。


「ひとつ確認、いい?」


「何?」


「どうして2才の子供がそんな物騒な物、持ってるのかなぁ」


「ああ、ポッポが人を襲っていた話はしたでしょ。僕に会う前に襲った相手に商人がいたから、いろんなものを持ってたんだ。『恋人の羅針盤』とか『炎玉』とか」


「炎玉?」


「宿屋で使ってたでしょ?」


 おふう。あの爆発か。

 ってゆうか、ポッポ、どこまで……。


「だからね、これからはおねえちゃまがどこにいても、すぐに駆け付けるよ」


 できれば駆け付けないでいただきたい、という魂の叫びを、私はなんとか飲み込んだ。

炎玉は威力によって、火炎玉とか爆炎玉とか種類があります。二度目の爆破は火炎玉な感じで。

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