ゴルド の おもい
リプトーレ、グリンブリッジの橋の上
ここに男が一人立っている。
男はいつものように声を張り上げこう言った
「やぁ!みんな!久しぶりだね
じゃあそろそろ話そうかな
どこまで話したかな?
ああ、そうだ、ゴルドの父が魔物と戦いに向かったところだね
それじゃあ今日のお話はゴルドの父がどうなったかと、ゴルドが何を思ったかのお話さ」
むかーしむかし
とある集落に一匹のゴブリンが居た。
ゴブリンの名前はゴルド。
彼の父は集落の戦士だった
ゴルドはそんな父が好きで、いつも側に居た。
父のように剣を振り、父のようになりたいと子供心ながらにそう思った。
そんなあくる日、彼の住む集落のすぐ近くに一匹の魔物が紛れ込んだ
その魔物はゴブリンと比べるまでもなく強力で
人と比べてもまだ強い
大きな大きな魔物だった
彼の父はその魔物を追い返すために
自分の愛する妻と我が子を守るために
絶望的な戦いをしに森に入った。
彼ら戦士達一行が森に入ってしばらく時が経つ
集落の空気は、重い。
誰も帰ってきていないのだ
ゴブリンシャーマンのばあ様も
集落を治めるじい様も
彼ら戦士の妻たちも
当然戦士たちの子供らも
ずっとずっと彼らの帰りを待っていた。
そんな中でゴルド一人だけ
ずっとずっと剣を振るう
ひとつ振れば速くなる
ひとつ振れば鋭くなる
何も考えずに、ひたすら無心に剣を振るう
ひとつ振れば重くなる
ひとつ振れば冴え渡る
ゴルドは一人、ずっとずっと振り続けた。
それから更に幾ばくが時が経つ
戦士たちが森に入って10日ほど経ったある日
集落の入り口に、男が一人現れた。
フラフラしながら入ってくる
ボロボロの鎧はあちこち凹み、泥に塗れている、もっていたであろう剣の刀身はひびが入り折れている。
フラフラフラフラと今にも倒れそうな歩みで集落に、帰ってきた。
その剣を、その鎧を、その顔を、ゴルドは覚えている。
父よ!と叫びながらゴルドは駆け寄った
駆け寄るゴルドの顔を見て、父の瞳に光が宿った。
我が子を抱きしめ、父は我が子に囁いた
ああ、息子よ、守りきれた。
一瞬宿った瞳の光は消え、父はそのままゴルドに支えられるように倒れこむ。
何度も父の名前を呼ぶ。
幾度となく生還を願った。
ゴルドの父は、集落に帰ってきた。
「今日のお話はこれでおしまい。
ゴルドの父は無事だった。仲間の戦士達とタウロスがどうなったかはまた今度話すとしよう。
続きはいつだって?
うーん、そうだな
明日くらいかな。
もしかしたらもう少し早いかもしれないけどね
それじゃあみんな、また会おう」
そう言って男は何処かへと姿を消した。