ゴブリン と おおきな まもの
リプトーレ、グリンブリッジの橋の上
ここに昨日と同じ男が立っている。
男は昨日と同じように声を張り上げこう言った
「やぁ!昨日ぶりの人は『また会ったね』
新しく出会えた人には『ハロー!』
さーてそろそろ話そうか
昨日はどこまで話したかな?
ああ、そうだ、ゴルドが小さな一歩を刻んだところだね
それじゃあ今日のお話はゴルドが初めて外の世界を経験してから少し先の事。
ゴブリンの集落に大きな災いが振りかかるお話さ」
むかーしむかし
あるところにゴルドというゴブリンが居た
彼は初めて森に入り父の仕事を手伝ったその日から、積極的に父の仕事を手伝うようになった。
何度も森に入り、ネズミを狩る
父の仕事が休みのときは父から剣を習い、ひたすらに剣を振り続けた。
それによってか、天賦の才の成せる技かは分からないがゴルドはメキメキと強くなっていった。
そんな我が子を父と母は嬉しそうな顔で見守っていた
そんな幸せな毎日を送っていたある日の晩のこと
ゴブリン達の集落は若干の喧騒に包まれた。
喧騒の音と、父や母の言い争うような声で目が覚めたゴルドは
慌しく家を出る父の背中とそんな夫を泣き崩れそうな顔で見送る母を見た
母はゴルドに気付くとそのまま抱きしめる。
ゴルドは母に、何があったのかと尋ねた
すると鉱山の近くの森に、タウロスが現れたのだと答えてくれた
タウロスとは牛の頭に自身の身の丈ほどの大きな斧、そして人族の身長を上回るほどの大きな体を持っている、とても凶暴な魔物だ。
何よりタウロスの現れた場所は、普段ゴルドの父がネズミ狩りを行ってる森であり、鉱山からも集落からも近く、放っておけばゴブリン達の生活圏を大きく縮小されてしまう。
そんな場所に今まで戦ったこともないような強い魔物が現れたのだ。
斥候のゴブリンから報告を受けた集落の長は、すぐさまゴルドの父やほかのゴブリンの戦士達に、タウロスを討伐するまでもなく追い返す。鉱山から遠くへ、集落からさらに遠くへ。と号令をかけた。
ゴルドの母は、そこまで話すと泣き崩れた。
タウロスはゴブリン達と比べると当然、桁外れに大きい。
どんなに硬く身を固めてもタウロスの巨体から振り下ろされる斧の前には意味がない。
着ている鎧ごと叩き潰されてしまうだろう。
そんなことが子供であるゴルドにすら分かったのだ
彼の父や、仲間の戦士達は死を覚悟してタウロスと戦いにいった。
だからこそ、ゴルドに喪失感のようなものが宿った。
抱きしめる母の手を振りほどこうとゴルドはもがいた。
父を助けるために、父を死なせぬように
もがいて、もがいて、もがき続ける
母の腕はもがくゴルドに強く巻きついた。
決して行かせぬように死なせぬために
もがき続けるゴルドの頬に涙が一筋、伝った。
「今日のお話はこれでおしまい。
ゴルドや、ゴルドの父がどうなったかはまた今度話すとしよう。
続きはいつだって?
うーん、そうだな
明々後日くらいかな。
もしかしたらもう少し早いかもしれないけどね
それじゃあみんな、また会おう」
そう言って男は再び何処かへと姿を消した。




