恋心
――――――ある日、彼女は恋心を見つけた。――――――
――――――誰にも明かさず、大切に大切に育てた。――――――
――――――最初はとてもちっぽけで、今にも消えてしまいそうだった。――――――
――――――あの日見つけた恋心は、
月日が経つうちにどんどん大きくなっていった。――――――
――――――だけどその恋心は粉々に砕け散ってしまった。――――――
「俺、七島が好きなんだ」
彼の明かした想い人は彼女の親友だった。
彼女はただ応援するしかなかった。
――――――彼女はその日、粉々に砕け散って
欠片になった恋心を埋めた。――――――
――――――一欠片も残さないように――――――
彼の相談に乗るようになった彼女の心は
小さな小さな悲鳴を上げた。
――――――恋心はすべて埋めたつもりだった。――――――
――――――だけど彼女の心の中には
とても小さな一欠片の恋心が残っていた。――――――
――――――たった一欠片の恋心は彼女を苦しめた。――――――
彼女の心の悲鳴はどんどんと大きくなり、
修復が出来なくなってしまった。
彼女の心は壊れてしまったのだ。
だけど彼女はそんな素振りを少しも見せなかった。
彼女の心が壊れてから約半年。
彼と彼女の親友が付き合う事になった。
二人は一番初めに彼女に報告した。
彼女の想いなど知らずに。
彼女は二人の前でずっと笑顔でいた。
なんども「おめでとう」と言った。
彼女は家に帰って泣いた。
静かに声も上げずに泣いた。
彼女の想いなど誰も気づかなかった。
――――――彼女の心の中も涙が流れていた。――――――
――――――そして、やっと彼女の心の中にあった
一欠片の恋心が涙と共に流れていった。――――――
次の日、彼女の顔はとても穏やかだった。
なぜならあれだけ彼女を苦しめた
一欠片の恋心が無くなったのだから。
そして月日が経ち、
彼女の心が治ってきたころ
――――――彼女はまた恋心を見つけた。――――――
彼女は今度こそ幸せな恋をする事となる。