8 ザステイル家を出てから今まで
よろしくお願いします。
ザステイル伯爵家を追い出されたお母様と私は、お母様の実家に向かった。徒歩と辻馬車で。
お母様はあらかじめ軽く荷物を纏めていた。離婚の用意をしていたから。
あの後、気絶から目を覚ましたお母様。
お祖父様の用意した離縁書類にサインした時のお母様のお顔に迷いはなかった。
お母様の実家の子爵家前に着いたけど。
お母様の実家からザステイル伯爵家の使者が門から出てきた。
使者は先程までの「奥様とお嬢様」に申し訳なさそうに一礼した。
お母様と私は子爵家のお屋敷に入れてもらえなかった。
お祖父様の手紙でお母様の悪口があったらしい。
執事が出てきて、
「ジュリア様の貴族籍は子爵家からも抜かれるそうで」と告げられた。
こうしてお母様と私は、ただのジュリアとマリーアンになった。
お母様は負けなかった。
「思い切って遠くへ行きましょう!」
私達は辺境伯領行きの辻馬車に乗った。
それからは必死で毎日を生きた。
お母様が、住む所と仕事を探した。私は平民の学校に通い始めた。
マリーアン16歳の頃。(1年前)
学校を無事卒業(首席で)。領府の下級文官試験に合格。
女子寮に住む事にした。
寮に入る頃、ルーカスが産まれた。私の異父弟だ。
領府で働き始めてしばらくして、ラインハルト様が来た。お忍びて。白金の髪を黒く染めて。
上司に言われて応接室に行ったらラインハルト様がいたのだ。
「マリーアン!オレの婚約者!探したぞ!3年もかかった!キレイになったな」ニコニコニコニコ。
ラインハルト様は17歳。とっても素敵な美青年になっていた。
出されたお茶を飲んで、ソファに、座った。
何故かラインハルト様は向かいではなくて隣。手を握られている。離すもんかとの意思を感じて怖い。
「あの日の翌日、ザステイル伯爵家に婚約の打診を出したらマリーアンはもういなくなっていた。早すぎるだろ。離縁するとは聞いていたけど。
お母上の実家にいると思ったらいないし。探すのは大変だった」ラインハルト様。
婚約話が継続していた事にびっくりした。
ラインハルト様は辺境伯邸に居候。身分を隠し、辺境伯の友人の息子として辺境にいる。
辺境伯には男児しかいないので、居心地が良いそうだ。
辺境伯夫妻と幼い子供達に慕われているそうな。
いずれ爵位を貰うから、って辺境伯夫妻の領地経営を手伝いしながら学んだり。
辺境伯領の魔獣退治に騎士団と出かけたり。(ラインハルト様は魔法が得意なので重宝がられている)
ラインハルト様と再会して1年。
時々、一緒に辺境伯領の首都ルドルの街にお出かけしたりしつつ、穏やかに暮らしていた。
お母様は結婚しルーカスも生まれて幸せそうだし。
私も文官の仕事を頑張っている。
ラインハルト様からは会う度婚約を申し込まれてる。
断っても受け付け拒否と言われて、婚約打診中らしい。
さて、回想終わり。
会食場での現在に戻る。
ラインハルト様の調べたザステイル家の今はと言うと。
ザステイル伯爵家では、ダリオン伯爵(祖父)は私を籍から抜けさせたいらしい。
王家からの婚約打診で一度は慌てて探したらしいけど、見つかる訳もなく。貴族の娘が平民でやっていけるはずがない。生きていても落ちぶれているだろう、って。
ウィルバートお父様は諦めずに探しているそうなんだけど。
トーマスの幼年学校入学前に、ザステイル家(祖父母)はトーマスを嫡子としたいそうで。
嫡子マリーアンが邪魔になったらしい。
事故で死亡させてウィルバートお父様に諦めてもらいたい、って事みたい。
貴族籍の子女、特に嫡子が不審な死亡をすると、王家が取り調べをする決まりがある。
だから、殺人ではなくて、事故にこだわっているのだろうとラインハルト様。
そうすると、刺客を送ってきているのはお祖父様とお祖母様?ローズ夫人かな?
ラインハルト様の調べたことを聞いたお母様。
「ウィルバートに会いに行きます。ザステイル家からマリーアンの籍を正式に抜いてもらったら、マリーアンは狙われないでしょう」お母様。
「そうだな。私も一緒に王都へ行こう」お義父さま。
「ザステイル家には何度か手紙を出していました。こちらの住所は書かずに。
ウィルバート様がザステイル家を出ておられるのなら。私の手紙を読んでいないと思います。
数ヶ月前、マリーアンが求婚されているので、マリーアンの貴族籍がどうなっているのかを問い合わせたのです。ウィルバート様宛てにですが。
ラインハルト様の事は書かずに。『マリーアンの貴族籍はどうなっているのでしょうか?辺境伯領にいるので、辺境伯様にお手紙をお預け下さい』と。
それで、辺境伯領にマリーアンがいるとお義父さまが気づかれたのだと思うのです。私のせいだわ。ごめんなさい、マリーアン」お母様。
「なるほど。その可能性もあるな。マリーアンが、狙われ始めた時期にもあう。ザステイル伯爵が怪しいな」ラインハルト様。
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