7 出会いは5年前
よろしくお願いします。
さて、私マリーアンとラインハルト殿下との出会いは、今を遡ること5年前。
マリーアン・ザステイル12歳。ラインハルト殿下13歳の春でした。
マリーアン、思い出しつつ語らせて頂きます。
ウィルバートお父様とお若い女性との間に男児が生まれました。
それでお母様はザステイル伯爵家を出る決心をしました。
丁度その頃、王宮が王都にいる伯爵家以上の令息令嬢へ招待状を出しました。
18歳の第一王子、16歳の第二王子 13歳の第三王子の側近になりうる男子、妃候補を集めたお茶会です。
もうすぐザステイル伯爵家を出て平民になるマリーアン。母ジュリアは「素敵な思い出に」とマリーアンを送り出してくれました。
王宮庭園でのお茶会です。
整えられた庭園。咲き乱れる花々。
にこやかに給仕するメイドさん達。
素晴らしいお茶会会場。
物語の一幕そのものでした。
何より、テーブルには美味しいお菓子の山!素敵なお食事!フレッシュジュース飲み放題!
マリーアンにとって、天国の庭園でした。
王子様や公爵令嬢とか、いらしたそうなんですけと。人だかりがあちこちあったから。アレらがそうだったかと後になって思いました。
マリーアンはモリモリ食べました。椅子に座り、1人テーブルについて食べておりました。
そう言えば、座って食べてるのは私だけだったかも知れません。
「おいしー!幸せー!来てよかったー」とつぶやきながら。
そうしておりましたら、後ろの茂みから
「おい、食い物よこせ」
と偉そうな声がしましたの。
「下さいと言ったら、あげます」と反射で言ったら。
「、、、お腹がすきました。食べ物と飲み物を下さい」
とお返事が来ました。
なので、お皿にケーキやクッキー、ジュースを乗せて茂みから出る手に乗せてあげました。
しばらくして
「甘いものより肉をくれ」と言う声。
無視したら、
「お肉が食べたいです。下さい。お願いします」
と言う声がしたので、またお皿に乗せて茂みの手に渡しました。
数回、そういう事を繰り返しました。
お腹がいっぱいになったらしく。
「ごちそうさまでした」
と茂みから声がしました。
私も満腹です。
続けて、
「おい、お前、食い物食べに来たのか?王子に挨拶に行かないのか?」
と茂みの声が言います。
「はい、王宮に来るのはこれが最後なので、食べ物を堪能しに来ましたの。美味しかったです。さすが城のシェフ。名人技です」
と答えました。
「もう来ないのか?なんでだ?」動揺した声が聞いてきた。
「両親が離婚予定です。平民になる予定ですから、今日が私にとって最後の王宮パーティーです。美味しかった。素晴らしかったわ」
「親が離婚してもお前は貴族令嬢のままで良いじゃないか」
声の主。
「お父様のアイジンに男子が生まれたそうです。お母様と私は追い出されますの。
王宮って素敵ですわね。とっても美味しかったわ」
「おい、いいのか?それで?貴族でなくなるのは不安ではないのか?」声。
「ええ、お母様が笑って下さる方が良いですもの。
お父様は手を出した責任を取らねばならないとお祖父様がおっしゃいました。お祖母様は生まれた赤ちゃんが可愛そうだとお母様を責めます。
お母様はつらそうで、毎日悲しいお顔でしたの。でもお母様は離縁を決心なさってからは生き生きしてます。未来へ向かってゴー!って言ってます」
「未来へ向かってゴー、か。いいなそれ。」
声が笑う。
「ええ。未来は自分の意思と努力で明るくなりますわ。私も頑張ります!」
「なあ、おい、こっち来いよ。顔見て話そう」
「あなたが出でらしたら?お名前は?私はマリーアンと申します」
「、、、ハルだ。事情かあって、出れない。人が怖いんだ」
「人恐怖症ですのね。犬が怖いとか虫が怖いとか言う方がおられますわね」マリーアン。
「ああ。でも、お前は怖くない。こっち来いよ」
「言い方」マリーアン。
「こちらに来てお話ししませんか?あなたと親しくなりたいです」
「仕方がありませんわね」
マリーアン12歳、しゃがんで茂みに分け入りました。
いい感じに空間がありました。
立派な服を着た白金の髪の色、スミレ色の瞳の美少年がいます。私を見て顔を赤らめました。
「反則だ。ガツガツ食ってるからこんな可愛いと思わないだろ」
小さい声で私を褒めてくれました。
「家名は何ていうんだ?マリーアン」
「ザステイルよ。あなたは?」
「家名は言え無い。オレは三男だから、婿入り予定なんだ。ザステイル伯爵家なら、オレでよければ婿に行ってやる」
上から言うハル。
「私は家を出るんですってば。ザステイル伯爵家は異母弟のトーマスが跡継ぎだってお祖父様がおっしゃってました」
少し呆れて言うマリーアン。
「じゃあ、爵位を貰うから、オレんとこに来いよ。お前を気に入った」ハル。
「私達、今日の今さっき会ったばかりですよ。何を言ってるんですか」
少し顔を赤らめて言うマリーアン。
「婚約するならお前がいい。父上と母上は気に入った子がいたら婚約者にしていいと言っていた!王都にいろよ!」
「お断りします!私はお母様と行くんだもん!エラソーに言う人は嫌い!貴族はキライ!男もキライ!浮気するし!」
マリーアンの、声が高ぶる。
「オレは浮気しないし!」
ハルも、つられて声が大きくなる。
「嘘だー!男は浮気者なんだからー」
うわーんと泣き出したマリーアン12歳。思い出すと恥ずかしい。まだまだ子供でした。
「お父様ひどいよー。お母様を、泣かせてーうわーんうわーん。お祖父様もお祖母様も大嫌いー!うわーん」
「おい、泣くなよ!」
ハルは慌ててました。
「オレは絶対浮気しないし!跡継ぎが必要な立場じゃないから、子供は男でも女でも、いなくても良いんだ!おい!なんで泣くんだ?どうしたら泣き止むんだ?」
怒ってたハルがオロオロし始めた。
私が泣いてるのは、我慢が爆発しただけ。ハルは関係ない。
エラソーな美少年のオロオロ顔が面白くて。
ヒックヒックしながら、笑っちゃった。
ハルはホッとした顔になった。
「女はよくわからないな」ハル。
「男もよくわからないわ。
浮気したくせにお母様にアイシテルのはお母様だけって言うのよ?お母様はお父様のアイシテルは言葉だけだって言うの。むつかしいよね。」
「それは、むつかしいな。、、、そうだな、、お母上にはマリーアンが必要だな。すまなかった。だが、オレはお前が気に入った。、、、、父上によると、男はむやみに女に手を出してはいけないそうだ。手を出したら、必ず責任を取らなくてはならないと。」ハル。
「お祖父様もそれ言ってた」
「だから」
ハルは私の手を引いて、ギュッと私を抱きしめて、額にキスをした。
それから、驚いているマリーアンを離して、「どうだ!」とニコニコした。
「手を出したから、オレは責任を取る!マリーアンはオレの婚約者な!」
ハルは赤くなってポカンとしているマリーアンの指に、自分の指輪をはめた。
マリーアンの指は細くて
「ゆるいな、これでは落ちてしまう」と親指にはめた。
「これもやる。婚約者の証しだ。」と懐中時計、ハンカチ、カフスボタンなど。持っているもの身に着けているものを外してマリーアンに押し付けた。
我に返ったマリーアン。
「いらない!私は平民になるんだから!返す」
「返品不可だ!受け取らん!」ハル。
「返す!」「受け取れ」「いらない!」「不敬だ!」
ギャーギャー騒いでいた。
「ラインハルト様!お探ししました」
茂みをかき分けて召使いが来て、ハルは連れて行かれた。
ハルは「殿下」と呼ばれていた。
第三王子ラインハルト様だった。
またたく間にハルは令嬢たち、令息にも囲まれた。
王子様が平民と結婚出来るわけ無いじゃん。
マリーアン12歳、しょんぼり王宮から帰宅。
屋敷に着いたら、修羅場の真っ最中だった。
お母様が頬を打たれて、床に倒れていた。お母様の、頬が腫れていた。
「このアバズレ!出ていけ!」
お祖父様がお母様を、罵る。蹴る。
「マリーアン!お前も出てけ!」
お祖父様が言った。
この日、お母様と私はザステイル伯爵家から追い出された。
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