エドガーside
沢山の作品の中で、この作品に来ていだきありがとうございます。
よろしくお願いします。
人生、何が起こるかわからないものだ。
試練の時もあれば、贈り物の様にもたらされる幸福もある。
私はエドガー・ラウデル。しがない中年男だった。
今は世界一幸せな中年男だ。神様に感謝している。出会わせて下さり、ありがとうございます!!
私は王都でごく普通の平民の両親の元に生まれ育った。
15歳の時に大工の父親が亡くなった。
まだ学生だった。
あと半年ほど学校に通わなくては卒業出来ない。
辞めようかと迷った。
母親が絶対に卒業しなさいと言った。頑張って卒業したら、良い所に就職できるから、と。
母親は13歳の弟ザックも学校に通わせた。
私と弟は学校に通いながら少しでも時間があれば働いた。
3人で働きながら何とか乗り越えた。
やっと平民学校を卒業。
商会で働き始めた。
しばらくすると、商会の給金で生活はかなり楽になった。
弟の学費を2年捻出。
その後は3人で働けば余裕のある暮らしが出来る様になった。
20歳で自分の商会を持つことにした。小さな商会だ。
母親と弟、弟ザックの恋人ハンナ(後にザックの妻)という家族経営だ。
元手の少ない私が考えた商売は、「配達」だ。
仕事で顔見知り、友人となった人から仕事をもらった。
御用聞きの様な便利屋の配達から始まって。
売れ残りの花を原価の半値で買い取り、城門前で販売。
忙しい文官、貴族も客にした。
メッセージカードに記入してもらい、家族、恋人、婚約者に愛人などに配達。
大当たりした。
これは人を雇い教育して引き継がせた。
プレゼント用の配達は形を変えて商売にした。
個人の配達を請け負う商会に成長。小さな商店を構えた。
忙しいお客様からの要望を聞き取り、予算内でプレゼントを購入しラッピング、花を添えて配達。
主に男性客だ。
ハンナが男性客から女性の年齢好みを聞き出してプレゼントを選んだ。
プレゼントに添えるカードには必ず顧客の手書きで、とハンナ。
「物だけではさみしいですから」と。コレが良かった。
高評価を貰い、顧客が顧客を呼んだ。
資金が貯まるとコレは良いと思う品物を置いたり、カタログを作った。買い付けしながら、商品開発も始めた。
王都の商店と繋がりを持ち、色々な品物を取り扱う様になった。
女性に人気のあるハンドクリームが大当たりした。プレゼント商品である。
「母親に、妻に感謝を込めて」と家事をしてくれる女性へのプレゼントに、花とハンドクリーム。プラスして焼き菓子を選んでつけたり。
王都から少し離れた養蜂家業の女性達が作った蜂蜜入りのハンドクリームだ。
蜜蝋を売るだけでなく、商品化したいと要望を受けて、ハンナがその家に長期滞在した。
そして養蜂家の女性達と切磋琢磨して作った商品の一つだ。
幾つか普通の蜂蜜も作って売ったが、ハンドクリームの売り上げはダントツ。
そうしたら、王宮から注文が来たのだ!
侍女長が夫から贈られて感激したそうである。
侍女長は王宮で働く侍女達にボーナスとしてハンドクリームを支給すると決めてくれた。大口注文だ。
その後、ハンドクリームは王宮で評判になったそうだ。
遂に隣国大使へのお土産にと注文を受けた。
しかし、途中で注文を取り消された。
他の伝統ある商会の品物にするから、と。
ガッカリした。
しばらくして王宮から呼び出しを受けた。
そこに侍女長と若い女官がいた。
贈答品を選定する者が賄賂で品物を変更したらしい。
侍女長が丁寧に挨拶してくれた。子爵夫人だ。
若い女官はジュリア・シーモア子爵令嬢と名乗った。
いかにも高級女官と言う雰囲気の侍女長。
若いジュリア。薄茶色の髪。その髪を丁寧にまとめて編み込んで残りを後ろに流している。若葉色の瞳は大きく、鼻筋はスッキリと小さな顔に乗り、唇は赤いさくらんぼの様で、、、。背は少し高め、スラリとし、立ち姿は美しく。白百合の様だった。
一目ぼれだ。
挨拶してくれた声は鈴を転がす、というのはこの声だと思ったし。
彼女の雰囲気は柔らかで落ち着く。
侍女長は前回の発注取り消しを詫びてくれた。
そして、取り消した数量とプラスしてかなりの数のハンドクリームを納品できるか聞かれた。
「ありがたいお申し出です。ですが、人気商品でして、既に他の商店に卸してしまいました。
納品日によります。期間があれば増産しますが」
商談となる。
指定の数が在庫に無い。増産も間に合わない。
そこでジュリアが提案した。
「これから作るハンドクリームの瓶を変えることは出来ませんか?量は少なめでもオシャレな高級そうな小物入れに使えるくらいの可愛い入れ物に入れる事は可能でしょうか?」
「それは、可能です」
商談がまとまった。
侍女長が
「入れ物について、可能ならジュリアに選ばせて頂けませんか?」
勿論了承した。
後日、ジュリアさんが商会に来た。
生憎、私は仕事で居なかった!
会いたかったのに。
品物を納品時にも、会えなかった。
侍女長に繋ぎを付けてもらおうと思いを告白した。
「侍女長様、私は独身です。いえ、あの、何を言っているかと言うと、先日お愛したジュリア・シーモア嬢に真剣に交際を申し込みたく。け、け、結婚を前提にお付き合いをお願いしたく、何とか会う機会を頂きたく、、、」
しどろもどろに伝えた。
ため息をついて侍女長が言った。
「商人なのに口下手てすねえ。残念だわ。いえ、もう少し早ければジュリアに伝えたのですけど。
ジュリアは、、、休職中です。体調不良でね。実家に帰りました」
「ご実家に、シーモア子爵家ですね。体調が、それは心配です。お見舞いに」
と言いかけたが、侍女長が止めた。
「行くのは止めたほうが良いかと。
あの子は恋人がいます。いえ、、、ゴタゴタする中に行くのはどうかと思います」
「恋人が。そうか。そうですね。素敵な女性ですから」
ショックだった。
告白する前に失恋した。
後日、お見舞いとお礼のカードを添えて、商会の花束と焼き菓子をシーモア子爵家へ送った。返事はなかった。
それから直ぐに、ザステイル伯爵家嫡男に子爵令嬢が見初められて嫁いだと聞いた。それがジュリア・シーモアだと。
完全に失恋した。
彼女の幸せを願った。
それから何年か経って。
王都には本店。弟夫婦と母親が経営。
私は魔獣素材と隣国の商品が入るリモールド辺境伯領に支店を出すため、居を移した。
王都の商品を、領都ルドルの店に置いて、仕入れた品物を王都の本店へ送った。
本店も支店も経営は順調。
料理店、宿泊施設、魔物素材購入販売店など、幅広く経営。
店員用にあちこちに家を買った。使わない家は貸した。不動産業も始めた。
ラデウル商会はガルネリア王国内でも大きな商会になった。
気がつけば37歳。独身。
弟一家は子沢山だ。
甥や姪は商会で下働きから始めて、部門別にそれぞれ興味のある部所を任せるつもりだ。
私はこのまま、年老いて行くのみ。
と思うだろ?!
そう思っていたんだ。あの日まで。
「こちらでお仕事をさせてもらえませんでしょうか?」
ジュリアが来たのだ。
困惑顔の店員が
「訳ありな女性が仕事をしたいと来ておられます。貴族女性ですね。どうしましょう?」
と追い返さず、ジュリアを待たせていた。
(この店員には食事券をボーナスに上乗せした)
「訳ありの貴族女性か。どうします?支店長。理由をつけてお帰りいただきますか?」副店長。
「上品な方で、収支計算出来るとおっしゃいます」店員。
「会ってみよう」私。
店の隅にいたジュリアを見て仰天した。
10年経っても、彼女は白百合のまま。知性に磨きがかかり、人柄に奥深みが加わり、一層の魅力が増している。
なぜここに?ザステイル伯爵夫人が?夫は???
顔に出さす、話を聞き出した。
「こんにちは。エドガー・ラウデルです。面接というか、お話をお聞かせもらえますか?」
応接室に移った。
ジュリアの話に怒りが湧いた。
この様な麗人佳人を妻に得ておきながら。
浮気?、、、あり得ない。
離婚させられ、追い出されただと?、、、なんて不誠実な。
娘さんを宿屋に置いて、ルドルの商店を職を求めて廻っている、とな。危険だ。
即採用!
近くの持ち家(店員用)に入居させた。マリーアンと言うジュリアによく似た可愛い女の子に会った。
ジュリアの子供、可愛い!!
ジュリアは有能で、直ぐに仕事に馴染んだ。
支店長である私が誘えば、ジュリアは断れない。
誘えないジレンマにウダウダする日々。
ジュリアと仲良くなった店員に相談。
店の従業員全員にバレていた。
ジュリアばかりを目で追い。
しどろもどろにジュリアに声をかけ。
あからさまに挙動不審。
「支店長とジュリアを応援する会」が作られて、ジュリアは私の秘書に抜擢された。
その後は、頑張った。職場の立場を利用したが。
店の視察と称して。
食事に連れていき。
各店舗を周り。
親しくなり?
告白して、結婚。
王都から母親が来た。
元貴族を妻にとは、たぶらかされた?と心配した様だ。
ルドルに滞在し、ジュリアと仲良くなり、安心して王都に帰って行った。
ジュリアは最高の妻だ。
優しい。美しい。賢い。よく気がつく。
マリーアンちゃんもとても良い子。
幸福の上に、更に幸福が訪れてくれた。
ルーカスを授かった。
神様に感謝を。
ジュリアに感謝を。ジュリアを幸福にする事が私の生き甲斐。
マリーアンちゃんにも幸福が訪れますように。
色々あって、マリーアンちゃんはラデウルからカーライルに名乗りを変えた。
だけど「お義父さま」と変わらず呼んでくれる。
なんとマリーアンちゃんは第三王子ラインハルト殿下と結婚。幸福そうだ。
愛する者たちが幸福そうで、私も幸福だ。
更に何年も経って。
ジュリアとの子供、ルーカスに「お父様」と呼ばれる。
我が子というものの存在は嬉しいものだ。
更に私は
「おじいちゃま」と孫たちに呼ばれる。マリーアンの子供達に。
愛する妻、息子、娘にその孫達。
私はこの上ない幸福に包まれている。
神様に感謝を。
愛する者たちが幸福でありますようにと、願ってやまない。
拙い物語にお付き合い頂き、お読み頂きありがとうございました。




