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私を殺したいのは誰ですか? 〜離縁された母と共に伯爵令嬢は辺境で平民暮らししてるのに、初恋の第三王子に求愛されています〜  作者: つーかたかさん


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23 ウィルバートside

よろしくお願いします。

子供の頃、従兄弟のアレックスが僕の憧れだった。

アレックスは父上の姉上の息子。文武両道で格好良くて、凄くモテる。性格まで良いんだ。


父上はアデライン伯母様が大好きだ。母上よりも。


父上が幼い頃、父上の両親と嫡子の兄が亡くなって、家を乗っ取られそうな時があったそうだ。

ザステイル伯爵家は裕福で領地も潤っている。国内有数の資産家。


結婚が決まっていたアデライン伯母様は父上の為に結婚をやめた。

候爵家に嫁ぐ直前であったのに。


父上の為に、父上が成人するまで、10年をザステイル伯爵家に捧げてくれた。


父上が18歳になり、ザステイル伯爵当主を、継承した。

アデライン伯母様は護衛騎士と遅い結婚をした。


僕が知っているアデライン伯母様は幸せそうに見えた。穏やかな優しい女性だった。


父上はアデライン伯母様とアレックスに負い目があった。


アデライン伯母様の一人息子、アレックスは優秀だった。


アレックスはアデライン伯母様に似ていた。人格者で賢くて優しくて。

比べて、僕は凡人だ。容姿が良いだけの。嫡子だから女は寄ってくるけど。


アレックスは17歳で、ザステイル家のギフトを継承した。

アデライン伯母様様が、

「これでギフトを持つのが、二人になったから」

とザステイル家のギフトを返上したと言っていた。


「次はウィルバートの番ね」って。

でも僕は18歳になっても、ギフトを継承しなかった。きっと僕は凡庸だからだ。


アレックスが結婚すると僕に伝えた。

相手は、とても芯のある女性だ、って。ジュリアという人。


惚気話を聞かされた。

アレックスを祝福した。


それから直ぐ、アレックスとアデライン伯母様が亡くなった。

父上は、狂ったように暴れた。怒り慟哭していた。


葬儀の日、アレックスの結婚相手が来た。

子爵家の娘でジュリア。

アレックスが言っていた髪色と瞳のスラリとしたキレイな女性。


追い返されかけたジュリアを「知り合いだ」と、葬儀場に入れた。ジュリアは僕に感謝してくれた。

近くで見たら、本当にキレイな女性だった。

彼女はアレックスを愛している。

アレックスが妻に望んだ女性。


良いな、って思った。


父上も母上も、ホントの僕を見ていない。

父上が大切なのはギフト。ザステイル伯爵家に継承する『解錠』『封印』。


アレックスは、17歳で継承した。

その歳をとっくに過ぎたのに、僕は継承しない。


後日、ジュリアが屋敷に来た。

僕は葬儀やアデライン伯母様の居宅の片付けや役所関係の雑事でザステイル家にいた。


ジュリアは困っていた。

ジュリアは身籠っていると言う。

 

アレックスはもういない。


なら、僕が貰ってもいいよね?

大切にするから。

ジュリアは渋ったけど、子供の為と言って丸め込む。


僕はジュリアと結婚した。


しばらくして、僕もザステイル家のギフトを継承した。

自信がついた。


マリーアンが産まれて。幸せだった。


ジュリアが離婚と言い始めたから慌てたけど。


この頃には僕はジュリアを、もう手放せないほど愛していた。

ジュリアに愛を告げて本当の夫婦になった。


ジュリアも僕を大切にしてくれた。でも、きっとアレックスには及ばない。アレックスは特別。


ジュリアがザステイル家の領地経営や帳簿付け、提出する書類作成等をしてくれる様になった。

ジュリアの仕事は早く、丁寧で、完璧。

ありがたいし、嬉しい。

けど、やっぱり僕はダメだなぁと思った。


せめて、ジュリアとの子供が欲しかった。

ジュリアとの確実な結び付きが欲しい。

愛するジュリアとの子供が欲しい。


何年経ってもジュリアと僕に子供は出来なかった。


父上が怒る。

ギフト継承には男児が必要って。

「親戚から養子をもらおうよ」と言った。

「ダメだ」

祖父と伯父は親族に殺されたから。親族達とは絶縁しているから。自分の血筋である事にこだわっていた。


父上と母上はジュリアとの結婚に反対していた。

「もっと良い家の娘と結婚させるつもりだったのに」とジュリアの前で言うんだ。

だからマリーアンが僕の子ではない事を絶対に言わなかった。


父上がどうしても僕の血を引く子供が必要だって言うから。

仕方なく未亡人とか身持ちの悪い令嬢と関係を持った。あちこちで。


関係を持つ直前に僕は女性に言う。

「ザステイル家は男児が欲しい。もしも子が出来たら家に来て。その後の事は任せて欲しい。家を用意するよ。

産まれた子には魔力鑑定する。僕の子だったらザステイル家の籍に入れる。

でもね、僕の妻はジュリアだけだから。僕が愛しているのはジュリアだけ。そこは間違えないでね」って。


たいていの女性は「それで良い」って言った。ただの火遊び。


承知した女性にはさらに言った。

「子供はザステイル家が貰う。君には家と大金をあげる。でもね、もし僕の子供じゃなくて他の男の子だったら、それなりの制裁を覚悟して」



沢山の女性と関係した。

関係した女性が妊娠していないかを数ヶ月ごとに調べた。

ザステイルの子を万が一にも外に出すわけにはいかないから。


子は出来ない。


そのうち適当に誘われたら乗った。


どんな女性とも、僕の子は出来ない。


ジュリアはアレックスとは直ぐに子供を授かった。

僕とは子が出来ないのに。


おそらく、僕に子種は無いんだ。

虚無感に苛まれた。


仕方がない。

マリーアンに婿をとってザステイル伯爵家を継承していけばいい。父を説得すれば良い。


そんな時に。ローズが来た。

確かに一度だけ関係した。

「ウィルバート様との子を授かりました」って言う。

この娘は、嘘つきだ。誰の子種だ?


子が生まれた。男児だ。


ローズとその子のせいでジュリアとマリーアンがいなくなった。


父上が言った。

「産まれた子は、私の魔力を引き継いでいる。間違いなくザステイル家の男児だ」


ローズと父上が結託したと思った。

父上が手をつけた女が、僕に近づいて関係を持って、こうして堂々とザステイル家に入り込むために来たのだ。


この女のせいで!父上のせいで!


父上がローズと僕の婚姻届けを作って出した。

ジュリアとは離婚させられていた。


僕は、ザステイル家を出た。

愛しいジュリア、マリーアンはどこにいるんだ?

マリーアンは僕の、ザステイルの正当な娘だ。

トーマスなんて、汚れている。ローズはもっとあくどい。


ジュリアもマリーアンも見つからない。

年月だけが経つ。


ある日、急に王城に呼ばれた。

文官数名に、調書を取られた。

僕は仕方なく、僕の知る真実を話した。


文官達は書き留めたり、耳打ちしたり、ザワザワして、バタバタして。

長い時間、待たされて。

それから。

僕の知らない事実が次々告げられた。


ローズは、嘘つきじゃなかった。

愚かだけど、被害者だった。

ザステイル家の被害者。

可哀想なローズ。


見知らぬ男の子種を知らぬ内に入れられたなんて。

、、、ローズが被害者に選ばれたのは、僕と関係したから。

トーマスは僕の異母兄の子供。僕の甥。父の孫。


ローズとトーマスとっては、嘘つきだと決めつけた僕こそが、加害者だ。


こんな複雑なことが?どうして?


全てはザステイルのギフトのせいだ。



複雑に絡んだギフトの継承の行方がわかった。

アデライン伯母様と、父上、そしてアレックスが、ギフトを継承。


アデライン伯母様がギフトを返上。ソレは僕の異母兄に行ってしまった。

だから、僕は18歳になってもギフトが無かった。


ソイツがアレックスを殺した。

ギフトの恩恵で密室にした部屋で。


アレックスが死んで、僕がギフトを継承。


それからずっと、父上と僕、異母兄がギフトを持っていた。

何だよ、それ。

「父上の言う、男児が必要」って。

婚外子を作って野放しにしたら、ギフトを外に出していたら、意味ないじゃないか!

衝撃過ぎた。


アレックスは、どうして死ななくてはならなかった?アデライン伯母様は?

ジュリアから夫を奪ったのは?

マリーアンから父親を奪ったのは?

異母兄のせいだ。

だけど、異母兄を、その母親を捨てた父上のせいだ。

ギフトのせいだ。


そして、僕も罪と無関係じゃない。僕も罪の一端を担っている。

僕がギフトをもらったのはアレックスが殺されたから。


事実が僕を打ちのめす。



さらに、ジュリアの現在を告げられた。

ジュリアは既に再婚していた。再婚相手と仲睦まじく、子も授かったって。


そんな。

まだ僕はジュリアを愛しているのに。


また僕は1人だ。


父上は幽閉。

母上は別荘へ向かった。政略結婚の2人は仲良くなかった。こんなものか。婚外子の存在も母上には屈辱だろう。


久方ぶりに、ザステイル伯爵家に足を入れた。

使用人達があからさまにほっとしている。

当主がいないから、右往左往していた。


「ローズは?」

すっかり歳をとった執事に聞いた。

「お部屋におられます」

執事の足取りも昔より遅い。彼も僕も歳をとった。


執事が案内してくれた。

ローズは部屋にいた。

様子がおかしい。

メイドが震えている。

ローズは普通の精神状態でなく、ショックで目がうつろになっている。

わけのわからないことをブツブツ言ってる。瞳は空を見つめていた。


トーマスが来た。

「おかあさま」

ドアの前で立ち止まり、不安そうに小さな声で呼びかけた。


トーマスを見てローズが悲鳴をあげた。絶叫だ。

「来ないで!化け物!」

トーマスに、手元の茶器を投げた。

当たらず、トーマスが泣き出す。

5歳のトーマスに、なんてことを。


僕はトーマスを抱いて部屋を出た。


トーマスは泣いている。

トーマスには何の罪もない。むしろ、被害者だろうに。


僕はトーマスに、話しかけた。

「お母様は、今は混乱しているんだ。怖かったね。大丈夫だからね。、、、今まですまなかった。トーマス、僕がトーマスのお父さまだよ。」


トーマスが僕を見上げる。

「とうさま?」

純粋な瞳。可愛いな。


「ああ。僕がトーマスの、お父さまだよ」

僕は自然と笑顔になった。

トーマスも涙の伝う頬のまま、僕を見て笑顔になった。

トーマスが僕にギュッと抱きついた。小さく柔らかい身体。心は傷ついている。守らなければ。この子には僕しかいない。


僕はその日、トーマスを僕の嫡子として貴族籍に届けた。


それからずっと、ザステイル家で暮らしている。


虚ろなローズに話しかける。

「ごめんね。酷い言葉を言って。僕が悪かった。お願いだから、僕と一からやり直して欲しい」

「僕は君を誤解してた」

「トーマスを2人で育てていこう」


いつか、ローズに届くと信じている。


僕は凡庸な人間だ。

だから、凡庸な父親になれると思う。

凡庸な夫にも、絶対になれる。

沢山の失敗。傷つけた過去。それは取り返しがつかないけれど。


これからの未来を、ローズとトーマスと共に、僕は生きて行く。





お読み頂きありがとうございました。

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