22ディオンside
よろしくお願いします。
「お前の父親はクズだ」
これが母の口癖だった。
「貴族の坊っちゃんに騙されて人生を台無しにされた。お前さえいなければ私は幸せになれた」母の口癖。
酒場で半ば娼婦の仕事をする酌婦が母だった。
酒の飲み過ぎで母はオレが10歳の頃死んだ。酒場の主人夫妻がお情けでオレを置いてくれた。
酒場の夫妻の使用人だ。
言われたことを何でもした。
10代半ばを過ぎれば、酒場のケンカを何度もとりなした。ゴロツキ仲間少年でも一目置かれる存在になっていた。
そのうち下町に顔の利く人間として騎士団の使いっ走りの様なことをし始めた。
18歳の頃、不思議な力を授かった。どんな鍵がかかっていようと、開けることが出来るようになった。不思議な力。
その頃、下町の顔なじみの娘と恋人になっていた。
オレに飯を食わせてくれた。
オレの話を聞いてくれて笑顔をくれた。居心地が良かった。
ある時、騎士団の上の方の奴がオレの力を見抜いた。
鍵の掛かった落とし物を空けた時だ。
「どうやって開けた?開くはずがない物だ」しつこく食い下がってきて、誤魔化せなかった。
そいつはオレを引き抜いた。
騎士団の最下層に入れられた。ソイツがオレの上司になった。
その上司の娘との結婚の話が来た。
浮気して離縁された女だ。俺よりかなり年上のキツイ性格の女だ。
オレも上に上がれるチャンスだと思った。
宿無しの孤児上がりが、騎士団の奴の娘婿になる。良いじゃねえか。
下町の娘と手を切り、上司の娘と結婚した。
仕事で解錠は役に立った。だが、俺の働きの手柄は上司が受け取る。
上司の娘は下町育ちのオレを蔑んでいる。名ばかりの夫婦。
悔しいが、それで良かった。騎士団員の端っこになれたんだから。
だが、良かったのはそこまで。
妻は他の男の子供を次々産んだ。
騎士団には「眠り香」が常備されている。厳重管理品だ。
アジト捜索、イカれた奴が人質を取った事件等で使用される。
上司に命じられて「眠り香」を『解錠』で欠片を盗んだ。
上司はオレに盗みをさせ始めた。
目をつけた貴族の愛人宅などに『解錠』で侵入。眠り香を焚いて家人が起きないようにして、宝石や金貨を盗む。
バレないように目立たない量をくすねた。
盗みの届けが出された家には2度とと侵入しない。それがルール。
宝飾品の管理がずさん、金が少し無くなっても気が付かない家をリストアップ。
侵入しての盗みは年に一度だけ。
上司はずる賢い。
貴族らには大した品物でなくても、オレらには大金になる。
そのうちオレは知った。
この力はザステイル伯爵家のギフト『解錠』。
オレの母は嘘を言ってなかった。オレの父親はザステイル伯爵ダリオン。オレの異母弟は嫡子ウィルバート。
すごい豪邸に住んで良いもの食って、王宮に、出入りかよ!
まさに、雲の上だ。オレからしたら。
一方、オレはクソみたいなゴミ溜めで育った。
食って寝るとこがあれば満足だった。
罵られて蹴られて育った。孤児だ。
今のオレどうだ?
俺は盗人だ。いや、盗人の手下。盗人の犬。
オレはザステイルの血を引きながらこのザマだ。
天と地の差だ。
オレは恨んだ。憎んだ。憎悪した。ザステイル伯爵家の奴らを。
悪魔が引き合わせた。
仕事でザステイル伯爵家の『解錠』持ちのお坊ちゃんの仕事に同行することになった。
オレは王宮からの仕事をするザステイル様一行の荷物持ちの1人だ。
オレも『解錠』持ちなのにな。ははっ。
お坊ちゃんは綺麗な顔をしていた。育ちが良くて下っ端の俺等にも丁寧に接して下さった。
そう、下さったのだ。それが、オレには鼻について、離れなかったんだ。
オレは、魔が刺した。オレじゃない。オレの中の悪魔がやったんだ!
坊っちゃんがいる部屋に入って、刺し殺した。
『封印』でやり過ごし、夜中に人が居なく無くなってから部屋を出て軽く『封印』をかけて遺体の発見を遅らせた。
軽く『封印』をかければ、時間が経つと鍵が開く。
何食わぬ顔で自分の持ち場に戻った。
お坊ちゃんは死んだ。
お坊ちゃんの母親も、息子の死を聞いて急いでこちらに向かい、事故に遭い、死んだ。
また年月が過ぎていった。
オレはずっと騎士団の下っ端騎士。騎士様の雑用仕事をしていた。
そして、時々盗人。
俺の給料も俺が盗んだ品物の金も、上司と妻が使う。
オレは小遣いのみ。
虚しい日々だ。砂を噛む日々だ。
ある時、酒場で騎士団配属の若い奴が酔っ払って戯言を言った。
曰く、
「オレの妹が後妻に行くって決まったんだー。可愛い妹が、まだ18歳なのに50過ぎたオッサン貴族の後妻だよー。
親が借金あるから、こんなことに。クッソー!下っ端貴族の娘の行く先はこんなんばっかかよー!やんなるよなー、でさー、妹は無謀な事をしたんだ。バカだよー。浮気者のザステイル家のウィルバート、誰とでも寝る有名なウィルバート。そいつと昨夜やったんだってさ。意に沿わぬ結婚をする身です、お慕いしています。思い出を、って。ウィルバートって30くらいの優男で、誰とでも寝るってやつー。嫡男だけど、子供は、女しかいないから、上手く子供を授かったら、憧れのウィルバート様と結婚てきるかもー、なーんて言うんだよ。本当に、やったらしいんだ。信じられねー。オレの妹、可愛いいけど、ばかー、ローズのばーかー」
管を巻いている。
そいつは友人に抱えられて自宅に送られて行った。
オレはこっそりと後をつけた。
偶然にも、オレはその日、医者から届け物を託されていた。眠り香も持っていた。
仲の悪い夫婦が夫婦生活無しに子を得る器具。
子だけほしい女が使う道具。
細いスティックだ。
中に男の子種を入れて、女性の中に流し込む。注射針に似た構造のスティック。
オレはそこの家に、深夜、『解錠』して入った。
眠り香を焚いた。しばらく待ってから屋敷を周る。部屋を探した。
夫妻と先ほどの兄と、娘の部屋があった。
ご丁寧に部屋のドアに「ローズ」とデコレーションしてあった。無邪気な娘だ。18歳だもんな。
娘の部屋に入った。
医者の使うスティックにオレの子種を入れた。
娘の寝衣をまくった。
子種入りのスティックを娘の中に、入れた。
侵入した家から出る。
軽く加減しながら『封印』する。中から鍵がかかる。
カシャン。
これはギフトの『封印』の音。
いや、オレに掛かる手錠の音か?
オレは酔っている。
母さん、オレはクズだ。本当にクズの息子だった。
なあ、これは復讐なのか?オレの?母さんの?
哀れなローズ。
いいや、ローズはウィルバートと結婚を望んでいる。だから、許してくれ。
この家の娘。ローズは、オレの子を授かるだろうか?
その後、ザステイル伯爵家にローズと言う女が押しかけ、嫡子ウィルバートは夫人と離婚。
ローズが男児を産んだと噂を聞いた。男児の名はトーマス。
遠目に、ローズ夫人が産んだトーマスを見た。
はははっ。
オレに似てる!
オレは神に愛されていた!
トーマスは、俺の息子だ。
トーマスをザステイル伯爵家の揺るぎない当主にしなくてはならない。
邪魔な娘がいる。ウィルバートの娘。嫡子はそいつなんだと。
そいつを、殺さなくては。
ザステイルの全てをトーマスに。
頭の中で母さんの声がする。
「お前は父親と同じクズだ」
オレは父親よりもっとクズだよ。
母さん、、、。殺人犯、盗人、もっと罪を重ねてる。
ウィルバートの娘はしぶとく殺し損ねた。
長期休暇でルドルに滞在したが、時間切れで王都へ戻った。
ルドルでドラゴンが降り立ったと噂を聞いた。第三王子ラインハルト殿下がドラゴンと契約したとも。
ほどなく、騎士団が騒々しく家に乱入して来た。義父上司とオレを捕らえた。
義父上司は窃盗、盗品販売の罪。即解雇で牢屋へ。
オレも同罪だ。
オレはザステイル伯爵令嬢殺人未遂も追加で牢屋へ繋がれた。
クズの末路に相応しい居場所だ。
お読み頂きありがとうございました。
ストックが尽きかけているので、毎日が投稿が無理になりそうです。読んでくださってる方、ごめんなさい。最後まで書くので、飽きずに読んで下さると嬉しいです。




