21 ダリオン前伯爵side
よろしくお願いします。
私はザステイル伯爵家当主ダリオン。
ザステイル家は王国創建当時から続く由緒ある伯爵家だ。
唯一無二のギフトを継承している。
私が子供の頃、ザステイル伯爵家に危機があった。
姉と兄がいて、私は年の離れた末っ子だった。
8歳の時に両親と兄が亡くなった。暴漢に襲われた。ザステイル家遠縁のお家乗っ取りだと思われる。
葬儀後、遠縁達がザステイル伯爵家に居座ろうとした。
ザステイル伯爵家には18歳の姉アデラインと8歳の私だけ。
遠縁の奴らにザステイル伯爵家の紋章印を奪われかけた。
自分達に都合良い家督相続書類を勝手に作り、紋章印を押して貴族管理院に出された。書類不備で差し戻されて発覚した。
姉上の婚約者がそいつらを追い払った。
ザステイル伯爵家のギフト継承者は父上と兄上、発表していなかったが姉上もギフト継承していた。
その時のギフト継承者は姉だけになった。
父上と兄のギフトを継承する者は幸いにもいなかった。
ギフト継承者を害した者に、そのギフトが継承する事はない。ギフト継承者の死を望む者にギフトは継承されない。
遠縁達はそれを知らなかった。
ギフト継承者がいなくなれば血縁の自分達の誰かに継承されると思ったのだろう。
姉上は婚約を解消した。私のために。
姉上は当主代理として10年、ザステイル家の仕事をしてくれた。
私が18歳になりギフトを継承すると、姉上は護衛騎士と結婚してザステイル家を出た。
護衛騎士も良い奴だった。姉上は騎士爵夫人になった。半分平民だけど。
正直、寂しかった。
ザステイル伯爵家には自分と使用人だけ。
姉上に子が産まれた。アレックスと言う男児。
姉上はほとんどザステイル家に来なくなった。
寂しかった私はよく平民の酒場に行くようになった。そこで働く女と良い中になった。
しばらくして、その女が子が出来たと言った。女に金を渡して下ろすことを承諾させた。
堕胎する医院へ女を連れて行き、医者に大金を渡した。医者に必ず堕胎する様に言った。
後日、医者は堕胎完了したと報告して来た。
女とは別れた。
ギフト継承者はむやみに婚外子を作ってはならない。
自分も反省し、縁談の中から選び、伯爵令嬢エリザベスと結婚した。
エリザベスはウィルバートを産んでくれた。
姉上はアレックスを連れてザステイル家に来てくれる様になった。
アレックスとウィルバートは従兄弟。仲良く遊んだ。
アレックスもウィルバートも成長した。
アレックスがギフトを継承した。姉夫妻をザステイル伯爵家に呼んで皆で祝った。
姉上がギフトを返上した。
次はウィルバートがギフトを継承するはず。
この頃が一番幸せだった。
この後、姉上の夫が病死。
アレックスはギフト関係の仕事を王宮依頼でこなしていた。
それが、アレックスの死の原因となる。
お家騒動に巻き込まれてアレックスは殺された。
ある貴族家の、依頼。
『解錠』されて出たモノが、身の破滅となる奴がアレックスを殺したらしい。
犯人は不明。アレックスは背後から刺されていた。
その貴族家でのアレックスの部屋が『封印』されて入れなくなった。
アレックスが身を守るために『封印』したのだろうと放置していたら、翌日、その部屋でアレックスは殺されていたそうだ。
アレックスが封印を解いた後、誰かが侵入し殺されたと考えられた。
訃報を聞いて駆けつけようとした姉上も馬車の事故で他界。
大切な大恩ある姉上の突然の死。可愛い甥のアレックスの非業の死。
悲劇だ。こんなことがあって良いものか!信じたくなかった。
現実が受け入れられないうちに葬儀が終わった。
葬儀が終わり、しばらくして『解錠』ギフトをウィルバートが継承した。
本来なら盛大な祝宴をザステイル伯爵がするはずだった。
ザステイル伯爵家嫡子のギフト継承は王国にとっても喜ばしい慶事。
喪中であるから、王家に届けを出すだけにした。
ウィルバートが急に結婚すると言い出した。女の腹に既に子もいると言う。女は下っ端ながら貴族の端くれ。
仕方なく許可する。
生まれたのは女児。がっかりした。
その後、ウィルバートと嫁ジュリアに子は出来ずじまい。
ギフト継承は男児優先。
女のギフト持ちは身内に2人ギフト継承者がいれば、結婚時にギフトを返上する。
ガルネリア王国のギフト持ちの由緒ある貴族家が幾つもギフトを失った歴史がある。
女の子しか生まれず、後継が女当主のみだった家だ。ギフト継承者が女当主のみ。
その当主が妊娠、出産時に死亡。
何故か近親にギフトが顕現しなかった。その貴族家のギフトは失われた。
この娘だけでは、由緒あるザステイル伯爵家のギフトが絶えてしまう恐れがある。
ジュリアとウィルバートは相性が悪いのだろう。
ウィルバートをせっついて離婚させようとした。
ウィルバートは拒否。
このままではザステイル伯爵家存続の危機だと繰り返し説き伏せた。
離縁しない代わりに男児を得ると言い張る。
バカなことを。
ウィルバートは子を得ようと浮名を流し始めた。
夫婦仲は悪化。当たり前だ。
嫁ジュリアには、離婚を勧めた。
離婚に強く反対するのはウィルバートの方だった。
やっとウィルバートの子供を宿した女が現れた。
早くジュリアを追い出さねばならんのに。
ウィルバートが離婚を拒んで話が進まない。
ウィルバートとケンカばかりになった。
女の腹の子が産まれた。しかも男児!
魔力鑑定ギフトを持つ知り合いに連絡を取った。
金を払い、産まれた子を鑑定してもらった。
「ダリオンの孫に間違いない。ザステイル伯爵家の特別な魔力を感じる。きっと成長したらギフトを継承するだろう」
鑑定士が言った。
そして、そいつは帰る間際にマリーアンを見て、変だな、と呟いた。
後日、魔力鑑定ギフト持ちの奴から手紙が来た。
「告げるか迷ったが、告げるべきと判断した。マリーアン嬢からは君の魔力を全く感じない。君の孫ではない」
私は激昂した。
その日、マリーアンは王城に茶会に出ていた。
ジュリアを呼んで問いただした。
「どういう事だ!このアバズレ!マリーアンはウィルバートの子ではないではないか!」
ジュリアは認めた。
その日のうちにマリーアンとジュリアをザステイル家から追い出した。
ウィルバートはジュリアに惚れている。ジュリアの不貞を告げるのは酷だ。男の矜持が傷つく。
翌日、王宮からマリーアンを王子妃にと使者が来た。驚いた。
ジュリアの実家に問い合わせたのが、追い返したと言う。
昨日、激怒してジュリアの実家に「ジュリアとマリーアンを迎え入れることは許さない。マリーアンはジュリアの不貞の子。証拠もある」と手紙を出したからな。
ジュリアもマリーアンも行方不明。それでいい。
ザステイル伯爵家の血を引かないマリーアンが王子妃など、許されざる事。白日の下に晒されたらザステイル伯爵家は終わる。
ウィルバートがローズを敵視するようになった。
トーマスが生まれても、ダメだった。
ウィルバートはザステイル伯爵家を出て戻らない。
親である私との面会すら拒絶。
ザステイル伯爵家がめちゃくちゃだ。ジュリアとマリーアンのせいだ。
由緒あるザステイル伯爵家を守るのは私しかいない。
私はトーマスにザステイル伯爵家を何としても継がせたい。
しかし、ウィルバートがマリーアンを嫡子から外すことを拒否した。忌々しいマリーアン。
マリーアンを本気で探索し始めた。
数年後に、マリーアンが見つかったと報告が来た。
王都の裏マフィア、暗殺を生業とする家に連絡をつけた。マリーアン殺害を依頼した。私の孫ではない。忌々しい娘。早く死ね。
マリーアンが死ねば、自動的にトーマスが嫡子になる。
いきなり王城に呼ばれた。
何の事がと行けば、思っても無いことの連続。
マリーアンはアレックスとジュリアの娘だと!!
大恩あるアデライン姉上の孫。2人の唯一の忘れ形見。
自分は、なんてことを依頼したのだ!!
マリーアンが、アレックスの娘。間違いなくザステイルの血を引く大切な娘!
ウィルバートもそれを知りながらジュリアと結婚したなど、知らぬ事ばかりだった。何故私に言わん!!
呆然として、呆けているうちに、全て終わった。
私はマリーアン殺害依頼の罪で幽閉された。
ラインハルト殿下が未だにマリーアンにご執心だと聞かされた。
マリーアンは不貞の末の子供。王子妃になどとんでもない、と思っていた。
貴族の娘などいくらでもいるというのに。
マリーアンより美しく爵位の高い娘もいる。
婚約の申し出など、子供の頃に一時会っただけのマリーアンなど、王子は直ぐ忘れると思っていた。
ラインハルト殿下がマリーアンを忘れず、探し出して婚約間近だなど。
ザステイル家の娘が王子妃になる誉れを、私は牢で聞いた。
お読み頂きありがとうございました。




