10 王城へはどこから入る?
よろしくお願いします。
余計にややこしくしてしまった。
「平民暮らしが長いから、お城で貴族扱いされるのは恐れ多いので、こっそりと通用口から入りたいです」
と言うマリーアン。
「なんでだ!俺んちに入るだけだ。普通の玄関からで良いじゃないか」
と言うラインハルト。
ラインハルトの言う俺んちの普通の玄関とは、ガルネリア王国王城正面入り口だ。
王都から出て5年間平民暮らしのマリーアンには敷居が高すぎる。
どデカい王城を見てマリーアンはビビったのだ。
大国ガルネリア王国の王城である。
水路(湖に浮かぶ様に見えた)にグルリと囲われ、さらに高い城壁に囲まれている。
ビシッと兵服を着て武器を身に着けた衛兵があちこちで見張りをしている。
立派な跳ね橋を渡り、重厚な城門をくぐった。
検問があったがこの馬車は顔パス(馬車パス)。
王城前広場、兵舎前を通り。
さらに奥へ行って。
王城がそびえ立っていて。
その王城に続く馬車道には登城待ちの馬車が列をなしている。
その横をラインハルトの馬車は検問無しにすり抜けていく。
「私達は並ばなくていいの?検問は無いの?」マリーアン。
「マリーアンがザステイル家にいた時、自宅に帰るのに検問を受けたか?」
ラインハルトが聞いた。
「、、、ない」
マリーアン。
そもそも自宅の規模が違い過ぎる。
「アレらは王城の外城、執務棟への順番待ちだ。私達は王族の居城、内城へ向かう」ラインハルト。
「ひいっ。大層な出迎えでお城の方々にお時間や手間を取らせるんじゃ?」マリーアン。
「それも仕事のうちだ」ラインハルト。
「自分ごときに滅相もない、申し訳ない」とマリーアンは主張。
ラインハルトに頼みこんで、通用口から入ることにしてもらった。
通用門は使用人の使う入り口である。
御用商人が日用品を納品したり、街の商店が野菜や肉などを持ってくる場所だ。
馬車は方向を変えてグルリと城壁を周り、建物を横切り、グルグル周ってやっと裏門へ。
荷馬車と商人達が賑やかに行き交っている。
使用人達も気さくにワイワイおしゃべりしている。
そこに、ラインハルトの乗る「影馬車」と呼ばれるお忍び用の貴族の馬車が停車した。
商人、使用人の楽しげなざわめき、賑わいがピタリと止まった。
「ほら、こっちのほうが変に目立つだろ?」
ラインハルト。
「もっとひっそり入れる入り口は無いんですか!」
マリーアン。
「あるにはあるが、緊急脱出用の出入り口は俺と結婚してからしか使えない」
ラインハルト。
結婚と聞いてモジモジするマリーアン。
それを見てラインハルトはクスリと笑い、
「こっそり出入りする入り口を使う時か。そうだな、マリーアンが婚約者となり俺んちに泊まってお忍びデートに出掛ける時に使おうか?」
ラインハルトが言った。
頬を染め「こ、婚約しません!」マリーアン。
「とにかく出るか」ラインハルト。
影馬車からラインハルトが出たとたん。
「殿下!?」
「殿下だ」
「頭を下げろ」
使用人らが地面に膝を付き始めた。
「やめろ。命令だ。立て。そのままで良い」ラインハルト。
使用人達は立ち上がり壁を背に硬直している。誰も動かない。
「楽にして良い。仕事の邪魔をして悪かった」
ため息をついて言うラインハルト。
「マリーアン、手を」
マリーアンがこわごわ馬車から出た。
使用人達、商人らがマリーアンに注目した。なんだか驚いている。
「お仕事のお邪魔をして申し訳ありません」マリーアン。
頭をぶんぶん横に振る人々。
「遠回りになる。オレもこちらの道はわからん。案内せよ」
リサに言うラインハルト。
「あの方が噂の」と背後でヒソヒソと声が聞こえた。
リサさんが案内してくれた。
「このあたりはそれぞれ使用人の仕事場です」
「使用人食堂です」
「使用人居住区です」
「あちらは地下倉庫です」
「こちらは地下食品貯蔵庫です」
使用人用の洗濯室やお針子さんの縫製室。廊下は狭い。
王城内には使用人専用廊下や階段もあるんだって。へー。
「ここから先は王族居住区になります」リサ。
妙に長い廊下だ。
「廊下の先で検問があります。今日の当番の人はお気の毒です」リサ。
「使用人棟から俺んちへは此処からしか入れない」
ラインハルト様。
ラインハルト様が胸元から王家の紋章入りの懐中時計を出した。
「これ、マリーアンにも渡したよな」ラインハルト。
「はい」返事をするマリーアン。
リモールド辺境伯領の職員女子寮個室の、子供の頃の思い出箱にいれてある。
ザステイル伯爵家を追い出され辺境伯領に引っ越した時にも大切に持ち出した。
辺境伯領で、マリーアンは伯爵令嬢時代の持ち物は箱に入れて物置に突っ込んだ。
それを寮に入る時に物置から出して、クローゼットの隅に置いた。
ラインハルトに貰った懐中時計や指輪、ハンカチなど、マリーアンはお気に入りの小袋に入れて、さらにお菓子の空箱に入れた。使う事はないけれども大切な思い出で、現在の生活に必要無いモノ達。
「懐中時計は城の内城への通行許可の魔法道具だ。王族だけが持っている。」ラインハルト様。
「へっ?」マリーアン。
「まさか、失くしたのか?指輪は個室への鍵にもなる。王宮宝物庫にも入れるんだ」
ラインハルトの顔が曇る。
「いいえ!あります。今は持っていないだけです」ある!寮の部屋に。
「こちらに」
リサがマリーアンに懐中時計を差し出した。
「なんで?コレ今ココにあるの?」
不思議顔のマリーアン。
「お部屋でのボヤがありましたから。マリーアン様の部屋に賊が入れると判断しました。子供の頃ラインハルト様がマリーアン様にこちらをお渡ししたお話しは有名です。賊の手に落ちれば危険ですので先日回収しました。責任を持ってお預かりしております。今回、王宮へ参りますので懐中時計のみお持ちしました」リサ。
「そ、そうなの」マリーアン。
検問近くに到達。
3人がいる辺りは急にすりガラスみたいな曇った空間になった。閉じ込められた!
急に武器類がキラキラ光る。
「武器や薬品を持つものはここで捕らえられます。」
そう言うリサは髪の中、背中、胸、手首に腰辺り内腿、踵など、全身キラッキラ。まふしいよ!どんだけ武器まみれなの!?
ラインハルト様も腰の剣や懐などが光る。
「う、動くな!武器を外せ!それだけ武装して、よくも堂々と来やがったな!」
検問係さんがすごい焦ってる。
私達は賊と間違われた。
ラインハルト様が懐中時計を開いた。
曇りが一瞬で無くなった。消えた。魔道具の力?
怒鳴ったらしき検問係さんは後ろから殴られて気絶、引きずられて居なくなりました。
「申し訳ございません!」
検問兵達が平謝りする。
「いや、俺達が悪い。しっかり城を守ってくれているな。感謝する」ラインハルト様。
「ゴメンナサイゴメンナサイ!私が正面玄関を怖かったばかりに!さっきの検問係さんはお仕事しただけですから、怒らないで下さいー!」マリーアン。
懐中時計の事をリサに聞きたかったマリーアン。恥ずかしい子供の頃の日記とかは?見ちゃってる?と気になったけれど。
検問の騒ぎで忘れた。
お読み頂きありがとうございました。




