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◇001/先を見通そうとする者 4/4


──『この小屋を拠点にしよう。屋根が斜めになっている。上手く呪符で発破を掛けられたら、屋根に積もった雪でユーディアルライトとシンハラさんを分断出来るかもしれない。遠隔操作の札を使おう。屋根には起爆の札を仕込み、アイゼンには起動の札を渡す』


 居酒屋で、遠隔操作が出来る2枚1組の爆破の呪符をリアンから見せられていた。自分が使う事により威力は格段に落ちるが、求めていた効果には充分だった。


『南エリア8中層狙撃より通達!敵1名、被弾確認!』

『補正より、想定通り続行』


 アイゼンのヘッドセットからリアンと補正指示に就いている黒曜の声が聞こえた。ここからは見えないが、すぐ側での遊撃2班班長撃破を告げていた。


──『他の班員を排除していけば、いずれシンハラとユーディがアイゼンの元へと来る。ユーディ主体で来るだろうから、最後にシンハラを落とせば…』


「さぁユーディ。以前は共闘だったが今日は違う。サシでの勝負だ」


──『最後にシンハラを落とせば1対1になれる』


 潜伏出来ない限られた空間、重装備をしない遊撃班。相手は自分よりもかなり小柄な遊撃班員。戦場において軍人同士であれば互いに手加減などしない。例えそれが男女であってでもだ。


 アイゼンのハンドガンがユーディアルライトに向けて発砲されるが、それは命中しない。慣れないガンにアイゼンは苛立ちを感じる。反面、ユーディアルライトは遊撃故にハンドガンに慣れていた。ユーディアルライトのハンドガンがアイゼンに向けられる。


──ちっ!めんどくせぇ!


 アイゼンは持っていたガンを左手で持ち変えると、ユーディアルライトのガンに向けて投げ付ける。刹那、ユーディアルライトのガンが発砲したが、投げ付けられたガンのせいで弾き飛ばされ、軌道がずれた。ペイント弾は床に着弾した。

 カラカラ、と2丁のガンが床を滑る。それはもう2人の手の届かない場所に居る。ガタン、と派手な音が響く。アイゼンはバリケードを踏み台に飛び越え、模擬ナイフを片手にユーディアルライトの懐へと潜り込んだ。ユーディアルライトの予備ハンドガンは間に合わない。


 派手な蛍光色が辺りに散らばる。ユーディアルライトの胸部に取り付けられたペイントパックから蛍光塗料が飛び散った。ユーディアルライトの胸部とアイゼンの頭部、床が派手に染まった。


「…拠点より通達、敵1名、撃破」


 ヘッドセットにアイゼンが声を零した。直後、演習施設に演習終了を告げるサイレンと、第6小隊員の歓声が響いた。


「…何で?」


 ユーディアルライトは疑問を口にしながら床に転がっている2丁のガンを拾うと、自分の物はホルスターに仕舞いもう1丁をアイゼンに突き付けた。


「アイゼン!何であんた、髪色が違うんだよ!」

「あぁ、これ?ウィッグ。ウチの隊長殿が被っとけって寄越して来た」


────────────────────


演習終了から2時間。彼等は撤収作業に追われた。ペイント弾は水性塗料。この雪であればそのまま流れてくれる。散らけた空弾倉等を回収し、蛍光塗料が付いた軍服を脱ぎ着替え、荷物を纏めた。

第6小隊のメンバーが皆集まった所で隊員ひとりひとりに温かい缶コーヒーを配り、リアンは口を開いた。


「第6小隊総員に、今日は本当にお疲れ様でした。お陰で6隊に勝利判定が出ました。ありがとうございます。…ただ僕は皆に謝罪をしなくてはなりません。僕が小隊長の立場故、今回の演習に関して言えない部分がありました」


リアンはアイゼンの方を向く。


「何故今回、主たる指揮官が僕ではなくアイゼンだったのか。今回のこの演習、選定推薦査定だったからです。対象はアイゼンと遊撃2班の1人。勝利判定に登録指揮官撃破が入っていたから、僕が出張ってはいけないと判断したのです」


リアンが掌を下に向けて2~3回振った。座ろうよ、と言いたいらしい。


「申し訳ないと思いましたが、私情を挟みました。僕が6隊に来る前の話です。アイゼンと一緒に選定推薦査定が入る事になった時、僕はその権利をアイゼンから譲って貰いました。今回の査定では、アイゼンに何としても権利をもぎ取って貰いたかったです。しかもアイゼンの実力で。だからアイゼンを登録指揮官にして、遊撃2班の登録指揮官を深部まで来させました」


皆の顔をゆっくりと見回す。隠し事を怒っている様子はない。


「僕の私情だらけの作戦内容に、付き合ってくれてありがとうございます。そして言えない事だらけで本当に申し訳ありませんでした」


リアンの謝罪の言葉を待ってから、全員で缶コーヒーを掲げた。


「生きている事に乾杯!」


──僕達6隊は明日を生きる為に、今日を生き抜く為に駆けるんだ。


───────────────────────


 後日、軍中央地区管轄司令部にリアンとアイゼンが呼ばれた。選考が無事に通り、アイゼンの昇格が決まった。第6小隊において、リアンだけがレッドの立場だった。あとはブルーが数人とグリーン。30人居て、1人だけ肩章のカラーリングがレッドだった。今回、アイゼンの昇格によって、リアンとアイゼンの地位は同格になり、同時に肩章も揃いになった。

 黒いシャツにアイゼンが袖を通す。これまでブルーだった襟のラインがレッドになった。黒いネクタイも、ブルー3本のラインからレッド1本のラインに変わった。当然、藍色の通常軍服の肩章もブルー3本からレッド1本となった。


「やっぱり好きじゃない」

「いつか慣れるさ。…とは言え、アイゼンは結局いつもの活動用軍服になるんでしょ。通常軍服にも慣れなよ」


「嫌だ。あれ、楽じゃない。…そう言えば次の任務、また小競り合いの制圧だって?」

「嫌になっちゃうよ。もう少し平和な仕事をしたいのに」

「それでもコーネリア隊長が居れば犠牲は減らせるだろ?」

「そうありたいけれど、僕だけじゃ無理だよ」

「これからはさ、俺もお前と同じ様に負荷を背負える。…昇格も悪くねぇな。それにうちには黒曜もいるし。どうとでもなる」

「そうだね。…アイゼン、今日はこれ以上仕事はないし、着替えて飲みに行くか?」

「良いねぇ!グラスを傾けて…」


「生きている事に乾杯」


 彼等は軍人。緋に染まらない仕事は少ない。『生きている事に乾杯』、その言葉をまた言う為に彼等は戦場で理想を目指す。


───────────────────────

2019/11/07/001 2021/04/19/加筆修正

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