表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【注意・魔神詐欺!!】 魔界に転移した女医の私、何故か魔神だと勘違いされたので、魔神を騙って魔界統一を目指します  作者: 清水さささ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/13

魔界の盟約

 この魔界という異世界では……


 ウサギの獣人はバニーガールで

 ダークエルフは忍者だった。



 ダークエルフの少女、アズミの招待で入った樹木の町は耳の尖った忍者が行き交う異様な光景だった。


「ここがダークエルフの隠れ村……」


 ……エルフ村もだけど、忍者の里も焼かれるのって定番だよね。


 私は既にアトラに森焼きの時間を告げてきた。ダークエルフとの接触前の事だったから、もし私が誘拐された時の一手だと思い、明日の朝を指定しておいたが……


 小柄な少女忍者、アズミは、私の前で息を巻いている。


「木の精ちゃん達の葉っぱの服はね、本人の木の葉で出来ていて、同じ服の木の精はいないんだよ……」


「なるほど、みんな可愛い服着てたもんねっ!」


 アズミは首を縦に何度も振った。


 木の精(妖精)オタクのアズミと親睦を深めて開いたエルフ村の鍵だが、下手を打てば森焼きが実行され、アズミの村も優しい妖精達も、自分の出した命令で燃やされてしまう。


 ……極力早めに村長と会談せねば。


「こ……こっちだよ!」


 アズミが私の袖を引っ張り、家に案内しようとしてる様子だった。妖精名簿を作る……その提案を進めないと、ここで機嫌を損ねられて追い出されては、元も子も無い。私はひとまずアズミについて行くことにした。


「ゆくぞ、ノエル」

「はいはーい!」


 すると、一人の忍者……もといダークエルフの男が通りかかり、ノエルを見るなり絡んできた。


「あれぇ、その子って、アズミちゃんちの新しいバビット? へぇ、可愛い子だねえ」


 ……そういやバビットは共同体が無くて出稼ぎしてるって話だったな、ダークエルフ村も雇い主の一つという訳か。


 すぐさまノエルが答える。

「はーい! さっきアズミちゃんのお友達になった、ノエルって言いますっ!」


 するとアズミはノエルを見上げた。


「え……誰?」

「ええっ!? ちょっ!! 私ずっと居たでしょアズミちゃん!?」


 そういえばアズミはここまでノエルの存在を気にも止めていなかった。勢いで私を案内したら、たまたまそこに居て付いてきちゃった何か。くらいの反応を見せる。


 ダークエルフの男はそのよく鍛えられた肉体で、爽やかな顔のまま腕を組んだ。


「ははは、バビットってすぐ嘘つくからね、その子タグ付いてないじゃん、アズミちゃんが飼うの?」


「飼わない……」


「だったらウチで飼おうか? ウチは元々多頭飼いだし一匹くらい増えても大丈夫だけど」



 ……会話が怪しくなってきた。この男はノエル……というか、バビット族の事を本当にただペットのウサギを飼う飼わないの次元で会話をしている。


 その会話にノエルが黙っていられなかった。


「バビット飼うって何? ふざけてんの?」


 男は悪びれもなく頭をかいた。


「ああっ! そっか野良子かソレ! じゃあ俺が貰うよ、その子めっちゃ可愛いじゃん!」



 ……これは面倒になってきた。


 私は前に出て、ノエルの胸の下に手を当て、後ろに押しさげた。ノエルの怒りと困惑に歪んだ表情を、私はキツく睨みつけた『これ以上喋るな』のアイコンタクトのつもりで視線を送った。


 ……彼女にそれが伝わったかは分からない。ただ、ここからは正直一つで計画が崩壊する。ノエルの衝動が私にとって最大の地雷となりえた。


「すまない、エルフの方……私と、このバビットには既に主人が居るんです」


「えっ、そうだったんですか?」


 男は不意を突かれたような顔をしていたが、ノエルはそれ以上に動揺していた。当然だろう、魔軍のボスに、さらに主人が居ると聞こえたハズだ。


「はい、私達は十区に設立された新軍事国家、ササーガ魔軍に仕えている者です。私は響子、バビットはノエルと言います。失礼ですが、あなたのお名前をお伺いしても?」


「新国家とはまあ……外では色々あるのですね。エルフは森からは出ませんからね。私は村長の息子で、リョウマと言います」


 ……また日本人じゃん。でもちょうど村長の息子とはは都合が良い。このまま村長と会談まで行ければ早い。


 だがその時、アズミが再び私の裾を引っ張った。

「ねえ、木の精の名前、書きに行かないの?」


「ああ、ごめんねアズミ。このノエルは私にとって木の精くらい大事な人だから、それについて、ちょっと話を……」


「ねえ、木の精の名前、書きに行かないの?」


 アズミは同じ事を繰り返した。既に会話を拒否し始め、意志の押し付けに入っている。私は半にやけながら、アズミの顔へと視線を落とした。アズミは微笑みながらも、目から光を失っていた。


 ……まずいコイツ、ヤンデレ化するタイプか!?


 今の状況でエルフの男、リョウマは明確に敵だ。しかしエルフ村との唯一の接点であるアズミを、更に敵に回すのは、この交渉の即時修了を意味している。


 ……繋がなくてはいけない。


「うん、名簿作りに行こうね! だからちょっとリョウマさんに話をつけて……」


「うん! 大丈夫だよ、本は沢山あるから……」



 ……ダメだ、名簿作りに行こうね! の都合のいい所以降一切聞いちゃいない。お前サイコ女の素質あるぞアズミ……!


 そこにノエルが口を開いた。

「アズミちゃん! お家からさ、本持ってきてさ、一緒にやろうよ! 私が一緒に取りに行くからさっ!」


 私はその瞬間、ノエルと目が合って、目を見開いて口を結んだ。精一杯のナイスサインを送ったつもりだった。


 ……ナイスだノエル。機転を効かせたな。アズミ抜きでリョウマとの交渉、これは私が最も欲しかった一手だ。


 しかし……アズミはしゃがみこんだ私の膝に腕を回し、頬を擦り付けてきた。


「私ね……響子さんと本を書くの」


 アズミの目はとろんとしていて光はなく、染まった頬に歪んだ口角。


 ……こいつ、ヤンデレ化が既に成熟してやがる!!



 すると、次はリョウマから一言が放たれた。


「ははは、アズミちゃんがこんなに仲良くしたがるなんて珍しい、分かりました、響子さんとノエルちゃんは客人だと言うことで、村長には伝えておきますよ」



 ……ダメだ! それではダメ……! アトラが動く前に、今夜中に交渉しなくてはいけない。呑気に妖精の名前を書いてる暇など無い……!!


 ……仕方ない、最後の一手を使うしかあるまい。



 私はノエルに視線を合わせ、キツくキツく睨みつけ。震えるほどに拳を握って見せた。ノエルは唾を飲んであごを引いた。


 私はアズミの背中に手を回し、抱きしめる形をとった、そして腕を、肩を、声を震わせて言った。



「ササーガ魔軍の首領……魔神ササーガは……森焼きをしようとしているんです! 既に森の入口の丘には邪眼族のナガンを筆頭とした、800の兵が待機しているのです」


 ……最後の一手、自作自演だ。


 その火力高めのカミングアウトを前に、速攻でノエルの制御が途切れた。


「そ、それ言っちゃって良いんですか!?」


 ……これはおそらくノエルの素の反応。


 リョウマは冗談でも言われたような反応を見せる。

「森焼き? そんな事する奴、この魔界にいるわけないじゃないですか……」


 私はその隙に顔をあげ、ノエルを再びキツく睨んだ。しゃべるな、それだけでいい。



「いいえ、魔神様は本気です、私も抗議しました、森には多くの命と、妖精がいますと……」


 アズミに目を合わせる。その眉が歪んでいた。


「しかし魔神様は残酷で、エルフとの交渉が決裂するようなら、朝には火を放つとおっしゃいました……森も木の精も全て焼き尽くすと……そう言って私を送り出しました。私は木の精が好きです、森の命も護りたい、この村のことも救いたい」


 ……その指示を出したのは私だ。魔神様も私。だが支配区域を広げねば説明が立たず、いずれはナガンが私の首をはねるだろう。


 この魔界で私の命を狙った者たちを思い出す。アトラのオッサン部分の唾液を思い出し、コボルトの群れに囲まれた事を思い出し、毎日寝る時に真下の小屋の中で壁を叩くディグラスの触手の音を思い出し、首に突きつけられたナガンの刀剣を思い出した。


 すると、自然と涙が流れ出てきた。積み重ねた恐怖の涙だ。


 そしてリョウマの顔を見て、伝う涙の脇で細く口を開いた。


「魔神ササーガからの伝言があるのです、この森を救わせてください……村長様との謁見を許して頂けませんか……?」


 リョウマの顔がこわばり、額に汗が伝っているのが見えた。あともう一押し……


 そこにノエルが勢いよく土下座をして加勢した。


「お願いしますっ! 私もバビット族の住まうこの森を護りたいんですっ!!」


 ……しっかり合わせてきた! それでいいっ!


 リョウマは声を震わし、答えた。

「本当に本気なんですね……分かりました、村長への取り次ぎは……」


 リョウマの発言の途中だった、私の腕の中、一瞬でアズミの感情が爆発した。


「ササーガ!? 魔神が森を焼く!? 殺す! 殺す! 魔神を殺す!!」


 アズミはその忍者服の裾からダガーナイフを取り出して顔の前に構えた。唇が震え、瞳孔が開き、瞳の中の暗黒が渦を撒き、小柄な容姿に似つかわしくない程のぶ厚い殺意が、背中から空気を歪ませていた。


 そして即座に土から木の根が飛び出して来てアズミを包み込むと、私を弾き飛ばしてアズミの身体は地面に潜って行った。


 ……アズミのやつ、ササーガを殺しに行った!? と言っても、私はここに居るので軍に突っ込んでも意味は無いのだが、その殺意と行動力がヤバい。


 それに対し、リョウマはその場で地面に拳を叩きつけ、地面の中から木の根と共にアズミを引きずり出して抱きかかえた。


「いやああああ!! 離して! 殺す! 魔神死すべし! 殺す!」


 発狂するアズミを精一杯に抱え込むリョウマ。


「ダメだ! 相手は邪眼族を従えているんだぞ! 死にに行くようなもんだ!!」


 ……邪眼族ブランド、強いな。


 リョウマは暴れるアズミを抑えながらも、提案を受け入れた。


「分かった! 村長との謁見を許可する、俺はアズミを落ち着かせてから行くから、先に行ってくれ!!」


 リョウマがそういうと、私達の背後、村に入ってきた通路が消えており、目の前に巨大な木がうねりながら生えていて、その中央の空洞から、中に入れるようになっていた。


「これが村長の家……」




 そのまま意を決してノエルと共に空洞をくぐると、そこは木の中とは思えない程広い、和風の豪邸であった。長い廊下の左右にメイド服の女性が立ち並び、礼節あるお辞儀をし、全員が同時に挨拶を唱和した。


「いらっしゃいませ、お客様」


 下げる頭、その頭頂部にはウサギ耳。全員が同時に揃って顔を上げると、全員がバニーガールベースのメイド服であった。ノエルと同じバビット族だ。


 ……伝説のバニーガール村はここにあった!? しかもメイドオプション付き!?



 立ち止まって圧倒されていると、ノエルがその光景に言葉を投げかけていた。


「あ……貴方達……こんな姿にさせられてしまって……」


 ノエルは泣いていた。そしてメイド服のバビット族達も悔しそうに下を向いていた。私視点、普通に可愛いメイドバニーだし、バニーガール特有の衣装の際どさはあるが、ノエルもバニーガールに燕尾服を羽織ってるだけで、相当に際どい。恥らいの違いが全く分からなかった。


「ダメだ……こんなの見てられない……っ!」

 ノエルは目を閉じ、下を向いて廊下を進んで行った。


「いやぁ、みんなピチピチで可愛いねぇ」

 私は遠慮なくジロジロ見ながら進んで行った。


 奥の間に入ると、広い道場のようになっていて、奥側の一段あがった座敷の上に、老齢の忍者が正座していた。褐色の尖り耳に白髪の渋い顔。わかりやすい。ダークエルフの村長だ。


 村長は私たちを見るなり、声をかけてきた。


「話は全て聞かせて頂きました。私が村長のジュウゾウです」


 ……またも名前が安定の忍者村


 その手元には盆栽が置かれており、盆栽の木の股の間から、アズミを落ち着かせようとするリョウマの奮闘する姿が見えた。


 ……こいつら、木を通した空間操作ならなんでも有りか。このスケベ盆栽カメラで全て丸見えという訳ね……便利だ。


 私は村長との距離を歩いて詰めながら喋り始めた。



「ジュウゾウ様、聞いて頂いていたならば話が早いです、どこから話せば良いでしょうか?」


 ジュウゾウはアゴに手を添え、目尻にシワの寄った顔で下から睨むようにして、こちらを見据えた。


「森焼きを止める為の示談の条件からだ」


「ならば魔神ササーガ様からの条件を、読み上げるだけで良いでしょうか?」

「うむ、それでひとまず判断させてもらおう」


 大広間で声だけが響く、静かなやり取りだった。ノエルは斜め後ろから息を飲んで見守っており、開けっ放しにしてきた部屋の入口の向こうからは、起立姿勢のメイドバニーちゃん達の視線もチラチラと感じる。


 私はジュウゾウの目を見て、ゆっくりと口を動かした。


「魔神様の森焼き中止の条件は、エルフ村と魔軍における、種族と物の自由交流化です」



「なるほど、我々ダークエルフは長きに渡り、森の中で独自に過ごして来た。その解放が第一条件という訳だな」


「おっしゃる通りです」

「……で、次は?」


「以上です」


 その一言に、ジュウゾウは肩を落とし、更にえぐるような角度から私の顔をにらみつけた。


「以上だと……? それだけと言うことは無いだろう、我々を侵略しようという輩が、献上も支配も提示しないなど、あるはずが無い」


「いや、以上の一件のみです、それが飲めなければ日の出とともに、森に炎を走らせるとのことです」



 ジュウゾウはしばらく私の目だけを見て、押し黙り、奇妙な沈黙が流れた。そしてジュウゾウが重く口を開く。


「却下だ、自由交流と言うことは、コボルトがなだれ込む事が出来る。この村に入ってしまえば後は同じだ、殺戮と略奪が始まる。それならば我らは森の端にて最後の抵抗を行う」


 ……なるほど、食えないなダークエルフ。



 私は目を見開いて口を小さく開いた。呆気に取られた表情を作ってジュウゾウを見つめた。


「おお、本当に断られるとは、ダークエルフの先見の明、確かなものですね」


「本当にとはどう言う意味だ」


「いえ、魔神様が条件を私に伝える際に、追加でおっしゃっていた事がありまして、条件はそのまま飲むなら良し、魔軍からの侵入を懸念するようであれば、こちらから入るのは響子とノエルの二人まで条件を下げて構わない。という話でしたので……」


 ……これは完全な後出しジャンケンだ。しかしバレない範囲ならば、魔神の先読みだった事になる。


 ジュウゾウは再び沈黙、更に肩を落として、抉り込むような角度で私の顔を観察して考察している。そこにノエルが便乗発言が空気を開く。


「魔神様は確かにそう言ってましたねぇ」


 ……良い。いい便乗だぞノエル。


 私はこの息継ぎに乗り、次の攻撃へ出る。


「侵略者が提示する条件として安すぎるという懸念はごもっともです、しかし魔神様の目的は搾取ではなく、特産物の交易にあります、魔神様はダークエルフの技術力を欲しており、エルフには十区の鉄鋼製品や燃料資源を与える、平等な交易がしたいとおっしゃっていました。」


 ジュウゾウの顔はまだ固く、口を尖らせている。私は発言を続ける。


「逆に言えば平等な交易さえ成立すれば、エルフは自ら我らの製品を欲しがるようになるだろう。ともおっしゃっていました。その利便すら理解できないなら遠慮は無い、興味も無いから滅ぼせと……」


 ジュウゾウの顔に、小さく汗が浮いているのが見えた。そして重く引きずるように切り出す



「我らには、外との交流を断つことで守り抜いた……歴史がある」


……なるほど、鎖国村らしい頭の固さだ。


 私は道場の床に膝をついた。継ぎ目が無く、樹皮があり、うねる木を魔術で引き伸ばした、生きた木で作られた床だ。そこに両手の平を当てて、頭を下げて床の木の香りを嗅いだ。


「この森を……護らせてください、私は森焼きを止めたい、争っても魔軍は邪眼族が率いる800の軍、負ければどの道森は焼かれます……妖精が生き、アズミが愛したこの森を、私は護りたいのです」


 ノエルも便乗し、私の隣に来て土下座の姿勢を取った。


「お願いしますっ!!」


 ジュウゾウはただ、しかめた顔で唸るのみであった。


 その時、ジュウゾウの背中側の木の壁がうねり、穴が開いた。その穴からは見知らぬダークエルフの少年の顔が覗いていた。少年は切り出す。


「話は聞かせて貰いました。村長様、僕は森の外の世界を見てみたいと思ってたんです、金属と黒い海に覆われた十区、見てみたいと思ってたんですっ!」


 すると、それを皮切りに、次々と壁に穴が開き、様々な顔の褐色忍者達が顔を表した。


「話は聞かせてもらった。村長様、邪眼族の軍と森焼きが本気なのであれば、我らに助かる術などありませぬ」


「話を聞きました。村長様、私の包丁の切れ味が落ちて料理に苦労しております、コボルト製の包丁だけでも仕入れるのって出来ないですか」


「話を聞かせて貰ったよ! 燃料って水を湧かす事も出来るんですか!? 森では木材を燃料にするのは禁忌なので、不便なんですよねっ!」


 ……全国配信グループ通話かよ。しかし、コレは確実に良い流れだ。ここまで来たら落とすのは村長ではない……民意だ。


「コボルト製の刃物はよく切れますし、鉄鍋も便利ですからねぇ、魔力塵燃料も便利です、木材を燃やすことなく安定した火力と、使用者が消えろと念じるだけで火が消える安全性。生活水準は確実に向上することでしょう。」


 ……堕ちろ、生物は便利と安定に抗えない。私が快適に、命を狙われずに済む世界の為の礎となれ!


「村長様!」 「村長様!」 「村長様ぁー!」



 村長ジュウゾウは汗を溜めながら、重く頭をあげた。


「分かりました。条件をのみましょう。響子、ノエルの二人の村への出入りを自由とし、物の行き来の自由化で条件をのみます。」


 ……勝った。



「村長様、条件が違います、元条件が村と魔軍の種族と物の自由交流化です。そのうち魔軍から通行許可を得たのは私とノエルのみ。それが魔神様の森焼き中止における最大の譲歩です。」


「あ……ああ、その条件で構わない。この盆栽をそなたに託す。」


 ジュウゾウは手元の盆栽を手前に差し出した。


「これと村とを繋ぐ術を常にかけておきます。言ってくだされば、こちらへ入る為の入口として開きます」


 盆栽の根が高く伸びて、向こう側に森の入口の丘を眺める景色が映し出された。ナガンとアトラが森を見守っているが、こちらに気づいてる様子は無い。


 ……私設ワープゲートじゃん! エルフすげぇな!!


「素晴らしい、では交渉は成立、まずは森焼きの中止を伝えて参ります」


「ああ、よろしく頼む」


 ……これでエルフ村は、完全攻略だ。


 私は盆栽を手に取り、ノエルの元まで下がった。入口の外には、相変わらず視線を送り続けるメイドバニーガール達……


 私はそれに軽い声で声をかけた。


「そこのバニーちゃん達、村から出る種族は自由になったから、村を出たいなら着いておいで?」


 それを聞いてノエルが目を輝かせた。


「おーう! みんな行こうよっ! 十区は着る服も自由だし、お風呂は暖かいよーっ!!」


 その呼び掛けで廊下のバビット達の薄暗かった目に光が戻り、わらわらと近寄ってきた。


 ……なるほど、バビットって同じ衣装着せられるのが嫌なんだ。


 その光景を見て、村長は唖然としていた。私はそれを横目に見透かす。


 ……甘い条件には罠がある。村長よ、その警戒心は見事だったが、全国配信とか言う行き過ぎた警戒システムが仇となったな。


 ……フフフ、バニーガール村は貰っていくぞ。



 魔軍内訳

 ササーガ:人間、食料

 アトラ:魔神の右腕、象の体躯とゴキブリの速度

 ノエル:魔神の耳、経理、嘘つき、ギャンブラー

 コボルト軍:工作兵、工具の腕、1400人

 ディグラス:制御不能、無限の食欲

 バビット:バニーガールちゃん達、10名


 ナガン:剣の達人、戦闘狂

 ダークエルフ:自由交流、木の魔術使い忍者

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ