魔界の処世術
ここは食人魔物アトラの巣。
その洞窟の奥に進むと、アトラの生活感を表す光景が見えてきた。
それは白骨死体。
一人、二人では無い。無数に転がっていた。
「魔物アトラは、最後に人間食ったのは 50年前とか言ってたな、骨付きフライドチキンを食い散らかしてた程度の感覚か。」
洞窟の最深部までは列車四両分くらいの距離だった。
歩きながら黒い油のような毒である『魔力塵』に染まった白衣を脱ぎ落す。次にインナー、いわゆる縦セーターを頭から脱いでバシャリと落とす。タイトスカートのホックを外し、歩きながら滑り落とす。
全ての衣類に魔力塵がグッショリ染み込んでおり、脱いだだけでも、だいぶ体が軽くなった。
「ああ、皮膚が……皮膚が呼吸をしている……」
次にブラとショーツ。こちらも魔力塵が染みており、一度脱いだらもう身につけたくはなかった。脱いで白骨死体の頭に向かってパシャリと投げ捨てる。
「ご冥福をお祈りいたします。」
最深部には白骨の山があった。私は医大従事者だ、別に死体を見ても特別な感情はない。最深部で食われた人間は、先に丁寧に衣服を剥がれたようだった。白骨コーナーと、衣服コーナーがキッチリ分けられている。
「フリーマーケット状態だな。着るものには困らなそうだ。」
そして最深部には魔物の言う通り、湧き水が小さな泉を作っていた。迷わず泉の中へと体を沈める。
「冷たっ! でも……これは気持ちいいなあ!」
腰までの長髪が水に浸かると、染み込んでいた魔力塵が、水に撒いた石油のように虹色の油膜を作って浮かび、流れていく。体をこすって洗い、全身の魔力塵を洗い落とした。
「いやー、さっぱりした、気持ちいいね。これでお湯だったら最高なんだけども」
水から上がると遺品コーナーで着る服を探す。
流石に50年以上前の遺品、絹製のものなどは流石に手に取ると破けるような状態。まるで使い物にならなかったが、その中にひときわ丈夫な、白いローブが混じっていた。
「おお、良いな、これを洗って使おう。」
泉でローブを洗おうと持ち上げると、中から手帳が落ちてきた。異世界感を感じさせない、市販のスケージュール帳のようなその手帳。手に取って表紙を確認すると。それは思いきり現世の製品だった。
【2067 my Schedule】
「2067年、マイスケージュール……未来人かよ。つまり、私のように転移してきた未来人が、50年以上前に食われたって事か」
中身を確認すると、そこには日本語が書かれていた。内容はまず、食える生物、危険生物等の情報に始まる。上手くはないがイラスト付きで分かりやすく書いてあった。
「おお、これは助かるやつだ、幸運かも知れないぞ」
後半に行くと魔術に関するページが始まった。
・魔術を使うには魔力塊を経口摂取。
・魔力塊は人間が食べると死。
その一文に、私は頭を抱え始めていた。
「人間様は魔術使えないのかよ……」
・魔物が魔術を使うと魔力塵を生成。
・魔力塵を燃やすことで少量の魔力を生成。
・魔力に包まれている時、魔術が使える。
「おお! 人間様用の魔術もあるじゃん!! なるほど、これを使えば生き延びの道も広がるかも!」
使用可能な魔術
【ブレイブハート】
心が弱った時に、元気になる。
【リラクゼーション】
お花畑が見えて落ち着く。
【アクレーム】
皆で拍手を送って称える事が出来る。
……以上。
「精神科医かよ!! 鬱病業界で無双できそうですけども!?」
そんな手帳を読みながらローブを洗っていると、洞窟の外の方から声が聞こえてきた。
「魔神様!! 魔神教皇・ササーガ様ー!!」
アトラの声だった、声はただ呼んでいるというよりは鬼気迫る感じで、何か異常事態が起きているというのが容易に想像できた。
「アトラが危機と言う事は、まずく無いか? 他の魔物などが来ていたとして、魔神ブランドが通るかも分からない。」
ひとまず白いローブを濡れたまま身にまとい、出口へと向かう。
そしてふと気づく
「これ漆黒のローブじゃないじゃん!!」
アトラが私を魔神と認識するのは、黒い白衣が漆黒のローブに見えたからだ。魔神のアイデンティティを失う訳にはいかない。これは奥へ歩いてくる途中で脱ぎ捨てた衣服を使うしかない。
まずは…頭蓋骨に投げつけたショーツ。手に取るとショーツの魔力塵が硬化し、頭蓋骨と一体化していた。
「えっ、なにこれ、取れないけど!!」
しかも硬化していてバリバリ。とても肌着として使える状態ではない。
次にスカートとセーター。これらも完全に硬化していた。スカートは脱いだ形が良くてドーナツ型。伸ばしきる事は出来ないがバリバリと開いて、ローブの上からベルト代わりに巻いた。
セーターは最悪だった。もはやただの泥団子。カチカチになっており、開くことすら出来なかった。
「毛糸の繊維に染み込んで硬化するとこうなるのか……」
白衣は寝かせるように脱いでおり、一番形よく硬化していた。白ローブの袖を掴み、黒い白衣の袖を押し広げる。濡れた白ローブを包み込むように、白衣を着こみ正面のボタンだけひっかけた。まるで白いローブを鉄板と、ギザギザのスカートで包んだような不格好。
「濡れた上に硬いし汚い……不快だが、今は仕方ないか……」
洞窟の出口まで駆けていくと、洞窟の前にアトラの背中が見えた。アトラの背中と言うよりは、魚類の顔とオッサンの尻尾。
そして、アトラが向いてる方向には崖があり、崖の上を埋め尽くすように、人の影があった。数にして百か二百かの大軍。
「人間!?」
その一言にアトラの上半身が振り向いた。
「魔神様! コボルトの群れが攻めてきました!!」
「コボルト……?」
目を凝らしてみると、人影達は全員子供ほどの体格で、カブトムシの餌のような色の皮膚をしている。それでいて長い牙を生やし、それぞれ頭に人のドクロやら骨飾りを身に着けて、蠢いている。
「ああ、完全に人類の敵だわ、あれは……」
私は手に持っていたドクロ付きのショーツを頭から被った。いわゆる、パンツ被りと言うやつだが、ショーツに張り付いたドクロが逆立ちで頭に張り付き、コボルトさん達とおそろいかな、なんて、親近感の演出を……
「人骨だぁ―!! やはりこの穴、隠し人骨があるぞ!!」
「うぉおおお!!」 「人骨穴だー!」 「ギギャー!!」
コボルトの群れとやらが、私の頭部のドクロを見てはしゃぎ始めた。私は再び頭を抱えた。
「隠し人骨ってなんだよ、人骨って財宝なの……?」
アトラもそれに気づいて私の顔を見た。
「ササーガ様……! そのお姿、なんと美しい」
……こいつらの美的センスの終了具合には察しはついた。私は一歩前へと出て声をはりあげた。
「コボルト共よ! 我は魔神! その中でも上位種となる教皇!! この洞窟の人骨は全て我のものである!! 早々に去れい!!」
コボルト達は騒めいた。互いの顔を見ながらヒソヒソと相談している。
「魔神?」 「どこの種族だ?」 「知らね。」 「てか人間じゃね?」
……これはまずいかも、知れない。魔神ブランド無効の上に、私の体の中にも人骨がある。人間だバレたらバラされる。
すると、コボルトの群れの中から、ひときわ顔の長い奴が前に出た。周りのやつよりつけてる骨の数が多い。賢そうにアゴに手を当てている。
「馬鹿どもが、ここは廃棄区画である十区だぜ。そんな所に居るやつが大した奴の訳ないだろお!!」
……よくいる舐めプするポジション……!! だが安易な判断こそ、今の私にとっては最も都合が悪い。
アトラの魚部分の六つの目が一斉に私を見て、ホラー映画の呪いの声のような音で話かけてきた。
「……コボルト……コウカツ……スバヤイ……
カクウエ……アトラ……マモル……デキナイ」
コボルトと言うのは格上の魔物で、素早く、アトラは守り切る自信は無い。そういう事だろう。まず過ぎる、詰んでるとしか言いようがない。
私はアトラを見据えた。
「愚か者が、それで我が右腕が務まると思うか。」
私は洞窟で手に入れたスケジュール帳を開いた。
それは魔術の説明があるページ。
・魔力塵を燃やすことで少量の魔力を生成。
そこに添えられた下手くそなイラスト。イラストは下手だが、伝えたい事はハッキリしていた。針のような形の物で針のような物を叩き、火花が出て、炎が描かれている。
私は洞窟脇に生えていた細い金属柱をへし折った。その金属片で金属を叩く。イラスト通りに火花が散った。それを見て、すかさず魔力塵の染み込んだセーターに対して火花を散らす。
セーターは一瞬で燃え上がり、火球となった。
……手帳の説明通りだ!! これでなにか……!!
考えていると、それを見たコボルト達が騒めきだした。
「ファイアボールだ!!」 「上級魔術!?」 「なんだあいつ!!」
「あっつ……」
私は燃えるセーターを投げ捨てた。その火の玉からは、炎と一緒に紫に輝く煙が立ち上る。
そしてアトラが振り向いて感嘆の声をあげる。
「流石魔神様! それほどの魔術をお使いになるとは!!」
……こいつら、ここに住んでるのに、魔力塵が燃やせるの知らないって、マジ?
「ククク……! 魔神である私にとって、こんなものは初歩だ。こんなもので、わざわざ驚かれても拍子抜けだぞ」
コボルトがジリジリと下がりだす。私はそれを見て威勢を張るように叫んだ。
「クハハハ! この間抜け共が!! 我が人骨の宝物庫にちょっかいをかけに来て、生きて帰れると思っているのか!!」
……ここは少し痛い目を見せて、今後攻めてくる気を削ぐ。
私はセーターから立ち上る魔力の煙に手をかざした。
・魔力に包まれている時、魔術が使える。
そこに描かれたイラスト通りにしただけだ。下手くそな手のイラストが、煙に包まれている。
そして詠唱した。
「コボルトよ! 死して敬え! ブレイブハート!!」
【ブレイブハート】
心が弱った時に、元気になる。
描かれてイラストは『目』 目から矢印が出て、他の目に入るイラストだった。私はコボルトの中の、顔の長い奴を見つめて詠唱をした。
すると顔長のコボルトは叫びをあげて、崖を滑り降り始めた。
「うおおおお!! 怖くねえぞ! 人骨は俺のもんだー!!」
確かに素早い身のこなし、しかし、そいつは真っすぐに駆けてくる。私はアトラに指示を送った。
「私がやるまでも無い、殴れアトラ」
「はっ!!」 ボッゴォオオン!!
アトラの強靭なオッサンの腕がコボルトを殴りつけると、そいつは崖まで飛んでいって壁に埋まった。
私には分かっていた。人骨が欲しくて100匹単位で集まるコボルト。目の前に居たのはアトラ一匹だと言うのに攻めてこない。こいつらは集団で一気に攻めて来ればすぐ終わるのに個体の保身が強い。アトラにビビってる。つまり一匹あたりはアトラより格下。
だからこそ単一対象のブレイブハートで元気づけてやるのが有効という訳だ。私が煙に手をかざしたままコボルトを次々に見つめると、見つめた奴からやる気を出して突撃し、次々とアトラに殴り飛ばされていった。
12匹程のコボルトを殴り飛ばしたところで、一度やめ、私は声をあげた。
「コボルト共よ! 我こそはこの魔界を統べる為に、この地に降臨した! 魔界教皇・ササーガである!!」
「魔神……?」 「ササガ……?」
「私は私に狼藉を働いた貴様らを、一匹たりとも逃がさない。貴様らの巣にもおもむき、全てを焼き滅ぼしてやる! それほどに貴様らの罪は……重い!!」
コボルト共に明らかに動揺が浮かび始めた。
「まずいぞ……」 「村が!」 「おで、弟が生まれたばかりなんだ!」
……行ける。馬鹿だ。支配できる。
「だが、我が配下として忠誠を誓うのであれば、私は貴様らを咎めない! 誓え! この私に、忠誠を!!」
すると崖の上のコボルト達が、一斉に後ろを向いた。それは何かを求めるように、意志の力、決定を求めるように。すると、その群れの後ろから、ひときわ大きなコボルトが歩いてきた。見るからにボス級。
「ワシらの村は……やらせんぞぉ!! 広がって戦え! 一番強い奴を殺した奴には、ドクロ20個だ!!」
「うおおおおおおおお!!」
コボルト達が士気を取り戻し、崖一面を一斉に滑り降りてきた。アトラに向かっていくやつが居ない。全員が綺麗にアトラを避ける冷静さ、統率された動き。
そして一斉に私の方へと駆けてくる。それぞれ、手には爪やらナイフやら、様々な趣向の武器を持っている。小柄とは言え筋肉質、まるで凶器を使いこなすニホンザル。
格闘戦になれば、一般人の私では絶対に死ぬ。
洞窟を背にした周囲180度、全方向から一斉にコボルト達が壁を作った。逃げ場は無い。
その時私がとった選択は……
土下座。
土下座をした。この世紀末感溢れる、野獣の群れのようなコボルト達に平伏のポーズ。
そして唱えた。
「それ以上、来ないでください……!!」
そんな私を見て、コボルト達の顔が愉悦に歪む。
「なんだこいつ!」 「雑魚かあ!!」 「やっちまえー!!」
周囲40匹程が無思慮。一斉に向かってきた。コボルトの前列が飛び上がった瞬間、私は手元で針を打ち鳴らした。火花が散って、着ていた白衣が一気に燃え始める。私は全身火だるまの姿に変貌した。
そして同時に唱える。
「怒りをお鎮めください、地獄の王よ! リラクゼーション!!」
【リラクゼーション】
お花畑が見えて落ち着く。
描かれたイラストは、人型が一つ書いてあり、その周りに円。その円の中に人型。そして、地面に花がいっぱい咲いてる景色。つまり、自分を中心とした一定範囲に、お花畑を見せる魔術だと解釈した。
自分にも花畑が見えていた。自分が燃えてるのに、かなり心が落ち着く。私の土下座に無警戒で一斉に飛び掛かったコボルト達も全て射程内に入っていた。
リラックス空間では全員が戦意を失った。武器を落としてお花畑の中で茫然とするもの。幻覚の草に体を沈めて寝始める者など多種多様なリラックスを満喫していた。
そしてすかさず、花畑のコボルト達に話しかける。
「最も強いものを倒した奴に、ドクロ20個をくれてやる!!」
コボルト達はそれぞれゆっくりと私の方を見つめた。
「私の身体を見ろ、燃えてしまっている。戦える状態じゃない弱者だ。だがお前たちは本当に強く、敬うべき相手を知っているよな!!」
「ブレイブハート!!」
勇気づける魔術、ブレイブハート、それと同時に花畑を解除する。コボルト達は我に返り、落とした武器を一斉に拾い、私を睨んだ。
そして私は一人、拍手を始めた。
「アクレーム!!」
【アクレーム】
拍手を送って称える事が出来る。
「ハハハ! 最も強いものに、賛美の音を贈ろう!!」
その対象は、コボルトのボス。
イラストは手を叩く絵と耳の絵。そして矢印があって拍手。拍手を聞いたものが、拍手を送りだす。そう読み解いた。
周囲に居たコボルト達は一斉にボスに向かって拍手をしだした。そして範囲が伝播する。コボルトが次々に拍手をし始める。
「うぉおおおお!」 「わぁああああ!」 「ボスは最強!」 「ボスは最強だー!!」
アトラの巣となっているすり鉢状の崖地帯は、プロ野球の球場のような、熱狂と歓声に包まれた。その全てがコボルトのボスに向けられている。
「そして立ち向かえ、勇気ある兵士達よ! この場で最も強いものを倒したら、ドクロ20個を授けると言ったな! この場で一番強いのが誰か……! 皆は分かるよな!!」
コボルトが一斉に歯ぎしりを開始した。
そして……
「ワァアアアアアアアア!!」
駆け出した。目が血走り、敵も味方も分からない。勇気の錯乱状態。ただ『この場にいる最も強いもの』それを討ち滅ぼす勇気のために。
アトラも自然と向かっていた。私の周りには誰一人として残らず、全員がコボルトのボスに集まっていく。
ボスは慌てふためいていた。
「なんだ! 裏切りか! 貴様ら―!!」
山のようになったコボルトの群れに襲われ、血を噴きだし、身ぐるみを剥がれ、コボルトのボスは沈んでいった。
私はその瞬間に、ブレイブハートを解除する。全員の過剰な勇気は一瞬にして失わて我に返り、目の前のボロ切れのようになったボスの残骸を前に、自分の起こした行動に怯え始めていた。
「おでは一回しか切ってない!!」 「おでも目玉刺しただけだっ!!」 「お前刺してた!?」 「おで違う!!」
身震いし、キョロキョロと誰が責任を取るのか擦り付け合いのような状態が始まっている。
それを見て私は前に出た。
「貴様らの信ずるべき、最高の魔神はここにいる! 見よこの炎の鎧を!こんなものは我が力のほんの一端に過ぎない!」
白衣が燃えさかって紫の炎が私を包んでいる。それは熱いが、水を吸わせたレインコートのようなローブが身体を守ってくれる。
「良いか! お前たちのボスは私の魔術が殺した!! この先お前たちが選べるのは、村ごとの全滅か、私の配下か、二つに一つだけだ!! 私は配下になるなら悪いようにはしない」
アトラもコボルトも、全員が私を見つめていた。何が正解かも分からないと言った感じでキョロキョロして、誰も回答を出さない。コボルトはボスの意見が強い社会性の魔物だ。猿と一緒。
故に突然のボス不在に対処出来ていない。だからこそ……
……パンッ!! そこに手のひらを一つ叩いた。
「アクレーム!!」
そして両手を広げた。
「賛美せよ!! この地に舞い降りたただ一人の絶対者!! この魔神教皇ササーガ様を!! お前たちは我が導く!!」
コボルト達は困惑している。突然現れた私の配下になる。その選択肢すらも、ボス不在の前に誰も決定しない。
しかし、アクレームの拍手は強制だった。
全員が顔を引きつらせながらも、揃って拍手を贈っている。コボルト達は周りの仲間をお互いに見合った。仲間が拍手を送っている。全員が拍手している。
判断を失った彼らは、それが民意であると信じざるを得なかった。
崖の上から私を見下ろす全員が拍手を贈る。その拍手は次第に強まっていく。その波に乗せて、私は炎が揺れるその身体で両腕を広げた。
「光栄に思うがいい! 貴様らはやがて魔界を統べるこの私の第一軍だ!!」
そして拳を握り、高く掲げた。
「わが軍を『ササーガ魔軍』と名付ける!!」
鳴り響く拍手に乗せて、歓声が湧いた。
「魔軍……万歳!!」 「魔軍万歳!!」 「ササーガ様万歳!!」 「うおおおお!!」
それはまるでオペラの終幕。熱狂の大歓声となり。
コボルトと言う共同体が、私を新しいボスとして受け入れる儀式として十分なものとなった。
生き延びる為にしただけの行動が、自分の権威を高めていく。
この世界での私の平穏は、支配の元にしか無いのかもしれない。
魔軍内訳
ササーガ:人間。食料枠。
アトラ:巨大な顔の魔物、象のような体躯に、ゴキブリ並みのスピード。
コボルト軍:素早く器用な武器使い達、約80名。




