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~注意・魔神詐欺~ 魔界に転移した女医の私、魔神と勘違いされたので、魔神を騙って魔界統一を目指します  作者: 清水さささ
都市編

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16/18

魔界の起源

 ものすごく、スースーする。


 ビキニアーマーと言うやつは、水着よりも露出は少ないはずだが、なぜか余計に羞恥心が湧き上がってくる。


 目の前の青い肌の魔物は、ニヤけながら拍手をしている。

「ササーガさんは、ブラックダイヤのビキニアーマーが良く似合いますなぁ!」


 バニーガールのノエルはヒザをつき、さらには手をついて絶望している。

「そんな、かっこいい響子さんが、こんな変な姿に……」


 私はこのプフィーロ・ジェンヌと名乗る不死身の魔物にビキニアーマーに変身させられた。

 しかも、永続的に何を着てもビキニアーマーに変換されるらしい。


 ……かなりだるい状態だ。しかし、今はそんな生涯レベルの負担を上回る、進めなくてはならない重大事項がある。


 私はこの呪いのような状態を付与した、黒い大釜について質問した。

「その大釜、謎めいた能力を持っているな。何が出来るものなんだ?」


 ジェンヌは私のビキニアーマーを右から左から、あらゆる角度から観察しながら回答した。

「はい、これはエーテル・アイアン・メイデン・ビキニアーマーEXといまして……」


 ……絶対違うだろ。


 こんなもの作れる技術があって、ビキニアーマーを着せるだけのワケが無い。

「いや、ビキニアーマー以外に何が出来るのか聞いている。ビキニアーマー千年帝国の創造には、このような装置の性能は知っておかねばならんのでな」


 ジェンヌはしゃがみこんで私のへそ辺りをマジマジと観察していた。

「ビキニアーマーを作れる以外は大したことありませんね」


 ……非常に不愉快だが、この装置の秘密を探るまでの我慢だ。


 ジェンヌはがに股でしゃがんだまま、私を見あげた。

「一応、この都市のゾンビは、全てこれで作りました。あとは私が不死身になったのも、この装置の効果です」


 私は目を見張り、ノエルも顔を上げて目を輝かせた。

 

 ……めちゃくちゃ凄いじゃん!! 無限に兵士作れて不死身になれるのかよこれ!!


 ノエルが立ち上がり、釜に近寄ろうとしたのを、私は片手をあげて静止した。


 ……しかし、食いついてはいけない。ジェンヌはどうやら大釜の凄さに気づいていない。我々はあくまで凄いものだという反応を見せずに、その詳細を興味深く聞く必要がある。


「ほう、面白い効果だな。私は既にビキニアーマーを手に入れたが、副作用などは無いのか?」


 ジェンヌは再び視線を落とし、地べたに手をついて見上げてきた。

「副作用はありません。ただ、ビキニアーマー以外は上手く作れないんですよね」


 ……ジェンヌはどうでもいいけど、ここまで見られると、さすがに恥ずいな。


 しかし私は凛とした仁王立ちを続けていた。

 私は目を細め、大釜を見た。赤い光は最初と同じ状態でゆらめき続けている。

「上手く作れないと言うと?」


 ジェンヌは仰向けで寝そべり、私の股の下にスライドして入ってくる。さすがに、一歩左へ避けた。


 真顔のジェンヌの顔が天井を見つめている。

「私はそれで、ビキニアーマーが似合う美女を量産しようとしたんですよ……」


 そして起き上がって叫び出した。

「そしたらなんですか! 下半身は女性で出てくるのに、上半身が全部モンスター!! あんな醜いゾンビがビキニアーマー来た所でなんにも面白くない! そうじゃないですか! ねぇ!?」


「あ……ああ、そうだな……」


 そして立ち上がり、自分の青い胸についた銀色のビキニアーマーをガシャガシャと揺らし出した。


「それにこの肌の色を見てください!! 私は最高のビキニアーマー美女として転生するために、ブルーのビキニアーマーのイラストと融合したんですよ!! そしたら鎧の青が色落ち!! 私が青くなってしまいました!!」


 そして再び真顔に戻り。正面から私を見つめる。


「これって、もしかして、副作用?」



 ……違うだろ。


 私は唸るように腕を組んだ。

「大釜がポンコツなのかもしれんな」


 私はそう言い放ち、大釜に興味無さげに部屋の隅へ行き、鉄製のロッカーを開いた。


 中にはハンガーにかかった白衣。私のものだ。

 私にとっては見慣れた光景のひとつ。


 白衣をひとつ取って羽織った。

 白衣は消えない。そのままだ。

 白衣の前を重ねて、へそを隠した。

 その瞬間、白衣は触れなくなり、ビキニアーマーへと吸収されていった。


 ジェンヌがマントをしてるから大丈夫な気はしたが、確認が取れた。

 ビキニアーマー以外を着れないという制約はどうやら、腹や股を隠し切るのがアウトという事だろう。


 私は白衣をもう一枚とり、羽織った。

 そして表彰状を見上げながら考える。


 ……分かったことの整理をする。


 それが思考の土台となる。

 研究の時も、それを大切にしていた。


 大釜は生物ですら自在に製造加工してくれる、チート級のアーティファクト。

 ジェンヌは使っているだけで、製作者でもないし、真価にすら気づいていない。

 研究室は私の部屋だが、私には装置の記憶は無くて、一緒に研究していたハズのトウジと言う男の記憶も無い。


 私は未来人のスケジュール帳をだし、一ページ目を開いた。

 そこに書かれている肖像画は、私に似ているシェリーの顔。

 シェリー自身もスケジュール帳を覚えており、トウジの名前を知っていた。


 私は推察する。


 まず、シェリーは私だ。


 スケジュール帳が2067年なので、42年後の未来の私かもしれない。

 私本人でなくても、スケジュール帳のイラストを装置で出力したとか、少なからずこの装置と私は関係がある。


 それは間違い無いだろう。


 そして、私をベースとしたシェリーは深淵族へと変化した。

 なぜ海洋生物の特性を得たのか?

 海洋生物の特性を欲したからだ。

 欲した理由があったとするならば、海底の未来都市の探査の為の能力付与。妥当だ。

 だが大釜が何かズレを起こして、凶暴な海底のピットファイターになってしまった。


 有り得る物語だ。


 そしてシェリーが信じて渇望していた。『愛』

 シェリーは暴力装置であり、愛からは程遠い存在だ。

 しかし根底には愛の言葉だけが残っていた。


 理由。


 ひとつしかない。


 実際にトウジを愛していた。


 私とトウジと言う男は、同じ研究をするうちに愛に芽生えていたんだろう。

 もしくは愛し合っていたから、同じ研究をしていたのかも知れない。


 それはどっちでもいい。


 となると、魔界の廃棄区画、十区で目覚めた私はなんなんだ?


 私には、自身が『サザナミ 響子キョウコ』本人だという、確固たる自負はある。


 研究室の記憶もある。


 私は幼い頃からリーダー気質で、人に認めさせるのが好きだった。

 だが、必ず副リーダーの地位を取り続けてきた。

 リーダー程の責任を伴わず、強く意見できる中間ポジション。それが私の定位置だった。


 医学生となり、卒業。


 研修医を経て大学に戻り、教授として癌細胞の不老性に着目。

 不老細胞であるティタノ細胞の開発研究に取り組んでいた。


 そして賞を取った。


 賞を取った事自体よりも、私の研究が医学に貢献する可能性、人を救える可能性。そちらの方が嬉しかった。


 好きな食べ物は、最寄りの牛丼屋のチーズ牛丼。

 必ずキムチと、紅しょうがを二つまみ入れる。


 よく食べていた。最高だ。


 ハッキリと記憶がある。


 私が最後にした買い物。

 大学構内の自販機で、冷えた缶コーヒー、二本。

 些細な出来事だが。そうだ。二本買った。


 誰かにあげるためだ。

 しかし誰かを覚えていない。


 トウジの事は覚えていない。


 コーヒーを買ったあとの記憶が、無い。

 いつの間にか寝ていて苦しくなり、もがいて十区の魔力塵の沼から飛び出した。


 表彰状の名前『石上 統司』


 私は装置に関わっていた。


 私はなんだ?

 オリジナル響子がいて、自分をコピーした?

 何かの危機があって十区に転送した?

 私がここで一度魔界からの脱出願い、記憶を消された可能性?


 それでは愛していたトウジの名前を忘れてた説明がつかない。


 ならば、トウジの意思だ。

 彼が私の為に、トウジを忘れさせた。


 思い出さない方が良いレベルの、過酷な何かがあった可能性……



 深く考えて沈黙していると、右側にノエルが近寄っており、私の袖を引いた。

「だ、大丈夫ですか? 教皇様……?」


「あ、ああ、すまん。考え事をしていた」


 ……思い出さない方が良い。トウジがそう望んだのだとしたら、思い出さない方が良いのかも知れない。


 私はノエルの耳を優しく撫でた。

 ノエルは目を閉じて、気持ちよさそうに身を任せている。


 ……今この魔界の支配を進めていく嘘まみれの私の国。いつ死ぬとも分からない恐怖に囲まれた日々だが、これはこれで楽しい事もある人生だ。


 そう思っていると、左側からジェンヌがスケジュール帳を覗き見た。


「ほお、錬成用紙ですかな?」


 私は横目にジェンヌを見た。

「錬成用紙?」


 ジェンヌは薬剤棚の引き出しを開き、紙の束を取り出した。


「大釜を使う時に使っていたらしいんですよ。私ほどのビキニアーマー使いにもなると、想像と口頭だけで完璧なビキニアーマーを錬成出来るんですがね?」


 そう言って差しだされた紙。


 その一枚目を見て戦慄した。


「貸してくれっ!」


 私は息が上がり、ジェンヌから用紙を奪い取った。


 そこに書かれていたのは、下手くそなロボットアームのイラストだった。

 真ん中にぐるぐると丸が書いてあり、フリーハンドの汚い線で描かれたロボットアームが無数に伸びている。腕の先では岩のような塊を掴んでおり、その下には棒人間が横たわっている。


 そして日本語でメモが書かれている。


 便利な手。

 怪力。

 人を発見して救い出す。


 一見すると災害救助用のロボットアーム。瓦礫をどかして人を見つけるという、陳腐なイラストながらも平和的な発想と説明だ。


 それを横からノエルが覗き込む。


「あ、ディグラスじゃないですかぁ、大釜で作ったんですかね?」


 ……全く同感だった。


 ディグラス=グィガ。

 私が国を作る羽目になった根本的原因だ。

 赤黒い巨体に触手の腕で有象無象を掴んで食い潰す殺害不可能の大災害。

 錬成用紙に書かれた絵がそれにしか見えなかった。


 大釜は、この陳腐なイラストから、あんな疫病神を生成したという事なのか。


 次の一枚を見る。


 今度はいくつかの写真データを、一枚の紙にまとめてプリントアウトしたものだった。


 画像は、シャチ、潜水艦、戦車だった。


 そして追記のメモが箇条書きにされている。

 ・水陸両生。

 ・知性維持。

 ・人に友好。


 私は手が震えていた。


「これ、シェリーを作る為のメニューじゃないのか……?」


 大釜を見る。


 ジェンヌはビキニアーマーの絵を使って、青色に転生したと言っていた。

 大釜は画像と生物を、言葉を持って融合する。しかし解釈を捻じ曲げる。


 そうだとするならば、きっと私がこの紙を大釜にかざしたら、画像と指示によって融合し、私はシェリーになってしまうのだろう。


 次の紙を見ても、次の紙を見ても、画像と箇条書きの文字。

 そして、それらに共通することがあった。


 箇条書きは三つまで。

 一つにつき、四文字までと言うことだった。


 おそらくこれは、試行錯誤して、研究の末に行き着いた法則。


 一枚目のディグラスへ戻った。


 便利な手。

 怪力。

 人を発見して救い出す。


 三つ目の指定が四文字を越えている。

 四文字制限がルールならば、コレは……


 便利な手。(触手)

 怪力。  (そのまま)

 人を発見。(この四文字で切れて、救い出す。が無効)


 これにより生成される存在に、解釈違いが加わる。

『怪力の、触手で、人を発見して、捕食する』バケモノが生まれた。


 しかし逆説的に、手とか怪力などの要素が優先して書いてあると言う事は、これらを指定しない限り、軟弱な腕無し個体しか生み出さないということ。


 実際にゾンビも弱かった。


 シェリーの紙を見た。

 潜水艦の画像の右下に「シェリーマリンの入水式」と、白文字で入り込んでいる。


 きっと潜水艦のネット記事からそのまま引用したんだろう。

 そして大釜はこの文字を、命令として解釈した。


 つまり、シェリー生成時の命令は……


 ・シェリー。(四文字切れで名前と判定)

 ・水陸両用。(有効)

 ・知性維持。(トウジを覚えている)


 ・人に友好。(四つ目の指示、無効)


 という訳か。


 シェリーになった私は、写真に入ってる文字と、その可能性には気づかなかったという事。


 私にしては随分と間抜けなミスをしている。

 何故だろうか?


 おそらく大釜を自分に使うしかないと思うほど、切羽詰まっていたからだ。



 物語を想像するとすればこうだ。


 災害が起きて、人命救助が必要になり、誰かがディグラスを生成。

 しかしそれは最悪の食人鬼だった。人が無慈悲に捕食された。ディグラスは殺せない。

 ならば大釜を使って消せないか? いや、大釜は生成しかしない。

 それで海底の未来都市に、何かを探しに行こうとした。

 ディグラスを消すための何かだ。


 それに名乗りをあげたのが、シェリーとなった私。

 自分の身を海底探索用の姿に作り替えた。


 この錬成用紙を作った私の発想は分かる。


 シャチという水性最強の哺乳類化。

 戦車画像による超パワー化。

 潜水艦画像は、戦車による水中行動不可能への対策だろう。


 それに加えてわざわざ、一行目に水陸両用を付けていることから、これをミスると水陸どちらでも死ぬレベルの不幸が起きるということだ。


 再び大釜を見つめる。


 大釜の効果はほぼ確信した。


・画像と四文字、三行の指定を使い、生成を行う。

・ただし、その指定の中で最悪の形を作り出す。


 私には、この装置の記憶はない。

 トウジが、この悪魔の装置を『忘れた方が幸せ』と判断し、トウジの記憶ごと忘れさせてくれた。


 それが私というわけだ。


 愛する者に忘れられても、愛する者を守りたい。

 それがトウジという男。

 シェリーが泣くほどにトウジと言う名前に反応したのも頷ける。


 そして再び錬成用紙をめくっていく。

 覚えのない組み合わせの絵と文字が連続する中に、一際目を引くものがあった。


 それは、秋刀魚さんまが三匹カゴに乗っている画像と、巨人の腕のみの画像。


 魔界適正

 人間好き

 神経維持


 三つの指示。


 秋刀魚三匹だけでピンと来た。


 窓の外で周囲を警戒するアトラ。

 オッサンの顔の上に女性が生えており、背中に三匹の魚が付いている異形。

 あいつも、大釜での変形による成れの果てということか。


 だが私視点、アトラの指示はシェリーよりも、賢くアップグレードされている。


 まず画像に兵器が入ってない。

 戦車は戦うためのものとして認識されるのだろう。

 シェリーの凶暴性の元凶が、やつ自体が兵器であるという可能性。


 文章も目指すものは近い。


 水陸両用→魔界適正=魔界全土に適性を持つならば一括。

 人に友好→人間好き=『人に友好』が無効だったと勘違いした。さらに優先順位を二番目に。

 知性維持→神経維持=知性の根源は神経だ。医学的に優れた命令だと分かる。


 それを見て震える私の脇から、ノエルが背伸びして覗き込む。

「あ、魔神って書いてありますね! 私、日本語ってやつ、ちょっと勉強したんで、『魔神』は読めるんですよ!」


「魔神……?」


「ほらここ、魔神ですよね、コレ!」


 ノエルが指さした先、アトラ錬成用紙の三つの指示の一番左の縦列だった。


 魔界適正

 人間好き

 神経維持


 縦読みで


 魔

 人

 神


「魔人神……マジンカミ」


 アトラは私を魔神と勘違いしていた。

 魔神と言う種族を知っていたのは、アトラだけだった。


 魔神、マジン……魔人。


「魔人は、神である……?」


 左側採用だと、どうなる……?


 画像の秋刀魚は、背中に付いてるやつ。

 画像の巨人の腕は、デカいオッサン顔と剛腕。


 魔人神 (マジンは神である、崇拝するべき)

 魔界適正(魔界のどこにでも適性がある)

 人間好き(人間を食べるのが好き)


 秋刀魚をつけた理由……海に行く為だ。

 海に行く理由……シェリーを追うため?

 なんでシェリーを追うか?……漣 響子だったから。


「アトラ……お前は一体、誰なんだ」


 私がチラリと窓側を見た。



 その時だった。


 窓の外で待機するアトラが、壁を叩いた。

「教皇様! 大変です、邪眼族の集団が……!!」


「なに、邪眼族……だと!?」


 唖然とする私を横目に、ジェンヌが駆け出した。

「邪眼族ですとっ! あの種族はビキニアーマーが似合いそうだと、ずっと思っていたんですよ!!」


 私もそれを追って駆け出した。


 窓の下にはナガンと同じ、蛇の頭髪を持った、三ツ目六本腕の魔物が十匹集まっていた。


 中でも特に傷だらけで腕の太い男が、私を睨んでいる。

「シャア!! 千里眼の者から、巨大な者が近寄っているという宣告があった! 貴様ら何者ジャア!!」


 巨大な者……アトラか。


 ……目良すぎだろコイツら。


 回答を考えていると、私の隣でそれを見ていたジェンヌがキレ始めた。

「貴様らーっ!! ふざけているのか!! 美女が一人もおらんではないか!!」


「ジャ? なんじゃ貴様は」


 たしかに、集まってる邪眼族は全て男だった。

 しかしそんな事はどうでもいい。

 我が国の最強の戦士である、ナガンと同じ種族が十名もいる。


「おいやめろジェンヌ、ヤツらは……」


 腕を引いたが既に遅かった。

 ジェンヌは窓枠に立ち、マントを広げた。


「よくぞ聞いてくれたな! 私は絶都王、プフィーロ・ジェンヌ! ナポレオンの転生かもしれないよ!?」

 そして、邪眼族達に向かって指をさした。

「ビキニアーマーの千年帝国を魔界に築く為、魔界の男は全て処刑する!」



 私はその瞬間、血の気が引いた。

「おいバカ、やめろっ!」


 だがそれも既に遅かった。

 ジェンヌは両手を前に突き出してヒザを曲げていた。

「とぉーう! 雷の構えっ!!」

 四階の窓から、邪眼族の群れの中に頭から飛び込んで行った。


 邪眼族の先頭の男にぶつかる瞬間、男は六本の剣を同時に引き抜いて展開した。

 動きは全く見えないが、人の形をした血の塊が一気に弾け飛び、荒廃都市のアスファルトの上に散らばった。


 邪眼族の男は、その三ツ目を鋭く尖らせた。


「それは、宣戦布告って事で良いんじゃな」


 私は頭を抱えた。



 ……ナポレオンの言葉にある。『無能な味方は敵よりも恐ろしい』


 ジェンヌは不死身なので復活するのだろうが、私にはそれこそが次の恐怖だった。


 ……さて、どうするか。


 私の白衣の背中を、大釜の赤い光が照らしていた。

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