三話
全く呑気なものだと自分でも思う。
自分の持つ権力と、周りの対応についてよく分かっていたはずなのに俺は気づけていなかった。
大事な婚約者が嫌がらせを受けていると気がついたのは13の時。
自分の目で見るまで知れなかった。
もしかしたら彼女自身が隠していたのかもしれない。
でも俺は気がつくべきだった。よく見ていたら気がつけていたはずだった。
馬鹿な俺は、それを見た翌日のお茶会で彼女に聞いた。
嫌がらせをされているのか、と
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「その、前に見てしまったんだ。・・・それで、助けたいと思って、だから———」
「殿下。」
彼女が俺を呼ぶ声があまりにも淡々としていて、思わず口をつぐんだ。
恐る恐る彼女を見ると、彼女は出会った時と同じ綺麗な笑顔で言った。
「これ、私の自慢の料理人が作ったんです。いかがですか?」
その笑顔を見て俺は、失敗したと思った。
間違えた。失敗した。
心の戸を閉ざされ、距離を空けられてしまった。
ようやく近づいてきたと思った彼女が、また遠のいたように感じた。
俺は不安と焦りを抱えながら他愛もない会話を続けた。
それ以来彼女とそのことについては話さなかった。
俺がそれに触れるのを恐れ怖がったからだ。
俺は意気地なしの臆病者だから。
ここで臆さず彼女のために動けてたら、未来は違っていたんだろうか。
今更遅いのに、後悔ばかりが頭を埋め尽くした。
「・・・ヴォルク。」
「はい、殿下。」
俺は信頼している学友を呼んだ。
名はヴォルク・ヴァルノー、ヴァルノー侯爵家の長男だ。
年は一つ上だが学園ではよく話し、いろいろなことを教えてもらった。
おっべかを言うこともなく、一人の人間として接してくれた。
だから俺は彼を信頼している。
「ロゼアを、見守ってほしい・・・。」
俺は彼にそう頼んだ。