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虐げられ令嬢と猫王の話

作者: 山田 勝

 ゴゴゴゴゴゴゴォォオオオオーーーーーーー


 比喩ではなく、音が聞こえる。闘気の音だ。

 この音の発生源は、猫である。


「ミャー!ニャン!ニャー!」

(ニャ王よ。我ら猫と大きな猫は表裏一体!離れて暮らすことなど出来ようか?)



 空き地に、長毛種の猫が若い猫に語りかけている。齢20才を超えた長老猫だ。

 毛は白で目が隠れるくらいに伸びている。名をモフ爺と言う。



(ニャー!ニャー!ニャー)

「老いたな。モフ爺よ!我は猫王になる!猫は完璧、大きな猫など不要である!」


 対して、ニャ王と言われた猫は、齢4才、灰色のトラシマ模様である。

 体は他の猫に比べると一回り大きく見える。



(ミャン!ミャン!)

「なら、我を退けてから行くのじゃ!」


(ミャー)

「面白い!」


【ナオーーーーーーン】

【ミャアアアアアーーー】


 ゴクリ!

 周りからつばを飲む音が聞こえる。

 周りの猫は両雄の激突に固唾をのむ。


 その時


「コラー、モフ爺を虐めるなーーー!デカ猫!あっちへいけ!」


 幼女が乱入した。


 ヒョイと老猫を抱っこする。


「モフ爺、大丈夫だった?」


(ミャン・・)

「妹よ・・」


 勝負はお蔵入りになった。


(ミャン!ミャー!ニャー!ニャー)

「フ、命拾いをしたな。モフ爺よ」


(ミャン!)

「待て!」


(ニャン!ニャン、ニャー)

「それがお前の限界だ。モフ爺よ」




 ・・・・・



 それから、俺は森に行った。大きな猫のいない森だ。

 俺はここで修行をし、力を蓄え大きな猫を石の家から追い出し、真の猫としてのあるべき姿を取り戻す。


 お、大木に股があるな。そこでひなたぼっこでもするか。



「グスン、グスン、グスン」


 何だ。大きな猫の子供がいる。一声で追い出してやる。


(シャアアアーーーー)

「いね!」


「ヒィ、ごめんなさい。猫ちゃんのおうちだったのね。どきます。キャ」


 ドタン!


 何だ。こいつ。ケンカでもしたのか?傷だらけだな。


 まあ、良い。ここにいることは許してやる。

 俺は勝手にひなたぼっこをする。

 だから、お前も俺に構うな。



「あれ、猫ちゃん・・・」


 フン、キーキー声を上げないな。それだけは褒めてやる。寝るか。



 ソー


 と少女は猫に近づいた。モフりたいのだ。


「猫ちゃん!」


(シャアアアアーーーーー)

「触るな!」


「ヒィ、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」


 そんなに謝るな。

 しかし、何だこいつ。やせているな。


 グゥ~、グゥ~


 腹の音がうるさくて眠れねえ。チィ、仕方ない。

 川に行って魚を捕った。


 バシャバシャ!


(ニャー、ニャー)

「ほら、魚だ。食え」


「え、有難う。くれるの・・・」



 パチパチパチ~


 火をたきやがった。大きな猫は魚を生で食べられないから仕方ないな。

 何て不完全で脆弱な生き物だ。


「私のお父様は国1番の騎士様だったんだよ。だけど、戦争で亡くなったら、後見人って人が来たの。叔母様一家がきてから、グスン、グスン」



 プィ!


 面倒くさい。辛気くさいのは嫌いだよ。

 まあ、大きな猫は親離れに時間がかかる欠陥動物だ。仕方ないか。



「猫ちゃん。どこに行くの?」



 俺は街に戻った。


 大きな猫に化けているキツネがいる。

 そいつに何とかしてもらおう。


 名をお銀、大きな猫の名前はシルバー、メスだ。


 ドサ!


 と森で狩った鳥を渡した。


(ミャーン、ニャー)

「これで、大きな猫の服、子供用を用立てろ!」


「あら、ニャ王、珍しい。分かったコーン!」


 おい、『コーン』ばれるだろう。



 ・・・




 服をくわえて持って行った。



「え、くれるの?」


 臭いからな。水浴びでもして着替えろ!そして辛いことを忘れろ!


「ありがとう・・・グスン」



 それから、奇妙な大きな猫との交流が続いた。


 シルバーも連れて行った。


「感心しないよ。一生面倒をみれなきゃ、深入りは禁物だねコン!」


「フン、おい、耳が出ているぞ。なら、お前は何故大きな猫に混じっているんだ。キツネのくせに」


「そりゃ、食べ物が豊富だからだよ。それに、仕事をしていると楽しんださ。今、冒険者ギルドでネズミ狩りの専門の冒険者して名を売っているコン!」

「フン、そういや、森にネズミがいない。畑にいったのか?」


「何だか、ネズミ王が誕生したって噂だよ」





 ・・・・



 俺は森の中で修行する。


 大きな岩に猫パンチだ。岩が丸くなるようまでパンチを続けるぜ。


「ニャン!ニャン!ニャン!」


 バシ!バシ!


 岩を削れるようになった。


 来る日も来る日も岩にパンチに狩り。

 そして、あの場所に行く。

 まあ、縄張りにいる奇妙な大きな猫だ。


 一応、生きているかどうか確認をしないとな。


「ニャンさん。いつも有難う。これ、お裾分け」


 ボロ。


 何だ。イモの切れ端じゃねえか。対価に合わないがまあいい。


 モグモグモグ。


「サリアちゃん。きたコン!」

「あ、キツネのお姉さん」


 ばれているじゃないか。



 しばらく、こいつに子供を預け。山で修行した。


 遂に、


 ガン!ガタン!


 岩を一撃で砕けるようになった。


(フフフフゥ~~~~~)

「開眼したぜ」


 今日は鳥を多めにかり。あの場所に行ったが、



「ニャ王!大変だよ。サリアちゃんが、城に連れて行かれたコン!」


(・・・・・・)

「・・・・・・」



 言葉が出ない。何故だ?


 話を聞くと、兵士がきて、大きな石のハウスに連れて行かれた。


 城か。


 ビュン~!


「ちょっとニャ王!」



 俺は走った。山で鍛えた猫だ。

 持久力は、


 ヒョイ!


 おい、シルバー!抱っこするな。まるで、家猫みたいじゃないか?


「馬車で行くコン!」


 チィ仕方ない。修行の成果を試すためだ。





 ☆☆☆王城



「・・・少々、小さくないか?これが我国1番の騎士と歌われたスタリー殿の娘、サリアか?」



「はい、少々やんちゃで、好き嫌いが激しいから痩せております。しかし、ジョブは騎士です」


「そうか、毎晩、書庫にネズミが現れ、経典をかじっている。由々しき事態だ。結界もはねのける・・・・番をいたせ」


「はい」


「守れば、望みを何なりとかなえてやる。しかし、失敗をしたら、自裁をいたせ」


「・・・はい」



 グスン、グスン、少しも剣の修行をしてもらえなかった。お父様から基礎をならったけど、これで、ニャンちゃんとキツネのお姉さんとお別れ・・・



 私は書庫に入った。深夜を回った頃だと思う。


 暗闇に赤く光るものが二つ見えた。


 ネズミ?デカくない?


「チュー!チュー!チュー!」

「ヒィ、壁をすり抜けるの?」


 私は剣を構える。


「エイ、エイ!ヤー!ヤー!」


 シュン!シュン!


 ネズミは簡単に剣を躱した。


 ガブ!


「いたい!」


 足をかみついたのではない。肉をそがれた。


 私は床に倒れた。


 もう、ダメ。生きたままネズミに食べられる。



「チュー!チュー!」(奥義、窮鼠猫を噛む!)



 その時。


 ボコ!


 壁が、壁に、凸が出来ている。やがて、その膨らみは破裂した。


 ドカーーン!


 壁が崩れた。


「ニャン!ニャー!ニャー!」

(フウ、自然石崩しの猫パンチだぜ!)


「ニャンちゃん!」



(ミャー!ミャー!)

「俺の縄張りの大きな猫になんてことするんだ」


 何だ、経典を食べているせいで魔力が宿ってやがる。



「チュー!チュー!」

(我は赤目、ネズミ王!)



 フ、連続猫パンチ!


 シュン!シュン!


 何だと、よけやがった。


(チュー!チュー!)

「奥義!ネズミ算!」


 奴は分身した。一匹でも手ごわいのに、


 カプ!


「キャア!」


 サリアを食いやがった。


 ゴオオオオオーーーーー!


 その時、ムフ爺の言葉が浮かんできやがった。




 ☆回想


「ニャ王よ。奥義、ニャ神転生を学びたいと?」


「そうだ。教えろ。俺がアンタの後継者だ」



「フウ、お前では無理だ。ニャ神転生は、悲しみを知らなければできないのじゃ」


「フ、なら、俺は猫パンチでまかり通る!」



 ・・・・・・・



 体が勝手に動いた。


「!!!!」



「チュー!チュー!」


 ネズミの分身をすり抜ける。


 何てことはない。本体は赤目のネズミ一匹だ。


 経典をかじりすぎて、体が魔力に対応出来なくなっている。

 だから、毎日少しずつかじっていたのか?


なんなく、赤目の前に立てた。


「奥義!ニャ神転生!からの、ワンインチ猫パンチ!」


「チュー!チュー!」


 スパン!


 ポロ!


 ネズミの首だ。取れたぜ!




 ・・・・・・・



「サリア殿よ。よくやった。褒美を取らす」


「いえ、このニャンちゃんがやったのです」


「そんなわけはない。城の猫は震えて戦えなかったぞ」


「そんな。陛下、信じて下さい」


「猫パンチで壁を崩した。信じられるか?貴殿の剣であろうよ。謙遜はやめよ」



 フン、奥義が開眼した礼だ。半分はお前の手柄だ。

 と眺めていたら、叔母夫婦がしゃしゃり出てきやがった。



「まあ、サリア、よくやったわ。スタリーも女神様の元で喜んでいますわ」

「陛下、我家の誇りです。褒美は、領地の加増をお願いします。サリア、それでいいな」


「え、その、ニャンちゃんの手柄だから」


 ビクン、ガタガタガタ~


 何だ。叔母夫婦がきてから、震えてやがる。怖いのか?こんな矮小な生物が?お前の方が強いだろう。



「陛下、私達が教育した賜物ですわ」


 カチンときた。


 この叔母夫婦をここでぬっ殺しても、何か違うな。


 俺はサリアに語りかけた。



「戦え。大きな猫よ!戦わなければ、その震えは止らぬぞ!」


 ピキーーン


「ニャンちゃん。言葉、話せるの?」


「「「「????」」」」

「まあ、何を言っているの?サリア、ニャーと鳴いていたわ」



 あれ、サリアに言葉が通じたみたいだ。そうか、赤目の魔力が体に移ったのか。

 猫は20年経たないと魔力はつかない。



「陛下、実は、叔母様たちに、虐待を受けていました。これが、その傷です。食事も満足にとらせてもらえませんでした!どうか処罰をお願いします」



「「「ヒィ」」」

「サリア!また、折檻されたいか?・・・・あっ」



「ほお、今の言で認めたようだな。こいつらを牢に入れよ」



「ニャンちゃん。私はルド騎士爵家のサリア、貴方のお名前は?」


「ニャ王・・・ニャン!ニャン!」


「ニャ王さん・・・」



 それから、言葉が分からなくなった。


 王家直々に後見人になってもらい。


 私は女騎士として修行をする毎日だ。




 ☆☆☆三年後



「サリア殿!一本!」


「負けました」

「はあ、はあ、有難うございました」



「体が小さいが、低い所から来るからやりにくい」

「あの構えは猫が獲物を捕るようだ。それに速い」

「ジョブ持ちか。これは、スタリー殿とは違ったタイプの騎士になるな」



「・・・お嬢様!猫殿たちが沢山きております!」


「え、アン、有難う。今行くから、お魚の準備よろしくお願いします」




 ニャ王さんは、時々、心配して様子を見に来てくれる。



(ニャー!ニャン!)

「おい、こいつが俺の1番弟子だ」


((((ニャン!ニャン!ニャー!)))

「「「姉御、よろ~!」」」」



「フフフ、こちらこそよろしくお願いします」


 ニャン相の悪い猫ちゃん達をつれて時々家を訪問してくれる。


 キツネお姉さんの話だと。

 ニャ王軍を作って猫界を統一しようとしているらしい。



「ねえ。ニャ王さん。いつでも帰って来てよ」


(ニャン、ニャー!)


 話だと猫島に渡り。猫界の天下分け目の戦いをするらしい。



「はい、抱っこ。私は貴方の味方だよ」

「ミャン!」


 フフフ、しょうがないなと言いながら、膝の上に登ってくれる。



(ニャ!)

「来い!」


 私はニャ王さんの後を追いあの思い出の場所に着いた。



(シャアアアアアーーー)

「来い。我を倒してみせよ」


「そ、そんな。ニャ王さん。出来ないわ。命の恩人ですもの」


(なら、貴様とは永遠の別れだ)


「そんな」


 私は仕方なく剣を構えた。猫の動体視力は人族の数倍・・剣を持っていても少しも勝てる気がしない。


 スー


「あれ、ニャ王さんが・・・消えた」


 次の瞬間、背後にニャ王さんがいた。


 スタン!


(これが、ニャ神転生だ。ニャ神を天空から落とすのだ!一時的にニャ神になれる。悲しみを知っているお前なら習得可能だ)



「はい!」



 後に猫島に猫の王国が出来上がったと云う。

 人族は家を追い出される事もなく、普通に暮らしている。

 サリアとの思い出がそうさせたのかは定かではない。




最後までお読み頂き有難うございました。

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