第2章-12
俺達が向かっているダイザフは
学問や文化芸術を中心に発展している地域であり
学者や学生などが遠方からも集まってくるところだ
研究や試験の成功祈願のため何かしらに肖ろうと言う人たちも多いので
ダイザフまでわざわざ立ち寄る人間もかなり多い
人が寄ってくれば当然地域は活性化し賑わう
活性化した地域では名産品などが売れるようになり
今度はその名産品目当てに人が集まる
そのようにしてこの地域は学問、芸術だけには留まらない勢いで観光名所としても有名になっていた
しかし主要都市としては中々に発展していない
理由としては昔ながらの景観を壊させない動きや
学問、文化芸術をあくまでも基本としている地域のために
それらを観光以外で妨げる要因を作りたくないという考えが根強いからだ
なので都市の場所としてはややはずれの方にあるままで
それはそれとして学問、文化芸術、研究等に勤しむ人達からすれば
割りと適した環境のままであり続けていられているようだ
俺達の住んでいたところ、カーマからは馬車で半日ほどで着く
なので帰ろうと思えばすぐ帰れなくもない距離だ
しかし朝に出発しても、途中休憩をはさんで到着するのは夕方だ
往復するとなれば1日では難しい
ノリで帰省とはいかないのでリアにもソラにもかなり遠いと伝えている
でなければ暇があれば帰って来いと騒ぐだろうからな
馬車に乗るのは初めてではないが
ここまで遠出はしたことがないので
ワクワクする気持ちも多少はある
さっきまでは涙の別れだったわけだが
人の感情なんて長続きするものではない
感情にはすでに整理がついていた
気を取り直した所で見慣れない景色を眺めようと思って外に目を向けてみるが
目新しいものは特にない
大自然が広がるか、雑木林の間を通り抜けるかと言ったところだ
なのですぐ飽きた
やることがないならスキルの集中訓練でもしようかと思っていたところ
別の馬車が同じ街道に合流しようとしているのが見えた
乗っているのは俺と同じくらいの子供が1人と女性、母親だろうか
おそらくだがダイザフに向かうんだろう
目的は同じかもしれないな
合流と言っても街道は向こうの馬車が通っている方が本道
こちらは言わば脇道
原則として本道を通っている方に先を譲るのが暗黙の了解としてあるらしく
こちらの馬車は少し止まって、向こうの馬車が通り過ぎて先を行くのを待った
何の気なしに向こうの馬車がこちらの先を行くのを眺めていただけだったんだが
馬車に乗っている男の子が俺の目を見て
「フン」
と鼻を鳴らして小ばかにしている様に、見えた
そう見えただけだったかもしれないが
すれ違い様に見下されたような一瞥だった
「(は???)」
何だあの目は
あの顔は
憎たらしい・・・
田舎者とでも言いたいのか!?
たかだか本道に優先して道を譲ったくらいで何を勝ち誇ったような態度してるんだか
そもそもお前も(きっと)田舎者だろうが!
ちょっと身なりが綺麗だったくらいで偉そうに
馬車も様々で
割りと乗り心地や装飾、御者の腕も良いとされるような
運び賃が高くつくものもあれば
俺達が今乗っている様な、ただ運んでくれるだけの最低限しかないものもある
俺達はそもそも選択肢がなかったわけだが
言ってみればあのムカつく野郎には選択肢がある場所から来たということだ
それに選択肢があったとして俺達は別に半日の旅に運び賃を上げてまで質を求めなかっただろうけど
それはそれとしてわざわざ優位性をひけらかす必要もないだろう
暇だったり
涙の別れからの馬車旅の虚無感だったりで
微妙に感情がとげとげしていたのかもしれない
ムカついた
その後、休憩場所に着くまでは弱火のイライラが治まらなかった
人の感情なんて長続きしないと言ったのは誰だっただろうか




