第1章-29
スキルが発動する感覚はなかった
念のためにもう一度やってみるが
この半年の間ずっとそうだったように
スキルの発動の感覚がなくなっている
父にもそう伝えると
「お前の何か限界を超えた時には、しばらくの間スキルが使えなくなるみたいだな」
そう言って背中を撫でてちょっと休むように言ってくる
「だけどクロス。今ちょっと大事な時だから少し頑張ってくれな、どれくらいでスキルがまた発動出来るのか確認しよう。しばらくしたらで良いからまたスキル発動の確認をしてみようか」
そう言って家に戻って水を持ってきてくれた
父はゆっくりと話してくれた
「そもそもな、クロス。お前くらいの歳ではスキルをそこまで使いこなせたりはしないんだ。それにスキルを習得してからいきなり大掛かりに発動することも出来ない。お前は特別だよ。」
隣に座って俺の頭を撫でながら続ける
「普通は自分のスキルが分かって、それをどうにか使うことが出来るようになるまで1年くらいかかるもんだ。常時発動型はまた別だがな、そっちの場合は出力を加減することが難しくて苦労する。お前のは自発型のスキルで、しかも内容もよく分からないときたのにここまで発動出来ている。やっぱり天才だよ。」
そう言ってこっちを向きニッコリ笑っていた
「母さんは消えちゃったけどなクロス。父さんも、そしてきっと母さんもクロスを怒ったり恨んだりはしてないからな。」
俺は父の顔を見ることが出来なかった
下を向いて、『ああ、やっぱり』と今更ながらに実感することしか出来なかった
落ち葉が消えた瞬間
そして次へ次へと対象物を消して行くたびに
俺がスキルで母を消した感覚がはっきりとして来る
手応えと言っていいのだろうか
明らかに空打ちではない発動
スキルの検証に集中することで頭の端に追いやっていたが
こうやって時間が出来るとどうしても思い起こしてしまう
「お母さん・・・」
こらえていた涙が地面を濡らした
暫くしてスキルがまた使えるようになっていることが確認できた
疲労感も回復している
父にそう伝えると
「よし、クロス。今度はこの石だ。さっきの木より明らかに重いぞ。父さんが思うにこの石を消したらお前は倒れるんじゃないかと思う。その時はお前を俺が受け止めて、しっかりベッドに寝かせてやるからな。怖いかもしれないが安心していいぞ!」
そう言って後ろから俺の両肩に手を置いて、少し力強く体重をかけるようにして俺に気合を入れるよう声をかけてくれた
俺は元より父を信頼しているし、スキルで倒れるくらい限界が知りたかったので臨むところではあったのだが
思ったよりも精神的に力をもらったのが分かった
父の安心感と言うのだろうか
温かい
俺は置かれている石に集中した
検証のためだし、集中度合いをさっきの木材と大きく変えても仕方ないだろう
木材を消した時と同じようにスキルを発動してみる
消えた
そして俺は立っていることが出来なくなるように
脚から力が抜けるのを感じた
父が後ろから抱き留めてくれる
意識が飛ぶ程ではない
だが、自立することは出来ない
眠気がある訳ではないが横になりたい感覚だ
父が
「大丈夫だクロス、父さんがベッドまで運んでやるからゆっくり休めよ。」
そう言って抱きかかえて家に入っていく
俺は
「お父さん、身体に力が入らないだけで眠くはないみたい。後でまたお水持ってきて」
と、現状を伝えておいた




