第1章-18
父は、数日まとまった休暇を取っていたようで
仕事に行く必要はないらしく、俺にスキルのことを教えるんだと張り切っていた
父の様子を見るにただ空元気と言う訳でもなさそうだ
母を探すことに対しては一旦区切りをつけたのか
まだ確証はないにせよ明らかに意味不明な失踪に説明がついたことで納得したのか
今必要なことに対して意欲的に見えた
俺としてはスキルのことを包み隠さず話せてよかったと思っている
父の深い精神状態までは計り知れないが
あのまま闇雲に捜索だけさせていても
心が壊れるまでそう時間はかからなかっただろうから
なんにせよ
スキルは俺もまだ何となくしか分かっていない
この世界でスキルと付き合って生活してきた先人から
教えて貰える機会はほんとに有難い
普通
まだ5歳の段階では信託も授かっていないのが殆どだ
平均すると大体は8、9歳で授かることが多いらしいから
それでいてしかも
スキルについて今回のように講義を受けられるのも
ある程度知識と言うか、理解と言うか
考えが成熟してこないとやっても意味がない
だから10歳からは学校の様なものがあり
そこでスキルについて、更には他の教養も受けられる学び舎に通うのが殆どだ
スキルや基礎教養についての学習期間は無料であるが
それ以上に学びたい場合はお金がかかってくる
恵まれたスキルであると判断されれば減免もあるし
支払いが出来ない場合は通えなくなるだけで義務ではない
だから5歳からまともに勉強させてもらえるのは
はっきり言って無い
されることがない
しかしスキルはやはり熟練度がものを言う
習熟できるなら早いに越したことはないのだ
父は
「さてクロス、お父さんのスキルは知ってるな?」
俺も何度も見たことがある
「知ってる。よく切れるようになるんでしょ?」
「そうだ、だがそれだけでは理解したことにはならないな」
父のスキルは端的に言ってしまえば
手に持った刃物がより物体を切れるようにするにはどう、刃物を入れればいいか理解できるスキルだ
つまりは父と別の誰かに全く同じナイフを持たせ
同じものを切らせた場合
父の方がより深く、鋭く、綺麗に切れる
どうやって刃物を扱えばいいのかを直感的に理解できるスキルだ
はっきり言って物凄く有用なスキルである
ただしこれは単純に切れ味が鋭くなるようなもので
剣術が上達するものではない
なので父と剣術に卓越した者とで切り合いをさせれば
普通に父が切り負けるだろう
剣を持たせておけば最強とかでは全くない
しかし父も、剣術等に補正がかかるものではないからと
剣の扱いにかまけていたりはしない
信託を授かってスキルを理解したころから今日までもずっと
刃物を扱う上で必要な筋力トレーニングやら鍛錬等は積んでいる
だからそれなりの実力者のようだ
因みに父の今の仕事は木こりである
木を切ることその一点においては恐らく、世界の誰よりも上手であろう
何度も言うがこの世界のスキルは熟練度がものをいう
父のスキルは特に代償という代償はないが
言ってしまえば時間だろうか
カッターナイフを渡されて
瞬時にダイヤモンドを両断できるわけではない
切る得物と
切られるもの
それらによって理解できるまでの時間が異なるわけだ
包丁を手に持って豆腐を切るだけなら時間など必要ないだろうが
カッターナイフでダイヤモンドを切るとなれば時間と試行回数が必要になってくる
かなりの時間と回数を重ねると
切れる、らしい
それほど有用なスキルは非常に珍しい
木こりは、木を相手にして
しかも自分の斧などを何度も使う
木、自体は個体差があるし種類も多い
がしかし経験値はどんどん溜まっていく
新しい、今まで触れたことのない木を切る機会はそう多くないが
木や木材を相手にする回数は凄まじいことになっている
割と大木もスパッと切れるほど卓越していると聞く
なので仕事はどっちかと言うと暇だそうだ
あまりに切り過ぎるともうそれは森林破壊になってくるからだ
木こりは森や林の維持も仕事の内
間引きもすれば
植えもする
もっぱら植える仕事ばっかりだと苦笑交じりに話してくれた




