第1章-17
父は俺の話をすべて聞いたあと
机の上に肘を置き、その片手で目を覆うようにして若干俯くと
少し考える時間が欲しい様に黙ってしまった
俺は父の座っている椅子の隣で
そのまま椅子に座りながら机の上をただただじっと見つめて父を待った
短すぎるとも長すぎるとも思わないくらいの時間が経ち
父は大きめに息を吸ってから、ゆっくり息を吐いた
「クロス。スキルが使える感覚はまだ戻っていないんだな?」
俺にそう呼びかけ、確認を取ってくる
俺は父の目を見ながら頷いた
「お前がまたスキルを使えるような感覚が戻ったらすぐにお父さんに教えてくれるか?それと、スキルを大きく使うようなことはお父さんが良いって言うまでしてはいけない。わかるね」
俺はまた父の目を見ながらさっきより強く頷いた
それをしっかりと確認してから父は
「ミナ・・・」
母の名を呼びながらまた、さっきと同じように片手で目を覆っていた
心の落ち着けどころがない
仮にもし息子である俺がスキルで母を消したのが確かだったとして
息子を糾弾出来るはずもない
まだ5歳と言うのもある
こどものやることは基本的に親の責任だ
監督不行き届き
だとすれば責任は父であるロヴィオにあると言っても過言ではない
だが現状が正しい判断をさせてくれなかった
これまでと一変した生活
だが不自由に過ぎる訳でもない
優秀な我が子
ある程度の信頼をもって両親ともに仕事に行ってたはずだ
やってしまったのは完全に俺なのだが
父はどうしても自分を責めてしまう
どうすればこの結果を避けられただろうか?
無意味な自問自答が頭の中で繰り返される
泣きたい気持ちもあるだろう
しかし幼い我が子の前で取り乱すわけにはいかない
悲しみに暮れて、子供に責任を感じさせるわけにはいかない
親父の見栄や大切にしたい矜持と言ったものが
不屈の心で悲しみをこらえていた
「よし!クロス。明日からスキルについて詳しく教えてやるからな!」
気丈に振る舞っている様に見えたが
「うん!」
それに対して心配な様子を見せるのは不躾だろう
俺も精一杯元気に応えた
傍から見ればおかしく見えるだろう
母を失い
その現実を父と息子の2人で今考えられるうえでの状況の確認を行ったのだ
2人がともに元気に振る舞っていてはあまりにも
現実からかけ離れ過ぎている精神状態に見える
しかしそうしていなければ
お互いがお互いに
どうしようもなく心の平穏を保っていられなかったのだ
父:ロヴィオ(26歳)
母:ミナ(25歳)
息子(主人公):クロス(5歳)




