第1章-16
今日も父はいつもより遅く帰って来た
顔色が悪い
疲れているのは間違いないだろうが
それよりも不安が大きいはずだ
父は仕事の方はどうしているのだろうか?
恐らくだが休んでいる
その分を母の捜索の時間に費やしているに違いない
このまま休み続けることも出来ないし
かと言って捜さずにも居られない
一向に成果が出ないまま
この状況がどうすれば改善するのかも分からない状態で
けれど足を動かすしかないなんて
考えただけでも辛い
その状況を作ってしまったのがほとんど俺の責任だ
スキルが結局使えないので証拠はないし
確証も取れないけど
推測の範囲でも父に話すしかない
5歳の俺の言ってることだと戯言だと思われても仕方ないので
出来ればしっかり把握してから罪を打ち明けたかったが
これまでの俺の成長度合いも鑑みてくれれば
多少はまともに話も聞いてくれるはずだ
意を決して父に呼びかけた
「お父さん、あのね。お母さんのことで話したいことがあるんだ」
父は疲れを声には乗せず
普段通りに相槌を返してくれるが
俺の雰囲気を察したのか
茶化すことなく向き合って話を聞いてくれた
「どうしたんだ?」
父は、何でも話してみなさいという心持ちで優しく問いかけて来た
俺は普通の5歳の子供よりも圧倒的に精神面が成熟しているだろうが
ただそれだけのことで涙が出そうになった
少し涙ぐんだ声で
「ごめんさない、お母さんが居なくなったのは僕のせいかもしれないんだ」
ゆっくりしか話せなかった
視界が涙で鮮明に見えなくなった
父はすぐさま頭を撫でながら
「どうしてそう思うんだ?」
と
まず母がただちょっと帰ってきてないんだ、と言うこれまでの前提などで否定することもなく
優しく聞いてくる
こんなに息が詰待って話せないとは思わなかった
自分で思うよりもショックを受けていたらしい
少し間をおいて落ち着いてから
スキルの練習を勝手にしていたこと
スキルが発動するのは分かっていたけど何が起こっていたか分からなかったこと
大きくスキルを発動しようとしてその瞬間に母が家に帰って来たこと
そしてその後に気絶してしまったこと
母が帰ってきていた事実を忘れていたこと
その後確かめようとしたけどスキルが発動しなくなったこと
スキルには代償が必要なのでその辺が大きくかかわっているんじゃないかと考えていること
スキルがもしかしたら何かを「消す」ことかもしれないこと
全て話した
父はその間
何か言葉をはさむことなく真剣に耳を傾けていてくれた
俺は話し終わる頃には涙もおさまっていたが
段々と怖くなっていた
自分のしてしまったことを他人に打ち明け
詳らかにしてしまったことで罪が確定したような気分になったからだ
父は責めるだろうか
いや
責めてくれた方がむしろ気持ち的にも楽になるかもしれない
楽になりたいわけではないが
そうだな
父に楽になって欲しい
これが本音だ




